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短編

マネっこ動物

作者: oga
掲載日:2016/05/02

イヤホンを耳に突っ込んで、家を出る。

スマホに入っているテンションの上がる曲リストを選択し、ランダムで再生する。

こうでもして頭をからっぽにしなきゃ、憂鬱な気分で参ってしまう。


家から会社までは1時間。

その内電車が30分ほどだが、朝の通勤ラッシュには殺意を覚える。


体力の半分を消耗し、会社に到着する。

俺の務めている会社はほんの小さな企業で、社員は50人しかいない。

大手企業の下請けの下請けだ。

事業内容は、インターネットの回線工事。


営業所は都内のこじんまりとしたビルだ。

確か月々15万程度で借りてるって言ってたっけな。

都内で15万だ。

どれだけボロい建物か想像がつくと思う。


「おはようございます」


しかし、返答はない。

会社にいるものは黙々とパソコンと向かい合っている。

こいつら社会人か?と俺は思いつつ、ロッカーに向かう。

作業着に着替えると、自分のデスクに座ってパソコンをチェックする。

気になるのは社内の回覧で安全会議の内容くらいか。

事故事例や、今月の目標など、まあ別に見なくてもいいが。

俺はそこまで意識の高い社員じゃないしな。


「おい、小山田、ちょっと来い!」


上司に突然呼ばれ、はい、と返事をして向かう。

やべえ、何かやらかしたか。

うちの上司ははっきり言ってかなりうるさい。

朝っぱらから怒られたら今日はずっとテンション低いままで過ごさないといけなくなる。


「お前、この経費なんなんだ?」


そこには、昨日申請した経費ある。

駐車代、5000円と書かれていた。


「あ、それは……」


昨日工事の最中にハマってかなり遅くなってしまったのだ。

多分5時間くらい止めてたと思う。


「お前なあ、どれだけ一個の現場で時間かけたら気が済むんだ?あ?」


「す、すいません……」


はっきり言って、この人とは馬が合わない。

ってか、いちいち細かい。


「5000円だぞ!稼ぎより駐車代の方が高かったら意味ねえだろ!」


「……」


俺は視線を落とし、やり過ごすことにした。

ここで反論したらさらにひどいことになる。


「もういい、お前、今日は帰れ!」


「!?」


おいおい、そこまで言うか?

この野郎……

だが、俺には反論する勇気も、見返してやるほどの力もなかった。

俺は黙ってデスクに座った。

まさか、現場に出してもらえないとは……


定時を迎え、続々と社員が戻ってくる。

みんな俺のことを無視していく。

俺は居心地の悪さを感じ、思わず会社を出てきてしまった。

カバンもスーツもおきっぱだ。

しまった、と思ったが、今は戻りにくい。

喫茶店かどこかで時間をつぶして、9時ごろ戻れば多分誰もいないだろう。


はあ、とため息をついた。

俺は何してんだ、と思う。

開き直って、都内の百貨店に向かうことにした。

新しい工具でも買うか。

丁度ドライバーがすり減ってたしな。


百貨店について、中に入ると、妙な声に引き留められた。

テーブルの上にはぬいぐるみが置かれているが、普通のものと違う。


「あれ買ってよおー」


子供が何やら親にそれをせがんでいる。

アレはそんなに人気なのか?

気になって見てみると、札には「まねっこ動物」と書かれていた。

柴犬のぬいぐるみで、値段は3000円。

何を思ったか、俺はそれをレジに持って行った。


家に着くと、早速そのぬいぐるみを開封した。


「おい」


試しにそう言うと、ぬいぐるみはマネをした。


「オイ」


なんかウケるな。

そして、俺はあることを閃いて、こう言った。


「お前は何も悪くない」


「オマエハナニモワルクナイ」


「小山田、お前は駐車場代に見合う働きをした」


「オヤマダ、オマエハチュウシャジョウダイニミアウハタラキヲシタ」


何だこれは。

めちゃくちゃ気分がいい。

その日から、俺はこの遊びにのめり込んでいった。


数か月後、俺はまるで別人のように自信にあふれた男へと変貌していた。

自己暗示とでもいうのか。

あのぬいぐるみでひたすら自分をほめ続けていた俺は、あの日から上司に何を言われても動じなくなった。

そして、心なしか、仕事もうまくいくようになっていった。

気が付くと、社内で一番の営業成績を収めるようになっていた。




















んなわけない。


終わり



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