【第二章】第二十八話
流れ落ちた紫色血液は霧となり、風船のように薄く大きくドーム型に膨らんできた。それはクロボーの周りにいるゴーレムの外側にまで及んだ。すると、ゴーレムたちは一斉に崩れた。
「あれ?あんなに強そうなゴーレムがどうして簡単にやられたんだ?」
不思議そうに絵梨奈を見るハナゴン。
「強いですわね。ゴーレムはミクロな穴がたくさんあります。あの霧がゴーレムの穴に侵入して、粒子の結合を破壊したのですわ。」
「へぇ~。焼肉女は戦闘の分析もできるんだ?」
三平方の定理を説明されて感心する生徒のようなハナゴン。
「ワタクシを完全にバカにしてますわね。そんなことを言ってる場合じゃありませんわ。」
紫の霧が大量発生したイナゴのように、ハナゴンたちを襲ってくる。
「うわー!なんだこれ!」
「それは吸ってはいけませんわ、強烈な毒ですから吸ったら死に至りますわよ!って、もう遅かったようですわね。」
「ぐぐぐ。く、苦しい。息が苦しい。それに胸が熱いよ!」
ハナゴンはすでに倒れて、のたうち回っていた。
「ハナゴンさんは、苦しんで息を引き取りましたわ。」
「勝手に死亡フラグ立てるなよ!」
倒れたハナゴンは呻いて苦情を述べて、視線を木憂華に向けた。
「きゅうりちゃんは大丈夫のようですわね。」
「Qはヤマンバとは違うじゃん。」
木憂華は注射器を変形させて、黒いガスマスクを作っていた。それはガスマスクというよりは、武士の兜に似た形状で、顔はガイコツのようでもある。ほぼダ●スベイダーであった。
『カーフー、カーフー』
「そのマスクでは悪の権化にしか見えませんわ。吸血鬼族らしいですけど。」
「狼族に言われたくないじゃん!」
「雑談は置いておきますわ。まずは、ハナゴンさんを助けないと。」
絵梨奈が右手を回すと、灰色の気体がハナゴンを包んだ。
「あれ?呼吸が楽になったぞ。胸も熱くないぞ。厚いけど。」
ハナゴンは立ち上がりながら、視線を木憂華の胸に突き刺した。
「急転直下でムカついたじゃん!」
そんな木憂華をスルーして、落ち着いた表情で絵梨奈がハナゴンに話しかけた。
「先ほど、クロボーの攻撃を受けたのは、次の料理の下ごしらえなのですわ。そちらが霧という流体ならば、こちらも同様の形態を取ることで対等になりますわ。」
紫と灰色が宙を舞っている。色としては嫌われる色というところも一緒である。
その二種類が混合して、なんとも不気味な配色となっている。
不気味な混合色はもみ合うようにして、空中を乱舞している。




