【第一章】第六話
「もういいでしょう。インチキ歯医者を撃退したのですから。」
「なんか、スッキリしないんだけど。まあいいよ、でも今度じっくり聞いてやるんだからね。ところで、学校はどこにあるの?駅前にあると聞いてたんだけど。」
「学校はここですわ。」
「何言ってるんだよ。校舎も何もないじゃない。」
「学校に校舎などありませんわ。」
「言ってることがわからないよ。あたしは、学校の敷地に行って、校舎に入りたいんだけど。」
「話が通じませんわね。ですから、校舎はないと申し上げてるでしょう。」
「はあ?校舎がないなら、学校もここにはないってこと?」
「ですから、ここは学校と申し上げてるでしょう。」
「あたしが田舎者だからバカにしてるんだね。」
「たしかにバカにはしてますが。いや、バカなのは当然ですけど。」
「本当にバカって言った!もう許さないよ。」
「それはこちらのセリフですわ。バカにつける薬がないとは、まさにこのことです!」
「なにを~!このけもの耳女!」
「そちらこそ~!田舎娘!」
『ドカーン!』
ふたりの近くで大きな音がした。
「歯石獣が現れたぞ!」
男性の大きな声に、絵梨奈が反応した。
「これはちょっと手ごわそうですわ。」
絵梨奈の視線の先には、高さ10メートルの白い石でできたロボットのような物体があった。頭、胴体、手足がすべて角ばっており、大小のサイコロを積み上げたような形状。
「あれは何?誰かが歯石獣とか言ってたけど。」
花子は瞠目して、白い物体に釘付けになっている。
歯石獣は、腕をゆっくり振って、5階建てのビルの壁を粉々にした。
二人が言い争いをしているうちに、『ズシン、ズシン』という地響きを伴って、歯石獣が近づいてきた。
歯石獣は周囲の建物を壊し、住民を蹴散らしている。街は破壊音と住民の悲鳴、絶叫で阿鼻叫喚状態になっていた。