【第一章】第二十五話
突っつきバトルという阿鼻叫喚タイムは数分間継続した。
「「うぎゃああ。・・・ハアハアハアハア。」」
悲鳴が途切れ途切れとなり、激しい息遣いだけが残っていた。
『バタン、バタン。』
あまりの痛みにふたりとも、玄関先に突っ伏した。ハナゴンは、『気持ちいい』が大きく優先していたのは間違いない。しかし、勝負という点では引き分けであった。
「こ、この俺が勝てなかった。悔しい。ううう。」
勝てない悔しさでハナゴンは涙した。
ハナゴンの様子が、倒れていた絵梨奈の右目に映った。
「こ、これはハナゴンさんのオトコ泣き!レ、レアモノですわ~!も、萌へ、萌へ、萌へ~!」
急に元気を取り戻し、すっくと立ち上がった絵梨奈。
「ハナゴンさん、そんなところに寝そべってる場合ではありませんわ。あなたに勝利の女神がニヤリとしましたわ。」
「なんだ、そのブキミな言い回しは。なんだかわからないけど、俺が勝ったのか?」
「残念ながらそのようですわ。では中に入りますわよ。」
古びたドアノブには鍵がかかっておらず、ギィィという耳障りな音を発して、扉は開かれた。
建物の中には調度品、絵とかの飾りは見当たらない。
6畳ぐらいの四角い入口からターヘルアナトミアと書かれた部屋のドアが3つある。
それぞれ①から③の部屋番号がついており、さらに『逃げ込み、駆け込み大歓迎!』とある。小さく診療報酬表も張られており、れっきとした歯科医ルームに見える。
さらにドアには、『診療中』という札と、『本日の診療は終了しました』という札がぶら下がっている。
ターヘルアナトミア①の部屋だけが診療中である。
「獲物が逃げ込んだのは、①の部屋かな?」
「そのように思われますわね。」
「よ~し、行くぜ!」
腕まくりしたハナゴンは、女子にしては隆々たる筋肉を見せた。
ハナゴンがドアを掴もうとした瞬間、ドアが開いて、そばかす女子高生が飛び出してきた。
「あ~、スッキリした。痛かった歯が治っちゃった。」
満面の笑みを披露しながら、外に出て行ったそばかす女子高生。
「「あれれ?」」
ハナゴンと絵梨奈は同時に足をすべらして、床に頭をぶつけた。




