【第二章】第二話
「木偶の坊でも、あんまり刺激するとヤバいことになるじゃん。」
「何を言ってるんだよ。こんな輩、一発で消し飛ばせるんだからな。」
もはや治療する気のかけらもないハナゴン。大ドリルでメガネ中年に斬りつけた。
「ヤバい!力が入り過ぎた。殺したかも。」
『ドゴ~ン。グワッシャー!』
鈍い衝撃と骨が砕けた音がした。
「やっちゃったぜ!おい、メス蚊アマ!俺は退学なんかにならないよな。これは医療事故じゃなく、正当防衛だよな?」
防衛行動はビタイチ存在しないが、無理のある自己主張するハナゴン。
「うん。そういう心配は無用じゃん。相手をよく見るじゃん。」
メガネ中年は平然としてタバコに火を付けていた。それを一瞬口にくわえて、吸わずに地べたに捨てた。
「なんだ、コイツは!不死身なのか?」
腕を回して、本気モードで行くハナゴン。大ドリルの針を回転させて突いてもまったく効かない。
「おっさんの歯をよく見ろじゃん。」
「このおっさんの口、真っ黒じゃないか。お歯黒でもしてるのか?」
メガネ中年の口の中は、タバコのヤニだらけであった。
「タバコの中にはニコチンや一酸化炭素、タールなどを含む3大有害物質が含まれており、この物質を吸い続ける事でニコチンが血管を収縮させるじゃん。血管を収縮させてしまうと歯肉が炎症を起こしていても、出血や腫れが抑えられるため、初期症状が気づかないというケースに結び付くじゃん。また、口の中の細菌の繁殖を抑える機能も低下するため、歯石や歯垢が増えてしまうじゃん。」
「それが、コイツが特別に強いこととなんの関係がある?」
「歯石が増えれば骨が溶けて歯周病となるじゃん。歯周病になるとウイルスに感染しやすくなる。そうなると、晴れてじゃなく、『腫れて』歯周病モンスターの誕生ってなるじゃん。歯周病モンスターは、歯垢獣や歯石獣とは別物じゃん。エネルギー源である血肉を求めて人間を襲うじゃん。そうこう言ってる間も、歯周病モンスターのおっさんは待ってくれないじゃん。」
メガネ中年は真っ黒な歯を抜いて、手に持っている。出血もあるはずだが、歯があまりに黒いため目立たない。
「おっさんの体を、よく目を凝らして見るじゃん。」
「何も見えないぞ。どこから見てもタダのおっさんだけど。見えなくても日常生活には支障ないからいいよな。」
「それって、こんな時に言うセリフじゃん?」
ハナゴンが次のセリフを言う前に、メガネ中年はハナゴンに向かってダッシュしてきた。




