勇者は断罪する
翌日、俺は孤児院に余裕をもって向かう。
やっぱり時間は守らなくちゃな!
俺は借金の取り立て人が来る前に孤児院についた。
「院長!約束通りお金、持ってきましたよ!」
「はい!ありがとうございます!こんなにお金があれば、お釣りもたくさんきます。なので、必要な分だけいただきます。」
「孤児院の維持にもお金は必要でしょ?全部もって行ってよ。」
「でも...」
「いいから、ほら。子供もまってるから!」
「はい...」
俺は無理矢理気味にかなりの大金を渡した。
ちゃんと借金を返せるくらいはあったみたいだ。
そこへ昨日の悪そうな男が来た。
「おい、金は用意できたか?」
こんな早い時間に来るなんて、わざとらしいというかなんというか。
「金は用意したよ。」
「ああん?なんだお前は?とにかく金を返せや。」
院長がお金を男に渡す。
「足りねえなあ?昨日からまた利子がついて、これの倍は必要だぜ?」
「そ、そんな.....」
「暴利だ!」
「ガキは黙っていろ!とりあえず足りねえんだよ。この孤児院の土地はさら地にしてもらうからな。」
「ひ、ひどいです....」
男は帰って行った。
俺は許せない。
どこにこんな正義感があったのかは知らないが、これはひどすぎる。
俺は、その場に座り込んで悲痛な顔を浮かべる院長を、今は放っておく。
「フォル、男の匂いを終えるか?」
「がぴい!」
前にフォルと模擬戦をして、姿が見えないのに見つけられたのは、フォルの嗅覚が鋭いからだ。
俺たちはダンジョン都市デインジャの裏路地を奥へ奥へと進み、男のアジトについた。
誰にも見つけられないような都市の奥に、周りの建物とは何か雰囲気の違う建物だ。
その建物に男が入って行くのが見えた。
この建物で間違いない。
「フォル、あの建物に近づくぞ。」
「がぴ。」
俺たちは男のアジトのすぐ横にバレないように移動した。
俺は建物の通気口を探す。
あった。
俺はそこに、スキル魔物の知恵を使う。
借りるのはクレスの毒だ。
クレスの毒は気化して人を瞬時に殺める即効性の毒だ。
周りの建物には人の気配がないため、この手段をとる。
俺は毒を建物に流し込んだ後、しばらくして中に入る。
俺には毒が効かないため、何も警戒せずに入る。
中には、あの男の仲間であろう人も死んでいる。
「フォル、綺麗に食べろ。」
「がぴー!」
フォルが器用に、血が床などに付かないよう、丸呑みで食べる。
フォルに食べられないものはない。無機物さえも食べられる。
フォルが全員食べ終わり作戦は完了だ。
俺は人を殺めたことに罪の意識はない。
不法侵入で人を殺められるのに、この犯罪で殺められないわけがない。
俺はアジトから一切のお金を持って、孤児院に帰る。