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【第二章】第九話

「萌ふぇ~!幸せ~。」

「こら!やめろ、離れろ!メス蚊アマ!」

こうして、この日は多数の歯垢獣、歯石獣を倒して、診療報酬ノルマを果たしたハナゴン。


翌週月曜日。花子と木憂華は、いつもの噴水広場からかなり離れた大きな白いビルの前に立っている。


「オペに慣れるためには、この場所がいちばんじゃん。」


「この大きなビルはいったいなんなんだよ?」


 花子が見上げたビルの一番上の壁には、黒い十字のマークが見える。


「ここは『黒十字歯科総合病院』という重い歯周病患者を治療する場所じゃん。」


「なんだか、いかにも悪徳そうな名前だけど。」


「診療内容のことは知らないじゃん。でもここに来た理由は明確じゃん。」


 大きな自動ドアの扉を次々と人が入っていく。


 すべての人が腫れ上がった口元を押さえている。中には痛みに耐え兼ねているのか、涙を流している者もいる。


「重症患者ばかりだね。すごく痛そうだよ。」


 思わず自分の虫歯を押さえる花子。


「いずれも自業自得じゃん。虫歯を放置した結果がこれじゃん。自己管理ができない、だらしないか、自制心の弱い人間の末路がこれじゃん。人間の多くはこういう者だけどじゃん。」


「こわいね。あたしも気をつけないと。」


「世間話はこれぐらいにしとかないと。ここからが今日の、いやこれから毎日行われる仕事になるじゃん。この病院には来る患者の中に、『真の獲物』がいるじゃん。ほら、あそこで始まっているじゃん。」


 木憂華の指差す方向、約30メートル先に、二人の若い女の子がいる。緑色のウエーブのかかった髪をツインテールにしている。丸顔にまん丸の瞳。よく似ているところから双子のようである。ふたりは、フリフリのピンクのワンピースを、腰の大きな赤いリボンで締めている。


 よく見ると、右側に立つ子は右横に髪をくくり、左側の子は左にサイドポニテをしており、二人が並んでいるから、ツインテールを構成していた。


「かなりの美少女ツインズだね。あ、あたしには負けると思うけど。」


 自分の言葉に不安を覗かせている花子。


 双子女子たちは、手にスイーツを持っている。右側ポニテの女子はイチゴのショートケーキ、左側ポニテはチョコレートのショートケーキ、いわゆるオペラを持っている。しかし表情は至って厳しい感じで、そばを歩く人間を睨み付けている。


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