【第二章】第二十七話
茂みの中から、すっくと、黒い帽子が現れた。
「えっ?本当にきちゃった!?」
「ふふふ。作戦通りじゃん。」
「そんな緻密な作戦だったっけ?」
「最初に使った腐った血液だけでは、誘引ヒット確率1割だったじゃん。」
「ちょっと待ってよ。それじゃあ、血だらけ、肉まみれで、骨折り損のくたびれもうけになる確率が圧倒的に高かったということじゃない?」
「正直ギャンブルだったじゃん。」
「ひどすぎるよ!」
「まあ、結果オーライで良かったじゃん。そこで、うまくいった要因だけど、本当に必要だったのは、新鮮な血液じゃん。でも多少の量ではたかが知れてるし、かといって大量に出してくれと言ったらヤマンバたちがくれるかどうかもわからない。なにより、自然に流血するものがいちばん呼びやすいじゃん。人工的より自然がいいというのは、万物に通じる現象。自然に出た血液がばらまかれて、アミラがそのニオイに誘われたということじゃん。」
「この黒い帽子。見たことありますわ。ワタクシはこの帽子にさらわれて。」
「さらわれてどうなった?」
「次に会ったのは、山場さんたちですわ。」
『ガクッ。』
お約束の新喜劇転倒した花子と木憂華。絵梨奈はアミラのことをまったく覚えてなかった。
「牙狼院さんの記憶はほっといて、黒い帽子、つまりクロボーを捕まえないと。」
「そのネーミングセンス、なんとかなりませんの?」
「そーっとしといてくれる?」
「慎ましやかな反論ですのね。」
「そういう解釈、ありがたいね。では苦しみとお楽しみのアレを。ガキッ、ガキッ、ガキッ、ガキッ。痛い~。でも気持ちいい~!」
連続ナタ突っ込みで、ドMトンネルを経由してオペモードに変身したハナゴン。
最近の歯周病モンスター退治ですっかり板についてきた。
「えいっ!」
ハナゴンは太針が回転する大ドリルを振り回してクロボーを狙うが、スピードが違い過ぎて、まったく当たらない。
「ここはワタクシに、お任せくださいな。」
絵梨奈は奥歯を抜いて、握りしめてから砕いた。10個ぐらいになった奥歯の破片は地面に散り散りとなったが、それぞれがムクムクと大きくなり、やがて人間大のゴーレムになった。
ゴーレムはクロボーを取り囲んだ。ゴーレムは一斉にクロボーに襲いかかり、めったうちにしている。
クロボーは口の端から紫色の血液を流している。
「あれれ、クロボーはもう白旗揚げたのか?」
ハナゴンが首を傾げている。
「そんなことありませんわ。これが戦闘開始の狼煙ですわ。」




