【第二章】第三十二話
「メス蚊アマ!いったい、何するんだよ?」
「これはすでに禁じられた攻撃じゃん。てか、ゼッタイやりたくなかったじゃん。」
ポロリと白いモノが木憂華の口から落ちた。
「歯、歯が折れたぞ!吸血鬼にとって、歯ってとても大事なものじゃないのか。いや、歯というよりは牙か?」
「牙なんてないじゃん。ほら見てみるじゃん。」
木憂華は口を大きく開いて、中をハナゴンに見せた。
「ええ?全部フツーの歯だけじゃねえか。全然吸血鬼らしくないぞ。」
「当たり前じゃん。吸血鬼族が人間から直接血を吸わなくなってから、どれだけの年月が経過していると思ってるかじゃん。不要な牙はすでに退化していたじゃん。それよりもさっき抜けた歯に仕事をしてもらったじゃん。」
暴れていたクロボーの動きが突然止まった。
「これはいったい?クロボーに何かが起こったのか?」
「起こったんじゃない。起こしたじゃん。落ちた歯から痺れ薬を注入したじゃん。本来は、人間に噛みついた時に、痛みで暴れられたら血が吸えないので、動きを止めるために、注射していたもの。それをクロボーに使わせてもらったじゃん。」
「そ、そうなのか。」
「そんなことより、動きの止まったクロボーごとに、Qを背中から斬れじゃん!」
「いったい何を言ってるんだ?言ってることが全くわからないぞ。」
「時間がない。痺れ薬の効果が切れないうちに、早くやれ。ふたりをいっぺんに切り倒すじゃん!」
「そ、それなら自分のパワーなら一気に倒せると思うけど、もメス蚊アマ一緒にやるというのは俺にはできない。メス蚊アマも死んでしまうぞ!」
「やれ!そして早く絵梨奈も助けないと。そっちも間に合わなくなるじゃん。迷ってるヒマはないじゃん!」
「そんなことできるか!メス蚊アマは、メス蚊アマは、お、俺の仲間だぞ。仲間は自分の命と同じくらいの大切なものなんだ。そこらに転がっている石ころにみたいにできるか!」
「仲間なのか。それならば余計にやらないと。Qよりも深い仲間の絵梨奈が絶体絶命のピンチじゃん。」
「な、仲間に・・・。ええい!許してくれ!」
ハナゴンは大ドリルを振りあげてから、木憂華とクロボーにめがけて突き刺して、上から下へ下した。
『ブオオオオン』という轟音が響いた。
ハナゴンには手応えがあった。分厚い肉を切るという手首に重い、実に嫌な感触である。




