7話 仲間が出来ました。
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精進して執筆します。
「ボクをナカマにイレて~」
ぎこちない喋りだが、確かにsライムはそう言った。
カタコトだった先ほどよりも確実に上達している。なにより、ただの青いハンドボールサイズだったのに、今やつぶらな瞳を持っている。口は無いのにどこから声を出しているかは不明だったが…。
「よし。今日から仲間だ」
「ええっ!?即答ですか?そんな簡単に決めて良いんですか?」
「良いんじゃないか?俺の中の『大丈夫だセンサー』が反応したからな」
「どんなセンサーですかそれは…ハアァ、分かりました。まあ、スライムくらいどうってことはないでしょうし、ススム様を助けてくれたのも事実ですから。ただ、ステータスん確認はしておくべきでしょう」
俺の答えに呆れたと言わんばかりのナビ子さん。それにしても、ステータス確認か。…アレ?
「…他人のステータスって見れるモノなの?」
「普通は見れませんよ。そう言うスキル持ちならできますが…」
「俺は持ってないよ」
「持ってるのはワタシです。ワタシはこれでもススム様のサポートを任されていますからね」
「その割にスライムの突然変化のことについては知らなかったみたいだけど…」
「知識はあるのですが…実際に見たわけじゃないので知識と目の前で起きたことが重ならなかったんですよ」
「ナビ子さんって、変なとことで人間性見せるよね。まあ、そこが良いんだけど」
サポートとしてのこの世界のことをデータとして把握しているはずのナビ子さんだが、機械的な対応ではなくあくまでも人間的思考があるのでそれが知識を妨げる結果となるのだ。でもさ、そう言う人間臭さって俺は好きなんだよね。
「とにかく、ステータスを確認してみよう」
「分かりました。では、ステータス画面を開いてください。そこに映し出しますから」
「了解」
言われた通りにステータス画面を出す。すると表示が変わりこう書かれていた。
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『?????』 2歳 スカイブルースライム(変異種) 知性あるスライム
LV:3
HP:108
MP:87
EP:23
ちから:52
たいりょく:64
すばやさ:69
ちのう:53
こううん:12
一般常識 人類語
酸弾 火魔法(LV.1)
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「スライムとは思えない強さです。それに知性はやっぱり高いですね」
「名前はなんでないんだ?」
「普通はありませんよ。そこまで知性が無い生き物ですから」
「ナマエつけテ…」
「付けてあげてください。そうすれば『固定』するはずです」
「…よくわかんないけど、名前が無いのは不便だよな。ん~…じゃあ、『ライム』でどうだ?」
ちょっと安直かもしれないが、名は体を表すともいうし良いのではと思ったのだ。
「ライム…ライム……うん。気に入ったキュッ」
与えられた名前を口にした瞬間、『ライム』の何かが『固定』した。それにより、ライムの口調は流暢になった。おまけに変な語尾も付いたが…。
「ナビ子さん、これって…」
「名前を与えたことで存在が明確になり、『個人』として『固定』されたのでしょう。もう一度、ステータス画面を確認してください」
「了解」
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『ライム』 2歳 スカイブルースライム(変異種) 知性あるスライム
LV:3
HP:118
MP:93
EP:29
ちから:57
たいりょく:68
すばやさ:72
ちのう:57
こううん:15
一般常識 人類語(読み書き完璧)
酸弾 火魔法(LV.1) 身体変化
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レベルは変わらないが能力は少し上がったような…。それに、人類語を完璧にマスターした。しかし…身体変化ってなんだ?姿を変えられるのか?
「ライム。身体変化をやってもらえるか?」
「いいよ―キュッ」
そう言うとライムの身体がもこもこと増量していき、形を形成していく。その姿は人そのものなのだが、人間になったわけではなく…そう、彫刻の様な容姿だけの姿だったのだ。しかも、色はスカイブルーのまま。それに…その姿どこかで…?
「ススム様のお姿にソックリです」
「え?あ、そうか。どっかで見たことあるって思った。俺に似せた姿だったのか」
自分の姿何て鏡で見るくらいだし、身だしなみにパッと見るくらいだしな…。しかも、形だけなので見ただけでは分からなかったわけだ。しかし、この身体変化って何の役に立つんだ?
「これで、働き手が倍になりましたね」
「おお、確かに。って、ライム、その姿で動けるのか?」
「うん。動ける―キュッ」
タタタッと走り出すライム。うん。見事なフォームですな。次に鍬を持たせて地面を耕してもらう。もちろん、やり方をレクチャーしてね。結果はパーフェクトだった。無駄な動き1つなく耕していくライムに俺とナビ子さんは感心してしまうくらいに。
「よし。ライム。一緒にここで暮らそう。良いか?」
「うん。ライム、頑張るキュッ」
「そうなると問題はモンスター対策ですね」
「確かに荒らされるのは勘弁願いたいね。そう言えば確か建物の種の中に…あった!『魔法の柵(痺れ)』。これは使えるぞ」
『魔法の柵(痺れ)』は、設定した対象だけを痺れさせることが出来るという優れものだ。この種を整地した土地の端っこ側に植えることにする。ナビ子さんの指示に従いライムととも植えること1時間。まだ完全に出来上がっては無いが、初めに植えた方は高さ2メートルほどの青白い色の木の柵が出来ていた。あの青白い色が魔法的効果なのだろう。
「では、ススム様。その柵にお触りください」
「…こう?あっ」
柵に触るといつものパッドに文字が出る。『触ると痺れる対象をどれにしますか?』か…対象者は『人間』に『モンスター』に『亜人』に『精霊』と書かれている。どうやら複数選択できるようだがとりあえず『モンスター』のみを選択する。その後に出てきた文字には『全ての魔法の柵も同じでよろしいでしょうか?』と書かれていたので『YES』と書かれた文字をタップした。これで、全ての柵に考慮されるわけだ。楽だなー…。
「これでOK…と」
「ご苦労様でした。ススム様、ライムも」
「楽しかったキュッ」
「もう、陽が沈んでるし家に帰ろう」
「夕食はなんですか?」
「ん~…米の味を楽しみたいし…よし、とんかつ定食といこう」
「こちらの世界の智識はあるのですが…ススム様の元の世界の料理は分からないので楽しみです」
「楽しみ~キュッ」
「では、サラダは任せてください」
「ライムもやる~キュッ」
「じゃあ、みんなで夕飯の用意をしますか」
家に帰り、食事の用意に取り掛かる。ナビ子さんは野菜を洗い出す。俺はまずは炊飯の用意。んで、ライムは…え?お味噌汁を手際よく作っていた。どういうこと?
「…ライム。なんでそんなに手際が良いんだ?っていうか、なんでみそ汁の作り方知っているんだ?」
「…?知ってるから?」
「…知ってる?もしかして『身体変化』って姿を似せた相手の記憶も得られるのか?」
「えっと…そうです。『身体変化』は変化する対象の姿がある場合は、その対象者の記憶や運動神経も得られるですね」
「ってことはレベルや能力も?」
「いえ…スキルなどはさすがに…ですが、レベルと言うか身体的能力は得られます」
「つまり身体と記憶だけを得られるってわけか」
なんて便利な能力なのだろうか。でも、俺はさすがに身体変化はしたくないけどね。いや、だってさ、別人になるって気持ち悪いじゃん。俺は俺のままで満足です。
「んじゃ、ライム。この油を鍋に入れて火にかけてくれるか?」
「うん。分かったキュッ」
みそ汁を作り終えたライムに指示を出し、俺は豚ロース肉を切り分けていく。普通のよりほんのちょい厚めにした。肉全体を叩いて軽く塩コショウする。肉全体に小麦粉をまぶし、溶き卵に漬けてパン粉でしっかりとコーティングすれば後は油で揚げるだけだ。
「ススム様、キャベツの千切りができました」
「ありがとう、ナビ子さん」
「それにしても…サラダと言うのは色んなバリエーションがあるんですね」
「まあね」
厳密に言うならキャベツの千切りサラダではない。生野菜というくくりになるだろうが、ここでそれを言うようなことはしない。俺の家ではまずカツは強火できつね色になるまで揚げてから一旦網パットに置く。全部上げ終わったところで弱火にしてもう一度揚げたカツを投入してじっくり中まで火を通す二度揚げと言う方式をしていた。こうすると衣はサクッとしていて中ジューシーに仕上がる。まあ、こればっかりは家庭の味なので分かってもらうしかない。
「さらに和紙を置いて、カッとしたカツに千切りキャベツ、1/6にカットしたレモンに和ガラシを添えればメインディッシュの出来上がり。ソースはカ〇メのとんかつソースで決まりだよな。このドロっと感がたまらない。ご飯とみそ汁を並べれば『とんかつ定食』の完成だ」
俺は、ビールを用意する。やっぱ揚げ物にはビールだよな。ナビ子さんとライムにはちょい濃いめのお茶だ。
「美味しそうです~」
「早く食べたいキュッ」
「じゃあ、両手を合わせて――」
「「いただきます」」
席に着いて挨拶をして、3人同時にカツをパクリと食べる。ちなみにライムは挨拶後はスライムの姿に戻った。
「…ウメェ~」
「おいひいれふ~」
「美味しいキュッ」
カツを噛みしめての感想。いや、これいつもうちで食べてるカツ肉より全然うめぇー。グビグビ…プハー。ビールもうめぇ。ってこれ、生ビールじゃん。ちょい辛口でいいねぇ。おっ、ご飯もうめぇ~。みそ汁もうめぇ~。
ナビ子さんもライムも笑顔で食べている。しかし…やっぱりと言うか…ライムは溶かすように食べてます。器用に皿や茶わんは溶かすことなく食べててます。
食事を終え、ゆっくりお風呂に入り寝床に着く。ライムはスライムの姿で俺と同じ部屋で寝るという。ナビ子さんのように個部屋を用意できると言ったのだがライムは譲らなかった。
まあいい。今日は心地良い疲れでよく眠れそうだ。明日も農作業頑張ろう。ぐ―――…。