【第二章】第十話
「そろそろじゃん。口が開いたら、惨劇の開幕じゃん。」
涎を垂らした双子女子。手のスイーツを見てではなく、人間を見ての涎である。
双子女子は、スイーツを口の中にぶち込んだ。すぐさま、苦悶の表情に変化した。スイーツの甘さが歯に沁みた模様である。
『ガアアアアアア!』『ガアアアアアア!』
野獣のように吠えた双子女子。見事にシンクロしている。口の中から紫色の腐った歯茎が見えており、すでに美少女らしさは吹き飛んでいる。
『ガアガア!』『ガアガア!』
右側ポニテはホイップクリームを出して、白いバットを作った。
左側ポニテはチョコレートを出して、黒いバットを作った。
ふたりは頭上でバットを軽々と振り回している。周りの人間が数人バットに当たり、飛ばされた。飛んだ人間には眼もくれず、ゆっくりと並んで道を歩いている。
「人がケガしてるよ。早く手当してやらないと。」
ケガ人のところに駆け寄ろうとする花子を制した木憂華。
「ああいうのはこの病院に任せればいいじゃん。」
「でもここは歯科病院じゃ?」
「黒十字『歯科総合』病院じゃん。こういう大歯科病院に通う患者からああいうのが出てくるだから、歯科だけでなく、体のケガにも対応できるシステムになってるじゃん。ほら、看護師メイド隊がやってきたじゃん。」
「そう。なら安心。・・って、看護師メイド隊って?どうして看護師さんがメイド服着てるんだよ?」
「さあ?シュミじゃね?とにかく看護師機能には問題ないと聞いてるじゃん。そんなことより、仕事に入るじゃん。」
「つまり、あれが、歯周病獣ってことだよね?」
「そういうことじゃん。もう時間がないじゃん。痛いのスタート!1プスリ、2プスリ、3プスリ。何回打っても痛いじゃん。」
木憂華はすでに巨大注射器を手にしている。
「は、早い!あ、あたし、痛いのを受け入れる心の準備が、『蕎麦屋の出前状態』なんだけど。痛いけど、ペインシーケンスか痛み分け、もしかしたら楽しみかも。ワクワク。」
「無駄な感想言ってる場合じゃないじゃん。」
「や、やるっきゃないね。まずは変身だ。ガキッ。痛~い!でも気持ちいい~!」
及び腰から捻り腰に変わった花子がハナゴンに変身した。木憂華もすでに巨大注射器を
握って、ハナゴンと距離を取った。
通行人は波のようにさーっとひいていた。戦闘の多い場所ならではの、とばっちり退避慣れである。
ハナゴンの相手は右側ポニテ。右手に白いバットを握っている。左側ポニテは左手に黒バットを構えている。それぞれの組で、10メートルの距離を置いて、睨み合っている。




