【第一章】第三十三話
絵梨奈の体重に抗しきれず、ハナゴンは地面に倒された。絵梨奈はハナゴンに覆いかぶさって、凶悪に口を開けて、野獣の雄叫びを上げている。
ハナゴンは倒れながらも、大ドリルの柄で絵梨奈を打ってどかせた。
「ハアハアハア。確かに手抜きでは、歯周病獣に対抗できないみたいだな。」
息を切らしながら、立ち上がったハナゴン。
絵梨奈を攻撃できないハナゴン。歯を変形させた物理攻撃を避けるだけ。
「そのままじゃ、危ないじゃん!」
木憂華が血相を変えて、ハナゴンに言葉を飛ばす。
「友だち、じゃない、ルームメイトを攻撃するなんてできないぞ。それにこの程度の攻撃なら、いくらでもかわせるし。」
目を半開きにした絵梨奈は、口から糸切り歯を抜いた。それはみるみるうちに大きく長くなり、鋭い剣に変化した。
「それは危険じゃん。気を付けるじゃん!」
木憂華が叫ぶように声を出した。
絵梨奈は剣を左右に振る。ハナゴンは俊敏な動きでそれを避けた。
「痛い!あれ、完璧に攻撃を回避したはずなのに。」
『ドクドクドク。』
ハナゴンは脇腹を抑えたが、そこから脈打つように、真っ赤な血液が流れ出ている。
「歯周病獣の厄介なところは魔法が使えることじゃん。さっき剣には、魔法を込められていて、ヤマンバの体の近くで剣が一瞬膨張して、肉を斬ったということじゃん。」
「えっ?そんなの、全然見えなかったぞ。」
「魔法の力は魔法が使えない者の目に見えないものが多いじゃん。だからあっさりやられたじゃん。」
絵梨奈は剣を縦に数度振った。すると、かまいたちのような亀裂が道に走った。ハナゴンは剣の方向を見て、左に飛んだが、右足の太ももに裂傷を負った。
「早くヤマンバを助けないと大変なことになるじゃん。でもQは黒い帽子の女子を相手にしないと。」
木憂華がハナゴンに気を取られている内に、黒い帽子の女子が目の前に迫っていた。
「今度はQがヤバいじゃん!」
黒い帽子の女子が口に手を入れて、何かを取り出してきた。
赤く血で染まった奥歯だったが、それは変形し、白くL字のような形になった。それを左手に握った黒い帽子の女子。そのまま構えると、『バーン!』という轟音が響いた。




