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魔法の石と消えた村  作者: 白桜
序章
3/14

第1話 瑜磨と未依

_この物語はのちに伝説となって語りつがれる_





昔、小さな村があった。


 「待ってよ〜!お兄ちゃん!」

 「早く来いよ!」


 「あらあら……。元気ねぇ……。」

 「そうですよね〜」


 その村で住んでいた仲良し兄弟の瑜磨(ユマ未依(ミイ。この二人が過ごしていた日々は村の者皆仲良く、幸せな生活を送っていた。



 「え……?」


しかし、ある『悲劇』は村を奪い、人々を奪った。瑜磨と未依だけが生き残ったのだった。


 「嘘……だろ……?」



時が流れ数年後、2人は18と17の若者になっていた。


 2人は色々な土地を回り、旅をして『悲劇』についての情報を探していた。


 「すみません、『悲劇』について何か知りませんか?」

 「いや…、知らないね……」



 2人はいつも何度も分からない、と言われ続けることに唸っていると一通の封筒が頭にぶつかる。何もないところから突然現れたそれは勢いよく瑜磨の後頭部に当たる。薄い白の封筒だが平手で殴られたような痛みが襲う。


 「いてっ!ん、なんだ?」


 その封筒を裏にして見てみれば綺麗な文字で≪ブラッティ≫と書かれていた。赤い蝋で封をされていたのを取り、て中に入っていた手紙を見る。


 『あなた方が欲しがっているものについて、お話があります』



_________________________


「……だからってここに来てよかったのか?」


ボソリと烏の羽のような黒髪の青年が呟くように小さな声で問いかける。すると、一緒にいた太陽によってより輝く金髪を持つ少女が目が覚めるような元気なハツラツとした声を出した。


「大丈夫だよ!さっさと入ろ〜、お兄ちゃん♪」


 兄と呼ばれた黒髪の青年、瑜磨は溜め息をつきながら改めて目の前にある建物を見る。その屋根の近くには茶色の板に白の文字で«ブラッティ»とかかれている看板がかかっている。


全体的に茶色っぽく、古い感じがする。だが屋根が白く、ヒビ割れやかけた部分がないのを見て真新しいので建られたばっかりなのだろう。そう彼は思った。


「ここでいいのかな?」

「多分な。≪ブラッティ≫って看板あるし」


その時2〜3メートルもある大きな扉がギギ……と音をたてて開いた。妹の未依を後ろに隠していつ襲われても大丈夫で反撃、攻撃が出来るように腰に下げている刀の柄を持ち、構える。


 その2人の前に«ブラッティ»からクスクス笑う女性が現れた。


「そんな風に構えなくて大丈夫ですよ。あなた方へ危害を加える気はありません。ようこそ、≪ブラッティ≫へ。お待ちしていました」


 瑜磨達が入ると女性は2人へ礼をして中を案内していき、瑜磨は未依を後ろに隠しながらついていく。


 ≪ブラッティ≫の中は明るく、騒がしいほど賑やかだった。白髪の老年の方から元気な少年少女、まだ幼い小さな子供まで多くの人々がいる。


「すごい……。人がこんなに……」


 瑜磨が周りを見渡すと女性はクスクスと笑う。その反応を見て瑜磨は幼い子供らしかったかと恥ずかしくなり俯く。それを見かけ、後ろにいた未依が飛び出し、瑜磨の隣に来る。


「まぁまぁ、お兄ちゃん。そういうことはよくあるよくある!」


「そうか……ってオイ。何俺の後ろから出てきてるんだ?」


「大丈夫大丈夫!この人たち、僕達に何かしようとはしないよ。“そう読みとったから”ね」


未依がニッと笑い、ピースをする。その間女性は未依を唖然と見ていた。


「え?あの…彼女、いつここに……?」


「あー……、さっきです」


女性は混乱しているように頭を抑えるが、それは始めてこの兄妹を見たのなら当たり前。


 未依は“見えていなかった”のだから。


 瑜磨が小さい頃に『悲劇』に巻きこれたときに身に付いた力。それは後ろに隠したものを見えなくさせることが出来る力を今使っていた。


 __昔、それでビックリされたな……。


「それに…、何でしょうか“そう読みとった”って……?」


「聞き間違いではないですか?」


 女性はその返答に首を捻らせる。


 「えっと……。あ、もうすぐマスターがいる部屋に着きますよ」


 そう言われたそばから黒い扉が見えた。女性はドアをノックし、声をかけ、暫くして扉がゆっくりと開いた。


「では私はここで」


「「ありがとうございました」」


 女性はにっこり笑い、賑やかな人混みの中に入っていった。瑜磨達は開けられた扉から部屋へと恐る恐る一歩足を踏み入れた。


 部屋の中には家具が多くあり、この部屋で暮らせるのではないかと思うほど。テーブルや椅子、壁等には柄がなく、物は家具が多いだけで物は少ない部屋。

 部屋をキョロキョロと見渡していると奥にあるウッドチェアに人が座っているのに気づく。その人も2人に気づくとウッドチェアから立ち上がった。


 「ようこそ、«ブラッティ»へ。私はここのマスター、サクラ。お待ちしていました」


 サクラと名乗った女性は恭しくお辞儀した。失礼がないようにと同じようにお辞儀する瑜磨と未依。


 「初めまして、サクラさん。お……私は瑜磨(ユマ)=グレーリスです。そして近くにいるのが」

 「未依(ミイ)=グレーリスです。よろしくお願いします♪」


 「いえいえ。こちらこそ。…それでは、あなた方はあの『悲劇』の……?」


 自己紹介を簡潔に済ませ、サクラが思い出したように問いかければすぐに空気は一変し、ピリピリとした肌が焼けるような空気に変わる。瑜磨はそんな空気を変えるように小さく頷く。


 「私達は幼い頃ユーカリ村で暮らしていました。しかし、幼い頃兄妹を残して一瞬……、瞬きをしたその一瞬で消えてしまいました」


 「…そう……。ごめんなさい……。私…辛いことを思い出させてしまったのですね……。」


 未依が否定を込め、頭を横に振る。


 「大丈夫です。僕一人だったら辛くて立ち上がれなかったかもしれません。けど、お兄ちゃんが側にいてくれて、2人で旅ができて嬉しいんですよ」


 未依が嬉しそうに笑うと釣られて瑜磨も笑った。その2人を見て笑っていたサクラはふと、何かに気づいたように呟く。


 「あの……、失礼ですがお2人は兄妹ですか?」


 「「はい」」


 サクラは気まずそうに視線を反らした。


 「ごめんなさい。お2人がご兄妹に見えなくて……」


「いいんですよ。私達の髪の色も、目の色も違いますから。しょうがないです」


 どう反応したらいいのか解らないサクラは苦笑いする他なかった。先程の質問は見たところ、瑜磨と未依は似ている部分が全くない兄妹だったから。


 「……話を戻しましょう。私達へなぜ、手紙を出したのですか?しかも貴重とされる『ストーン』を使ってまで」


 『ストーン』。それはこの世界では誰もが欲しがっている宝石。それはただ美しいだけではなく、生活に便利な宝石だからだ。しかも種類によって効果は様々なため、1つ持っていても他の宝石が欲しいと言うコレクターもいる。


 「ん?何だい、それを置いてとっとと消え失せろ!!」


 中にはガラの悪いコレクターももいるらしい。その為、ほとんどの人が露骨に使おうとはしない。


 瑜磨が昔『ストーン』を使ってみたときに『ストーン』が消えたことがある。その時のように一度使ったら消えるということもその理由の1つに含まれる。


 「私がお2人に手紙を出したのは『悲劇』が起こってしまった村について知っていることと、わかったことを教えて頂きたいのです」

 

「どうしてですか?」


 サクラは机の引き出しから手のひらほどある分厚い本を取り出し、開いた。ページを捲っていくとメモが書いてある紙や付箋がたくさん貼ってある箇所が多くあった。


 開けてあった窓から入ったであろう風によってヒラリと本に挟んであった紙が瑜磨の足元へ落ちた。サクラは気づいていないらしく、未依と話している。


 瑜磨が拾い上げて内容を見る。そこには数々のユーカリ村についてのデータが箇条書きで書かれていた。


 以下はそのメモについて書かれていた事。



____________


 『<悲劇の村について>


 ・南部の標高が高い場所にあったユーカリ村(今はただの森となっている)


 ・その村にいる村人は合計50人程だった(子供含め)』


 ・特定の場所にはストーンか多く採掘されていた。

(当時はストーンに効果があるとわかっていなかった)


 ・村人の中には特殊な能力を持っている家系があったらしいが、どのような者が持っていたか、どのように暮らしていたのかは今だ能力と共に不明


 ・この村に悲劇が起こった際、2人の子供が生き残った。今は旅をしているらしい(2人は本当に血が繋がっているか?と思ってしまうほど似ていないらしい)


 ・×××,11,19。村は『悲劇』によって消えた。尚、その悲劇がどのようなものだったのかは知られていない(だが私は知っ……)……』

______________


 「…これは……」

 「!」


 サクラは慌てて瑜磨からメモを引ったくるように奪い取った。瑜磨はそのサクラの反応に驚いた。対して未依はそのことに気にする素振りもなく分厚い本を呑気に読んでいた。


 「あ…ごめんなさい……」

 「いえ、気にしないでください」


 __今、人格が変わったな。


 瑜磨は心の中でそう呟いた。まるで見られたくないものを見られたかのように、と。奪い取った反応の早さやサクラの顔は焦りと怒りが要り混じっていた。しかし、ならば兄妹に本を見せたのか……。


 村についての『悲劇』について調べていてその答えは瑜磨に関係している。その答えを知りたがっているのだろうか、とも。


 手紙を使って呼び出したのも変だと瑜磨は考える。


 わざわざ『ストーン』の『翡翠』を使って手紙を送るよりも『猫目石(キャツ・アイ)』を使ってここに二人を移動させればいい。


 __……そうしたら必ずここを全壊にしていたかもしれないが。


 瑜磨は場面を想像してクスリと笑う。

 ただ、『ストーン』を見られたせいで襲われたのは紛れもない事実だった。


 『お兄さん達、いいもん持ってるねぇ?俺達と一緒に来てくれないかなぁ?』


 そういう、今では関係無い事を考えているたが、呑気にサクラと話してる未依を見て考えるのをやめた。これ以上今関係無いものを考えても時間の無駄だとかんじたからである。


 「ありがとうございます」


 サクラは嬉しそうに笑うと釣られて未依も笑った。


 「それじゃあ『悲劇』とは何か、どうして皆が消えてしまったのかを調べてわかったのを教えればいいのですか?」


 サクラは頷く。そして未依に『瑠璃』、『猫目石(キャツ・アイ)』、『琥珀』の『ストーン』を渡す。


 「『瑠璃』は通信、『猫目石(キャツ・アイ)』は手紙を送り、『琥珀』は移動が出来ます。瑠璃と琥珀には術を使って何回も使えるようにしてるけど、他のはそうではないから気をつけてくださいね」


 未依は「ありがとうございます!」と元気にお礼を述べるが瑜磨は何か考え込んでいた。


 そんな兄の背中を強く叩き、「行こう、お兄ちゃん!」と未依はあどけない笑顔を見せるのだった。

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