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魔法の石と消えた村  作者: 白桜
第1章
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第4話 『魔女』の正体(前編)

 「ん……」


 少女は目が覚め、見慣れた木の天井が視界に入った。起きたばかりの脳はゆっくりと夢から現実世界へと覚めていく。


 夢から覚め、覚醒した脳は先程まであった出来事を思い出させる。


 「ッ!!……あれ?」


 勢いよく起き上がり、目に入ったのは少女にとって見慣れた部屋。


 __私の部屋?どうしてここに?自力で帰ってこれたっけ?私は森の中で襲われて、力を使って……。


 少女はここから先は思い出せかった。それは気を失っていたのだから仕方ないのだが少女はそれを考え続けてしまう。途端頭がズキズキしてきてしまい、もう一度寝ようとベッドにもう一度横になろうとしたとき、見知らぬ男性が椅子に座っているのが見えた。


 「!」


 バサッ!


 少女は咄嗟にかけ布団を体の前に出した。それは盾にするためになのだが、「柔らかくて役にはならないかもしれないな。」と少女は思いつつ、小さく叫ぶ。


 「来るなら来いっ!」


 しかし来るどころかその男性はその場から動こうとはしない。


 「え……寝てるの?」


 少女はベッドから足を床につけて、そこで目に入ったのは足に巻かれた包帯。


 包帯が出されているのならと部屋をもう一度見渡す。そうすると思った通り小さな机の上には救急箱があった。


 ベッドから降り、座っている人に近づく少女。


「スー…スー……。」


瑜磨は規則正しく寝息をたてている。どうやら寝ているようで肩が上下に動いていた。彼は椅子に座ったまま、前屈みの体勢で寝てしまっていた。


 少女は失礼します、と小さく言いながら瑜磨の顔を上げた。


「…綺麗な髪だ……。なんかサラサラしてる……。」


 少女は髪に触れながら瑜磨の顔を見た。閉じられた瞼のしたには紅の瞳が隠されていてあの人だと勘が訴えていた。


 「…ゆ……。」


 その名前を言おうとしたと同時に目が覚めた彼が瞼を上げた。



 瑜磨(ユマ)は目の前でこちらを見ている少女を見る。


 視線が合うと少女は瞬く間に顔を赤くしてアワアワと震え、床に落ちていた掛け布団にくるまった。


 「あ、……起きた。」


 「はい……?あの、あなたが私を?」


 少女はくるまりながら顔を出さず、瑜磨に背を向ける。


 「……はい。怪我を負っていたもので、ここまで。」


 「わぁ……!ありがとうございます!」


 少女は体勢を変え、掛け布団から顔を出して瑜磨に笑いかける。コロコロと態度が変わる少女。瑜磨も少女に微笑み返すと、真剣な顔つきになった。


 「しかし、貴女に応急手当てをするために、ま……見知らぬ人の家に思われるところに入れてしまいました。申し訳ない。」


少女はキョトンとしたあと何が可笑しかったのかクスクス笑う。


 「大丈夫です。ここは私の家ですから。」


 「そうでしたか。では勝手にお邪魔してすみません。」


 『魔女』の家ではなかったか、と瑜磨は思った。


 「大丈夫ですよっ!久しぶりのお客様です。しかもお世話になりましたし、ゆっくりしていって下さい♪」


 少女は瑜磨にお辞儀をして掛け布団を畳、ベットの上に置く。その後に部屋を出ていと、瑜磨は立ち上がった。


 使っていた椅子をもとの場所に戻した。部屋を出て、未依がいるキッチンへ向かう。


 __あいつ、まだ料理出来てないのか?


 今だ姿が見えない未依のことを思いながら向かうとリビングにある椅子に思っていた妹が座っていた。


 「あ、お兄ちゃん!」

 「……お前、どうした?料理作ってたんじゃないのか?」


 未依は頬をかきながら恥ずかしそうに笑う。


 「実はさ、料理作れなかった……。」

 「やっぱりな。

 「う゛〜……。でさ、梦羽(ユメハ)さんが代わりに作ってくれるって。」


 「『梦羽さん』?」


 未依が後ろを指差すとそこには先程まで寝ていた少女が料理をしていた。


 「作れなくて唸ってたら、梦羽さんが作ってくれるって!しかもここに住んでるんだって。いきなり声をかけられたからびっくりした!」


 「へー……。住んでるのは知ってる」


 瑜磨は未依の隣に座り、視界に入ったのはある大きな机。その上にはサラダボールが置いてあった。


 「待ってて下さいね。今作ってますから!」


 トントンと軽やかな音や煮える音が兄妹のお腹を空かせると、仲良く一緒のタイミングでお腹が鳴った。


 少女__梦羽はクスリと笑い、作るペースを上げた。



 「お待たせしました!」


 二人の前にはいい匂いを出している具沢山のシチューとロールパン。オニオンスープにはコルトが入っていて、他にも一口大に切ってあるフルーツやローストチキンなど豪華な料理が並んでいる。


 「作りすぎちゃいました。さ、遠慮なくどうぞ♪」


 梦羽は二人の前の席に座る。瑜磨はスプーンを取り、じっくり見て警戒しながらも一口シチューを食べる。


 「どう…ですか……?」


 「うん……美味い。」


 未依もそれを聞いて食べると嬉しそうに足をバタバタさせた。梦羽はにっこりと笑い、美味しそうに食べていく二人を見つめていた。



______

____

__


 「……ごちそうさまでした。」


 「はい♪じゃあ片付けますね!」


 梦羽が食器を持ち、キッチンへ行く。


 「っ……。」


 まだ本調子では無いのに張りきって作った梦羽。しかも一気に片付けようと皿を大量に持ったせいで倒れそうになる。


 「!」

 ぎゅっと瞼をきつく閉じたがいくら経っても痛みを感じず、恐る恐る瞼を上げたら兄妹が支えていた。


 「ありがとうございます……。」


 「無理しないで下さい。後片付けは僕達がやりますからね!」


 「ゆっくり休んでてください。」


 瑜磨が梦羽が持っていた皿を奪う。


 「こんな重いの……持たせてすみません。」


 キッチンへ運び、未依が洗っていく。


 梦羽は椅子に座ったが何もしていないと落ち着かず、ソワソワしてしまう。やっぱり手伝おうとしたが兄妹に止められてしまった。


 「私が迷惑かけてます……。あ!あの、質問いいですか?」


 顔を上げ、兄妹の方を向く。兄妹はテキパキと片付けていてキッチン周りが前より綺麗になったようだ。


「私をどうして助けてくれたんですか?もしかしたら魔物だったかもしれないのに。」


 瑜磨と未依は顔を見合わせ、一言。

 「……大怪我をしていたから、助けただけです。」


 「……!」


 「それに……、お……私の名前を呼んでましたし。」


 名前?と梦羽は首をかしげる。


 「なら……お二人の名前を教えてくださいませんか?」


 洗い物も済んだようで、兄妹は手をタオルで拭きながら振り返る。


 「僕は未依(ミイ)=グレーリス。こんな口調だけど一応女の子だよ!」


 「そして私が瑜磨(ユマ)=グレーリス。未依の兄です。貴女が呼んだ名というのは私の名なのです。」


 「え……?…瑜磨…くん……?」

 「はい……?」


 梦羽は何度か確かめるように呟くと瞳を潤ませ、突然に瑜磨に抱きつく。


 「瑜磨くん……っ!」

 「ええっ……!?」

 「会いたかったよ…っ……!」


 「お兄ちゃんや、お兄ちゃん。君はこんな可愛い恋人いたの?」


 困惑する瑜磨に対して冷やかすように話す未依。


 「……はぁ、お前が変なこと言うから泣き出しそうなんだが?」


 「えぇ!?ご、ごめんなさい!梦羽さん」


 瑜磨は未依の頭を軽く小突いて落ち着かすように深呼吸をさせた。


 その時に梦羽は目を擦った。


 「こちらこそ。いきなり泣いてごめんなさい。嬉しくって。」


 そのまま瑜磨から離れた。紫の、珍しい髪が瑜磨の頬を撫でる。


 「お恥ずかしい……。びっくりさせてしまいましたね。」


 梦羽は椅子に座り直し、瑜磨と未依に座るように促す。兄妹は梦羽と向かい合わせになるように座った。


 「いえ。大丈夫ですよ?……ところで『嬉しくて』?」


 梦羽は嬉しそうに笑い、頷いた。


 「私は瑜磨くんに会いたかったんです」


 瑜磨は彼女の意味がわからず首をかしげる。瑜磨は梦羽についての記憶がなかったからだ。


 「あ……ごめんなさい、わからないですよね。それにちゃんとした自己紹介がまだでしたよね。私は梦羽(ユメハ)=レイスタ・ロンド。この森に住んでいます。」


 梦羽は微笑むとお辞儀をした。


 「「初めまして。」」


 未依はふと、思ったことを口に出してしまう。


「住んでいる?なら、貴女は『魔女』をご存じですか?」


 『魔女』、その言葉を聞いた瞬間に顔が青ざめるほどに過剰に反応する梦羽。カタカタと体を震わせ、顔を伏せた。


 「あぁっ!ごめんなさい!」


 「いえ……。そうです。私が…この森に住む『魔女』なのです……!」


 顔を伏せながら小さな声だがキッパリとそう言い放った。

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