【第二章】第二十四話
「そ、そんなの詭弁だよ!思い出を奪ってまで、治療したくないよ!あたしは何人の思い出を喪失させてしまったんだよ!わああああ!」
泣き叫んで、花子はどこかへ走り去っていた。折しも大粒の雨が、残された木憂華と絵梨奈に降り注いだ。ふたりの視界に花子はなかった。
黒十字歯科総合病院の前で、絵梨奈と木憂華は沈痛な表情で、会話することもなく、待っていた。
三時間ぐらい経過して花子は戻ってきた。
「山場さん!」
「ヤマンバ!」
絵梨奈たちの頬は一瞬緩んだが、すぐに元の鉄仮面のように戻っていた。
「みんな、ちょっと待たせちゃったね。それじゃあ、診療報酬稼ぎを続けようよ。」
絵梨奈たちは頷いて、行動開始した。
結局それなりの数の歯周病患者治療を行った三人。抜け殻は治療の数だけ生まれていた。「ヤマンバ。どんどん報酬を稼ぐのはいいけど、大丈夫なのかじゃん?」
心配そうにハナゴンの顔をのぞく木憂華。
「点数がどんどん増えていくんだから、絶好調だぜ。」
「そ、そうならいいじゃん。獲物狩りを続けるじゃん。」
こうして、数週間分の診療報酬を稼ぎまくった花子。
女子寮で花子、絵梨奈、木憂華がにらみ合うようにして、腕組みをして椅子に座っている。その中で花子が切り出した。
「青い歯の女子を見つけださないといけないんだよ。牙狼院さんは場所を覚えていないと言うし。キャンプ」
そう言いかけた木憂華の口を制した花子。
「山籠もり、キャンプはやらないよ!ましてや、生肉作戦はゼッタイダメ!」
断固拒否の姿勢を示した花子。
「じゃあ、こうしようじゃん。名付けて、三人寒女作戦!」
「なんなんだ、その寒過ぎて凍ってしまいそうなネーミングは!」
花子の眉間には二本線が刻まれ、眉毛は『への字』から『くの字』に歪曲している。
木憂華は起伏に乏しい胸を全力で張りながら横柄に語り始めた。
「三人寒女作戦とは、こんな内容じゃん。まず、三人の体を生肉で巻く。そして、バケツで頭から血をかぶる。生き血ではもったいないので、歯周病患者の腐った死に血を使う。」
「生肉、死に血!?あれぇぇ~!」
絵梨奈は口から泡を吹いて卒倒した




