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便利すぎる農業スキルでスローライフを満喫します。  作者: AZ
第1章 『忘れられた村』編
9/16

閑話 それぞれの思い

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今後とも、応援よろしくお願いします。

精進して執筆します。

 神界 SIDE


「とりあえず、ワタシのスキルを有効に使ってるわね」


 水瓶の水に映るススムを見ながら呟いたのは農業の女神ファシルであった。

 自分のあげたスキルをどのように使っているのかが気になり覗いていたのだが、人間とは思ない堅実的な使い方にホっとしていた。


「しかしじゃな…お前さんのスキルはあげちゃダメじゃろ」

「…申し訳ありません。嬉しくってつい…」

「まあ、分からんでもないがのう…。しかしと言うかやはりと言うか…あの青年は末恐ろしいのう」

「そうですね。神のスキルの『本質』にああも容易く一歩を踏み入れたのは驚きです」

「普通は農業スキルの表面的な能力に呑まれてしまい、割と何事もなく一生を終えたじゃろうが…これは、いい意味でも悪い意味でも『期待』してしまうわい」

「…そうですね」


 神のスキルはその性質上、普通の人間では使いこなすことはできない…というよりも、普通にチート能力なので神のスキルの『真価』に気づくことはない。

 まあ、気づく気づかない以前に十分以上に裕福に暮らせるからその必要性は無いと言えるのだ。それに何らかの要因で気づくことになっても、それを求めるかと言えばそういうモノでもない。つまり、『神のスキルの真価』とは超越する能力ではあるが人間に必要かと言えばそういうモノではないのだ。まあ、知られたところで『害』になるモノではない。では、創造神の言う『悪い意味』とはなんであるのか?それは人間が神のスキルを『使いこなすことが出来る』ことになる。ありえないことだが、もしもそれを可能にするものが人間に現れたとすればそれは『神と同等』であること意味するのだ。つまりは、『人神』である。しかし、今まで人間が神になったということはない。なれないのではなく、そこまでたどり着けない…ということなのだ。だが、ススムは自身も気づかないうちにその一歩を踏み入れたのだ。だからこそ、創造神は淡い期待をススムにもったのだ。


「それにしても、創造神様はどうして彼にアヴァロンの智識や常識を与えなかったのですか?」

「予備知識は彼の好奇心の妨げになるじゃろう。それに、そのサポートとして『ナビ子』がいるんじゃからのう」

「そうですが…」


 いまいち創造神のすることが分からないファシル。そんな彼女を見て創造神はニコリと笑った。


「つまりじゃな。ススムが知識のない世界で自由に行動させたかったんじゃよ。とはいえ、全く常識や知識が無くては『間違い』を起こさんとも限らない。ゆえに最低限必要なことを教えられる存在としてナビ子を作ったわけじゃよ」

「その結果がモンスターを仲間にすると言う行動ですか…」

「面白いではないかのう?あの世界ではモンスターも必要な存在じゃ。良くも悪くもな」

「面白がってますね、創造神様…」


 まだまだ始まったばかりとはいえ、ススムの今後に一抹の不安を感じるファシルだった。


「頑張ってね、ススム」


 ファシルは水瓶に映るススムにそう言って優しく微笑むのだった。



 ナビ子 SIDE


 ワタシの名前は『ナビ子』(ススム様の命名)。創造神様に作られたススム様のサポートをするために遣わされた言わば『御使い』である。ただし、創造神様からも言われているが必要以上のサポートをすることはできない。あくまでもススム様の疑問に答えるのが私の役目である。しかも、それを当の本人であるススム様には悟られないようしなければならない。

 とはいえ、ついつい語ってしまうことや逆に答えに詰まってしまうこともある。何と言うか…私はやけに人間臭く作られていた。多分これも創造神の考えによるモノなのだろうが…これでサポートが出来ているのか疑問が尽きない。たった1日や2日でこんな悩み…この先の大変さにため息が漏れてしまう。


「ですが…料理は美味しくて嬉しいです」


 正直、このアヴァロンの世界の常識や知識を知るワタシとしては、料理の味に関しては期待していなかった。だが、ススム様の作る異世界の料理はどれもこれも美味しかった。私には『地球』の知識は無いのでススム様の作る料理はまさに歓喜するほどのものであった。アヴァロンの料理事情は調味料が『塩・lコショウ・砂糖』くらいしかないことが原因であった。しかも、どの調味料も高額なのでどうしても薄味になってしまう。不味くはないが満足できる味でもない…と言うのがこの世界での常識だった。それに加えて、こちらの世界の料理は主食のパンは硬く、メイン料理も煮込みや焼きものばかりで、スープも食べられるのはシチュー系だけと言う感じだ。なのに、ススム様の世界の料理は幅広い上に美味しいものばかり。


「まさに、ススム様の世界の料理は偉大です。ですが…」


 ワタシにはススム様と言う人物が正直に申し上げて計り知れないのです。

 1つのことに集中するとどこまでも突っ走ってしまい他人を巻き込んでもあっけらかんとしている自分勝手な性格かと思えば、普段はとても優しく気遣いな性格を覗かせる。効率的な考えが出来る一方で、何故か非効率なことを好んでする。躊躇いなくモンスター退治をしたかと思えば、モンスターを仲間にしたりと掴みきれないのがススム様という人物だった。

 矛盾を当たり前のように持ち合わせているのにそれが作られた感じがしない『天衣無縫』の様な人。あれ…?天衣無縫なんて言葉、何で知ってるんでしょう?とにかく、ススム様と言うお人は『よく分からないが好ましい人』と言うのがワタシの印象である。


「明日も良い1日でありますように…」


 考えに答えが出たところでワタシは布団に入り眠りについた。



ライム SIDE


 生まれてすぐにボクは自分が他のスライムとは違うことに気づいた。と言うか僕がおかしいのかもしれない。普通のスライムは『食べ物』とか『逃げろ』とかその時の状況で行動する…つまり、本能のままに行動しているだけだった。でも、ボクは考えてしまうんだ。行動1つにどう選択すればいいかを。それでも独りぼっちが良いわけじゃない。だから、仲間のスライムと行動を共にしていた。

 そんなある日、いつもの様に餌を求めて行動していると良い匂いがしてきたんだ。その匂いに誘われて気づけば食べ物が沢山実った場所にいたんだ。仲間はみんな一斉に食べ物に群がった。でも、ボクはどうしてか動けなかったんだ。

 結果から言えばこの食べ物は人間が育てた物だった。そしてその人間は不思議な感じがした。何と言うか…一緒に居たいと思わせるような感じなのだ。しかし、その人間はボクの仲間を殺し始めた。ボクはただオロオロするだけだった。そうしているうちに1匹また1匹と仲間が減っていく。でも、ボクにはどうしてもこの人間を攻撃しようという思いが湧いてこない。そうこうしているうちに仲間は最後の1匹になっていた。

 その時、人間の視線がボクに向けられたんだ。それがボクの運命を決めることになった。人間がボクに視線を向けたことで隙が生まれ仲間が襲おうとした瞬間、ボクは仲間に突進していた。これでボクは同族殺しになった。でも後悔はない。ボクは選んだから。この人間と一緒に居ることを…。


「ボクをナカマにイレて~」


 ボクは人間の育てた食べ物を食べて人の言葉を話せるようになり、そう口にしていた。ここがボクの居場所だと思ったからだ。

 ススムは僕を受け入れてくれた。そして、名前をくれたんだ。『ライム』と言う名前を貰った瞬間、ボクは色んなことが理解できるようになった。もう、ボクはただのスライムなんかじゃない。今からはこの世界でたった1匹の『ライム』なのだ。

 名前を貰ってからは慌ただしかった。何故か喋ると語尾に『キュッ』が付き、しかも身体変化(メタモルフォーゼ)でススムの姿になったら色んなことが出来るようになった。どうやらそれはススムの中にある智識が影響で出来ているようだった。畑仕事に料理作りは楽しく、なによりススムの知識にある料理は美味しかった。

 たった数時間であったが、生まれてからこれほど充実した時間を過ぎしたことはない。これがこれからも送れるかと思うと嬉しかった。寝るときボクは我が儘を言ってススムと一緒の部屋…と言うか、ススムのベットで一緒に寝かせてもらうことになった。


「おやすみなさいキュッ」


 明日も楽しい1日が過ごせますように…。

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