【第二章】第十七話
「スゴくひどい匂いがするよ。臭いよ。」
「ガマンするしかない。楽しいことと苦しいことは表裏一体じゃん。」
「あたしが臭いという苦しみを受けて、きゅうりさんが楽しんでいるという状況は、格差社会の縮図じゃないの?」
「世の中はバランスじゃん。Qがおいしい果実を味わうためには、それを支える土地が必要なんだじゃん。公式はすでに解かれているじゃん。ほら、すでにやってきたじゃん。」
「な、何これ!」
大量の虫がやってきた。それは蚊のようでもあり、ハエにも似ている。
「痛い!」
花子の腕は噴水のように流血し赤く染まっている。
頭はハエのように大きな複眼が付いているが、口は蚊のように尖っている。しかし、大きさがまるで違う。全長15センチはあろうかという大物である。
「来ちゃったじゃん。これはウエルカムじゃん。」
「あたし、刺されちゃったんだよ。すごく痛いよ。早く手当てしてよ!」
「しないよ。ケガの修復なんてするわけないじゃん。」
「どうしてよ?こんなケガ人を放置しようってこと?人道主義に悖るじゃないの?」
蚊ハエ虫はさらに花子に寄ってきて、手足に嚙みついている。
「いいじゃん、いいじゃん。どんどんやれ~!」
「うわああああああ!」
花子は左右の腕を振り、全身を揺さぶって、蚊ハエ虫を追い払う。その都度、鮮血が飛び散り、辺りに鉄分のニオイが充満してきた。
『ドンドンドン!』
大きな足音が聞こえてきた。灰色で四つん這いになり、花子たちの方にやってきている。
「あれは何?ゾウでも来たの?」
「よく見ろ。ゾウではないじゃん。」
体の大きさ、色はたしかにゾウに似ているが、真正面から見ると決定的に違う点がある。
ゾウの大きな特徴である鼻がデカい。耳が小さい。
いやそうではない。
鼻の幅が横に著しく広い。
耳が細くて、スゴく長い。
つまり、鼻と耳が入れ替わったような顔なのである。ひたすらブキミである。
「これって、化け物!こんなの、あたしの山にはいなかったよ!」




