6話 畑荒らしのグリーンスライムを駆除します。
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野菜の交配少し趣向を変えてみた。あんまり優れた野菜にしてしまうのは面白味が無い。それならと、少しずつ品種改良していく方が色んなタイプの野菜が作れると思ったからだ。
しかも野菜同士での交配ではなく、薬品の種で作った『ポーション系』を交配させようと思ったのだ。これは『コシヒカリ・エクセレント』に『体力と魔力がある程度の回復』というモノがあったからだ。これにより俺は1つ実験的交配をしようと考えたわけだ。
まずは『スタミナポーション』との掛け合わせた数種の野菜。次に『マジックポーション』と掛け合わせた野菜に『ヒールポーション』に『キュアポーション』と『デトックスポーション』とも掛け合わせた野菜を作り植えていく。
今のところ作れるポーションはこの4つだけなのでしょうがないが、それ以上に面白いことが分かった。掛け合わせる野菜によって効果が異なるのだ。これは嬉し誤算だった。スタミナポーションと掛け合わせた野菜で例を挙げていくと、人参の場合は『体力の小回復』でジャガイモの場合は『体力を小時間持続的に回復させる』、玉ねぎなら『一時的にHPをアップさせる』やきゅうりだと『HPを+1アップさせる』と言う風に効果が異なったのである。
「野菜の種類によって効果が変わるってのは面白いな。しかも普通の野菜よりも栄養価も上がってるし」
「ポーションによっては味にも影響がある野菜もありますね。これは『相性』の問題でしょうか?」
「そうかもしれないな。これは研究のし甲斐があるぞ」
お米はほぼ最高のを作ったからなー…。野菜は少しずつやっていこう。
全部の交配野菜を植え終わり水田に向かう。目の前に広がる黄金の景色。風に揺れる稲穂から良い匂いが香ってくる。
「よし!稲刈りするぞ」
今日のメインディッシュとばかりに喜び勇んで稲刈りをする。農業用具から神鋼の鎌をポイントで買ったので、楽々刈り取っていける。今日は1段を刈り取ったら終わりにしよう。刈り取ったところは明日持ち米を植えるとして…。
「おおっ!スゴイ量の米だ」
垂れ下がった稲にみっちり詰まった米。子供の頃の記憶に覚えがある量の5倍はあるんじゃないか?
刈り取った稲は『農産加工』で精米までして、ぬかと共にアイテムボックスにしまっていく。
「す、ススム様ー!」
丁度終えたところで、ナビ子さんが叫ぶように呼んだ。
どうした?ナビ子さん!―――ああっ!」
出来上がった野菜畑に見えたのは実った野菜と…数多くの緑色の丸い生き物だった。
「あれは、『グリーンスライム』です。見た目はバスケットボールほどでぽよんぽよんしてますが、身体の表面からは強力な酸を出すことが出来るんです」
「…まるで、ゲーム出てくるスライムそのままだな。でも、どうしていきなり出てきたんだ?」
「多分、野菜が美味しそうだったのでは?」
「…モンスターでも美味しいものが食べたいって言う欲求があるのか?」
「…あるんじゃないでしょうか?」
ナビ子さんでも分からないことあるんですね。ナビ子さんの言葉に思わず遠い目になる俺。いやいや、今はそんな場合じゃない。この事態をどうすればいいのか?
「スライムにはあの緑の身体の内側に見える赤い球…『核』と呼ばれるスライムの身体を形成させる源があるんですが、アレを破壊すれば倒すことが出来ます」
「じゃあ、斬るか刺すかじゃなきゃダメだよね?」
「数が数なので槍や弓矢での攻撃では対処しづらいかと…」
「分かった」
俺はナビ子さんの指示に従いアイテムボックスから『鉄の剣』を出す。
「酸の攻撃は強力なので盾で防ぎながら戦うことを推奨します。あと、身体を守る服も着るべきです」
「じゃあ、レザーアーマーとレザーシールドを出して装備…と」
野菜畑に群がるグリーンスライムはどうやら俺たちに興味は無いらしい。余裕で装備を装着できる。まあ、その間も野菜畑の野菜が食べられているのだが…。しかし、スライムの捕食ってやっぱ溶かすようにして食べるんだな。
「よし!行くか」
気合を入れてスライムに向かっていく…。いや、実際はゆっくり気づかれないように近づいたんですけどね。だって怖いじゃん。ゲームでは雑魚キャラ扱いだけど、これ実戦ですもん。
「うりゃ」
俺は気づかれないように近づき、躊躇せずに斬りかかる。感触はお豆腐を切るような感じ…つまり切ったという感触は感じられる程度であった。
「え?あ…なんだぁ?」
真っ二つに斬られた瞬間、スライムは身体を維持できず緑の液体となって地面に落ちていく。そして残った液体は地面に溶け込むように消えていった。
「スライムの死液は魔力の素なので害はありません。それどころか土地に元気を与えてくれます」
「んじゃ、遠慮なく退治させてもらおう」
あの液体は酸だと思っていたのでその考えが杞憂に終わりホッとする。俺はこれは害虫駆除だと割り切りスライムを退治していく。
「この、このこの」
切っても切っても減っている様子が見えない。突っ込んでくるスライムは盾で叩き落し、アブラムシを潰す如くスライムを切り捨てていく。スライムと格闘すること10分。ようやく終わりが見えてきたところで、俺は妙な姿を確認した。
「…あのスライム。色が青い?」
それは某有名なゲームのスライムを彷彿とさせる姿をしていた。しかも、青いスライムは畑に入らず俺とグリーンスライムの戦いを見ているように感じられた。
「―――うわっ。しまっ」
青いスライムに目が奪われた一瞬の隙を突かれ、懐にグリーンスライムの侵入を許してしまう。
もうダメかと思われた瞬間、驚きの光景がそこに起きた。
「キュッ!」
「プギュウゥ…」
「…青いスライムが俺を助けた?」
「キュ」
青いスライムがグリーンスライムに突撃して、俺はダメージを受けずに済んだ。例えあの攻撃で傷を負わなかったとしても、なんらかのトラウマは植え付けられていたかもしれない。それを思うと、青いスライムの行動は俺にとって普通に助けられた以上の恩が出来たと言える。青いスライムの体当たりで動かなくなったグリーンスライムに止めを刺し、俺は青いスライムに駆け寄った。
「うおおっ。ありがとうな」
「キュウ~」
「何か…喜んでいるみたいですね?それにしても、青いスライムと言うのは…『変異種』でしょか?」
「変異種?青いスライムって珍しいのか?」
「珍しいです。それに、意識的にススム様を助けていましたし…知能も高いようでね」
知能が高いと聞き、俺は青いスライムをまじまじと見る。何とか仲間にできないものか?いや、そもそも仲間にしていいのか?ただ、お礼はしたい。
「…何とかして、意思疎通できないもんかな?」
「そうですね…スキルの種に何かないですかね?」
「スキルの種か…。レベルが上がって何か増えたかな?」
スキルの種の項目を見る。確かに幾つか増えている。しかし、そう都合の良いスキルはなかった。
「キュキュ」
「うおっ。どうしたんだ突然暴れだして」
腕の中に納まっていた青いスライムが突然動き出して腕からすり抜ける。様子を窺っていると…。
「キュキュ~」
「え?それは魔法の実…食べちゃったよ」
家の前に植えていた『魔法の実』を青いスライムが捕食する。突然の行動に俺とナビ子さんは対応できなかった。
「キュキュキュキュキュウ~」
「のわっ。なんだぁ!?」
「スライムの身体が光りだしました!?」
そう。ナビ子さんの言うとおり魔法の実を捕食したスライムの身体が発光したのだ。
徐々に光が止み、スライムの身体に異変が起こる。
「スライムの身体が大きくなっていく…」
「それに、心なしか色も薄まって…空色のような…」
「これってどういうこと…?」
「さあ…もしかして、魔法の実を食べたことで『進化』した…とか?」
「まさかあ…」
信じられないとばかりに言葉を漏らしたものの、確かに『進化』と思われる変化をしている。と言っても、元が小さいうえにグリーンスライムのサイズになっただけなのだが…。
「ムキュ。コンニチワ」
「「え?喋った!?」」
スライムが言葉を発したことに、俺とナビ子さんの声が見事にハモった。