【第二章】第三十四話
「ハナゴンさ~ん!」
絵梨奈の悲鳴がハナゴンの鼓膜を揺らす前に、ハナゴンは精神的ショックで事切れていたのである。
ハナゴンが倒れてから数分後。
「眠り姫がようやく目覚めたじゃん。ううう。きゅうりさんの声だね。あたし、死んだんだから、きゅうりさんがいるのは当然だね。ここは冥土なんだよね。あれ?下が土だよ。死んだ場所とほとんど一緒だよ。それに牙狼院さんがいるし。・・・。ここってどこ?」
『ここは森の中じゃん。』
「えっ?でもあたし、首を斬って死んだんじゃ?」
『よく自分の足をみるじゃん。』
横たわった体を半分起こして、運んだ荷物を点検する運送業者のように、足を触る花子。
「あたしの足が残ってる!閻魔様がお情けで足をくれたのかな?」
『初めからそこにあるじゃん。』
「そ、そうなんだ。って、きゅうりさんの声は聞こえるけど、姿が見えないよ。大きな注射器はそこに立ってるけど。」
注射器の先からは中の液体が少々こぼれており、使用した形跡がある。
『Qはここにいるじゃん。』
「きゅうりさん、どこにいるの?わからないよ。かくれんぼでもしてるのかな?いくらちっちゃいからって、幼児プレイにもほどがあるよ。」
『誰が幼児プレイだ!注射器の目盛りのところをよく見るじゃん。』
「目盛りを見ろというの?」
立ち上がった花子は、透明な注射器のシリンダーの目盛りの辺りをまじまじと見た。
「キレイに磨かれてるね。あたしの顔が映って・・・ない!このヘンタイロリ顔は、きゅうりさん!」
『誰がヘンタイロリ顔じゃん!れっきとした女子高生顔じゃん!』
「こんなところに顔写真を貼るなんて、シュミ悪いよ、きゅうりさん。」
『シュミじゃないじゃん!これがQの本体じゃん!』
「はあ?何を言ってるんだよ?注射器が本体?無機物だよ。無機物が喋るのか、生きているのか?不思議発見なんかしないよ!」
『しなくていいじゃん。吸血鬼族は牙が退化して、血をまともに吸えなくなったじゃん。そこで注射器を使って血液注入をやっているんだけど、進化の過程で、注射器そのものにも細胞が宿り、注射器と本体とを細胞が行き来できるようになったじゃん。だから、注射器も肉体もどちらも本体であり、本体でないという中間生命体になった。つまり、本体が死んでも注射器があれば、時間は多少かかるけど、本体が再構成されて元に戻るじゃん。』




