【第一章】第二十六話
ふたりは気を取り直して、立ち上がり、ドア①に向かった。そこからはヒソヒソ声が漏れてきた。
「さっきの血はやっぱり腐ってたじゃん。当然だけど、アレじゃ、うまくないじゃん。」
「安いんだからガマンしろ。」
「あはん。やっぱり『生』がいいじゃん!」
「それはそうだな。いい感じに入るしな。」
意味深な言葉に唾を飲み込みながら、ハナゴンと絵梨奈はドアに耳を超密着させた。すでに耳朶は相当な充血ぶりである。
「ちょ、ちょっと、これは教科書に載っていないコトが行われてるんじゃないか?」
「そ、それは間違ってますわ。夜のテキストにはしっかり掲載されているページがありましてよ。」
『ドキドキ、ドキドキ』
狩猟本能でここまで直球を打ち込んできたハナゴンと絵梨奈だが、夜の変化球には、からっきしダメという弱点をさらけ出した模様である。
「もっと、『生さし』を続けてもいいじゃん?」
「仕方ないなあ。あと、一回だけだぞ。そこで、すべて出してしまうぞ。」
「わかったじゃん。」
この会話に鋭く反応したハナゴンと絵梨奈。
「こら、きさまら!いったいここでナニをやってる!」
「そうですわ!不埒な行為は校則で禁止されて・・・ませんけど。」
「おいおい。今の『妄想・ガサ入れシミュレーション』は置いといて。この学園って、本当に学校なのか?」
まだ二人は部屋に踏み込んでいなかった。
「紛れもなく学校ですわ。でも基本は診療報酬稼ぎが優先されて、そのためには手段を選ばないという仁義のなさはありますわ。だから不純異性交遊は校則外ですし、ましてや超絶不純同性交遊とかは・・・。ぽっ。」
「どうしてそこで赤くなるんだ?それより俺たちの、ドアに向かって怒鳴る行動に意味はあるのか?」
「そ、そうですわね。中に入る必要はありますが、もし超絶不純異性交遊執行中であるならば、そーっと、覗いてみてごらん、ですわ。」
「ごくり。そ、そうだな。そーっと、覗いてみてごらん、だな。ごくり。」
結局、ハナゴンたちの初の共同作業は、デリカシーに溢れたドアノブソフトタッチであった。
音を立てないように開かれたドアの向こうを見たハナゴンと絵梨奈。
「き、きさまら!いったいここでナニをやってる!」
「そうですわ!不埒な行為は校則で禁止されて・・・ませんけど。」
同じセリフのリプレイであった。




