【第二章】第二十九話
しばらく空を乱した混合色が元の二色状態に戻った。力が拮抗していると判断したのか、
紫が離れたのである。
クロボーは帽子を目深に被ったままで、相変わらず表情は見えないが、こぶしを強く握りしめているような様子に見えないこともない。
紫の霧は少し高いところに上がって、個々にぶつかり合うような動きを見せている。
『ポツリ、ポツリ』
紫色のシュミの悪い雲から雨が落ちてきた。
「熱い、痛い!やけどしたみたいだ!」
ハナゴンが慌てて、雨を振り切ろうとするが、雨は止まずに、絵梨奈や木憂華にも降り注いでいる。
「熱いよ、焼肉女!さっきみたいに、なんとかしてくれよ。」
「そう言われても、ワタクシのゴーレムは打撃系物理形態が基本ですわ。こういう化学兵器系の攻撃は苦手ですわ。むしろ、きゅうりちゃんの方が向いてるのではなくて?」
「熱いじゃん、熱いじゃん!」
木憂華は頭を抱え込んで走り回っており、酸性雨を防ぐだけで精一杯であった。酸性雨は森の木々を枯らし、小動物はやけどで次々と死に至っている。
絵梨奈たちも、服がボロボロになり、剥き出しの皮膚が焼かれて流血している。
「こ、こうなったら、これしかありません。こんなこともあろうかと、これを用意しておいたのですわ!」
絵梨奈は懐から、半透明で半月な形の何かを取り出した。その瞬間、周囲に鼻にツンとくるニオイが漂った。絵梨奈は電光石火の手つきで、半月形を切り捌いた。刺激臭はさらに強まり、ハナゴンは目がかゆくなった。
「目、目が痛い。これはタマネギか?涙が止まらねえ!」
ボロボロと大粒の涙がハナゴンの頬を濡らした。
「ハ、ハナゴンさんの泣き顔!それも感情を伴わないレア顔!萌へ、萌へ、萌へ~!」
絵梨奈の体からオーラが湯気のように湧き出てきた。その湯気に、灰色の霧が集まり融合して、銀色の雲に変わっていく。
「はぁはぁはぁ。酸性雨で息が少々苦しいですけど、戦う余力はまだありますわ。ていうか、新しい能力がハナゴンさんのレア顔で得られましたわ。さあ、酸性雨に対抗しうるのは、中和するためのアルカリ性雨です。ポッカリ悪エリアスですわ!」




