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【第二章】第五話

「そうかな?でもそれってみんながフツーにやってることじゃん。自分のことをよく振り返るなんて必要なく、今の自分を考えればすぐにわかることじゃん。」


「そ、それって、自分にウソをつくっていうこと?」


「そういうことも含まれるけど、自分に言い聞かせるっていう言葉があるじゃん。そんなことって、頻繁に起こってる、いや現在進行形じゃん?」


「そ、そんなことないよ。あれ?今は元のあたしに戻ってる。」


「あまりの衝撃に変身が解けたじゃん。とにかく、大脳を騙す練習をすることじゃん。」



女子寮に戻ってベッドに座った花子。何かをしようとしているが、方向感の定まらない視線で、落ち着きがない。

「あたしはウソつきなんかじゃない、あたしはウソつきなんかじゃない、あたしはウソつきなんかじゃない、あたしはウソつきなんかじゃない。」


お経のように唱え続ける花子。


「ちょっと、あたしが訓練しようとしてるのに、すごくジャマなんだけど。」


木憂華が花子の横に座って、じっとその横顔を見つめている。


「別に他意はないじゃん。ルームメイトとして、健康状態を確認しているだけじゃん。」


「そんなこと頼んでない!」


「頼まれてもないじゃん。そうだったら、診療報酬を頂くじゃん。」


この応酬は約二時間続き、花子は疲れて睡眠へ直行した。


「ふふふ。あんな抵抗しても効果はないじゃん。ウソツキじゃないと自己暗示をかける時点ですでにウソツキなんだけど、それじゃあ足りないじゃん。」


木憂華は、ベッドに横たわる花子の耳に囁いた。


「Qのこと、大好きになる。Qのこと、大好きになる、Qのこと、大好きになる。」


これを一万回繰り返した木憂華。


翌日も、翌々日も女子寮ではまったく同一の作業が行われた。


この日は花子にとって点数不足の土曜日。ここ三日間、花子は何もしなかったので、今日ダメだと退学となるという土俵際に追い込まれていた。


「お前は誰が好きじゃん?」


「あたしはQが好き。」


 焦点の合わぬ目の花子。すっかり洗脳されているように見える。


 しかし、木憂華は満足していなかった。


「それだけではダメ。全然足りないじゃん。Qはただの花子には興味ないじゃん。自分で、自分を痛めつけるじゃん。」


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