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【第二章】第十五話

花子が少し離れたところに目をやると、そこにはベッドがあった。白くて部屋の色と同化していたので、見つからなかったようだ。そこに伏せる大人の女がいる。彼女は白髪なので、さらに花子の視線に入らなかったのである。

花子は白いベッドの方へ歩いていった。


「花子。すごく痛いわ。この病気って、血液の循環を通じて、全身に毒素が回るのよね。痛いっていうのは、歯だけじゃないのよ。腕から足から肩から腰まで、痛くて苦しいのよ。ママを助けてよ。知っての通り、眷族を大事にするのはヤマンバ族の掟なんだからね。」


「お母さん、ごめんね。お母さんを苦しみから解放するために、ここにきたんだけど、あたし、どうやらダメみたい。」


花子の母親はベッドから青白くなった腕を伸ばして、花子をつかもうとする。


「花子!ママを見捨てるの?掟を破るの?ママ、悲しいわ!」


「でも、でも、どうしてもオペができないんだよ!うわ~ん。」


ベッドのそばで泣き崩れる花子。




「うう。あ、あたし、夢を見てたんだ。」


「ずいぶん、うなされていたじゃん。いや、うなされていたというより、泣いていたようだったじゃん。」


ベッドから起き上がろうとする花子を、見るともなく見ていた木憂華。


「泣いてないよ。夢で泣くとかあるものか!」


目を赤く腫らして言うセリフではなかった。


「どうにかして、歯石獣みたく、相手の歯周病モンスターだけを取り出して、戦うやり方ってないのかなぁ?」


「そういうオペがないわけではないじゃん。」


「え?ホント?どうして、それを早く教えてくれないんだよ?」


「いや訊かれなかったからじゃん。」


「すごくイジワルじゃね?」


「こっちもボランティアでやってるわけじゃないじゃん。それに基本的には診療報酬稼ぎのライバルなんだからじゃん。それに少々残忍なやり方で、あまりオススメできないじゃん。聞かない方がいいかも。グロいじゃん。」


「グロい?そんなことをヤマンバ族が恐れることはないよ。日頃から生肉を食べてるんだから。」


「料理用の生肉と、ホンモノの生肉は違うじゃん?」


「とにかくグロいのは構わないよ!」


「ならば説明するじゃん。やり方はカンタンでシンプルじゃん。歯を全部抜くことじゃん。虫歯とか正常とか無関係、無差別じゃん。」


「痛くない歯まで?それって、抜く時、めっちゃ痛いよ!」


「もちろん、麻酔はしてはダメじゃん。」


「そ、それじゃあ、抜かれた人は気絶しちゃうよ!」


「気絶するぐらいでちょうどいい。2、3本抜いて意識を奪ってしまえば、残りはカンタンに抜ける。実に合理的じゃん。」


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