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【第二章】第十四話

女子寮の部屋に戻り布団を被る花子。


「そんなことじゃ、毎週の診療報酬稼ぎで落第してしまうじゃん。」


木憂華は花子の方を見ずに、ひとりごとのように話している。


「それでもいい。他人を傷つけてまでやりたくない。歯医者は人間を虫歯の痛みから解放する仕事だよ。その反対をやるなんてあり得ないよ。」


「そこまで言うなら勝手にしろじゃん!」


 以後会話がまったくないまま、床に就いたふたり。




「今日もこの場所で歯周病モンスターを迎え撃つじゃん。」


木憂華と花子は黒十字歯科総合病院の前に立っていた。ふたりは背中を向けあっており、共同して何かを成し遂げようとかいう雰囲気は皆無である。


「・・・。」


花子は周囲の様子を見るともなしに見ていた。


「オペに頼らずにどこまでやれるのか、実験でもするつもりなのか、それが自殺行為だという認識があるのかじゃん?」


木憂華の挑発的なアドバイスにも耳を傾けない花子。


病院前で歯周病モンスターは確実に出現し、花子は単純な公式通りに倒された。


病院で手当てを受けて、女子寮に戻った花子。ヤマンバ族という体の強靱さに、ギリギリのところで救われていた。

その日の夜、木憂華が風呂に入っている間、花子は照明も点けずに、ベッドに寝そべって、天井を見ていた。


「オペを使わないと歯周病モンスターには勝てない。このままだと、牙狼院さんを助けることもできない。お母さんを治すための青い歯も見つからない。今のあたしには何ひとつできることがない。ううう。」


おのれの無力さを涙で流すことしかできない花子であった。




白く広い部屋に赤い姿の人間が見える。


見覚えのある人だと直感した花子。


「助けてくれませんこと!」


頭が血みどろになった絵梨奈が、藁にでも縋るように腕を伸ばしてくる。


「で、でもあたしには歯周病モンスターと戦う力なんてないし。」


「どうしてそんなことを言うんですの?あなたはルームメイトでしょう。それにそもそもワタクシがこうなってしまったのは、いったい誰のせいですの?」


「そんなことを言われても。でもたしかに責任はあたしにある。ターヘルアナトミアに入らなければこんなことにはならなかったのだから。」


花子にはそれから先の言葉が見つからない。


絵梨奈の後ろには歯周病モンスター、つまり、歯の色が変わった人間が立っている。


そのモンスターは他のと違い、残忍な目つきで花子を睨んでいる。


「お前のせいだ。お前のせいだ。」


普段はしゃべらないはずの歯周病モンスターがうわごとのように呟いている。


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