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勇者は気づく
俺はいつものようにマスタールームで目を覚ます。
横にはフォルがスースー寝息をたてている。
クレスはまださなぎで時折動いている。
もうすぐ出てきそうだ。
今日は何をしようかな。
と、悩んでいると。
フォルの見た目がいつもと違うことに気づく。
あれ?
細部に紋様とか彫ってたっけ?
いや、これは前からあったなあ。
じゃあ何が違うんだ?
違うのはわかるのに、どこが違うのかがわからないもどかしさ。
あっ!
そこか!
俺は気づく。
スリムなフォルムに少しだけ丸みを帯びたんだ!
それに指の本数が増えた気がする。
んん?違う。爪が伸びたんだ。
フォルは何にでも適合する龍。
なにかに適合したのだろう。
どことなく、いつも遊んでいる子が大人になっていくようで、寂しい。
だがこれも成長だ。
変わっていくことは怖いことなのかもしれない。
だが変わらないと何も始まらない。
進化とはこういうものだ。
クレスとフォルが進化した。片方はその最中だ。
レオンやベルも進化するかもしれない。
俺の子どもたちが親離れしていくようで寂しいが、嬉しい。
俺はその日、全階層を周ったがほかに変わった場所はなかった。




