【第二章】第三十一話
「これって、悪魔そのものだぜ!」
クロボーの腕からは、黒く血管らしきものが、蚯蚓腫れのように浮き出ている。
クロボーはその太くなった腕を振りかざして、木憂華に打ち込んだ。
木憂華は間一髪、反復横飛びで、攻撃を回避した。
「そうじゃん。しかも悪魔的な強さになってるじゃん。」
クロボーは腕を振り回し続ける。木憂華は避けるが、クロボーの腕が当たった大木は、真っ二つに折れて、ハナゴンの方に倒れて、間一髪避けたハナゴン。
「腕の回転スピードもスゴイじゃん。これほどまでに強くなるとは想定外じゃん。」
木憂華は、巨大注射器のシリンダーをクロボーの腕に当てるだけで防戦一方。
「このままじゃやられてしまうぞ。と言っても俺の大ナタのスピードじゃ、攻撃をかわすことすらできそうにもない。情けない。」
「ヤマンバ!落ち込むヒマがあったら、絵梨奈を助けて介抱するじゃん!こいつはQが何とかするじゃん。」
「どうかするって言ってもクロボーを倒す術があるのか?」
「ないじゃん。」
「ないって、試合放棄は最低の作戦じゃないか!」
「正解を言うじゃん。その試合放棄をやるのが、Qの作戦じゃん。手持ちでできることがないなら、身を切るしかないじゃん!」
木憂華は注射器の太い針を手首に当てて、そのまま肘の方に引っ張った。皮膚の下の赤い部分が露出し、木憂華の顔が激痛に歪み、脂汗が流れ出ている。
「一体何をするんだ?そんなことをしても痛いし、出血で体力が奪われるだけだぞ。」
「身を切るとは、自分の血液を使うってことじゃん。」
滔々と流れ出る血液が、鉄分の匂いを充満させている。
『ガサガサ、ガサガサ』
衣擦れのような音がクロボーから発せられた。クロボーは袋を脱いでいた。
元の姿に戻ったクロボーは涎を垂らしながら、木憂華の方に近づいていく。
「よ~し。痛いけど、Qの思惑通りになってきたじゃん。ここからが本番じゃん。」
「えっ!」
ハナゴンはあっけに取られて言葉を失っている。
「さあ、貴族のプライドを捨てる時が来たじゃん。悲しいけど、勝つためには仕方ないじゃん。ガブリ。」
木憂華はクロボーの首筋に噛みついた。『バキッ』という何かが折れる音がした。




