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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

業務用エレベーターの中

作者: ねぎま

気がついた時には、無機質で直角な何かに持たれているのが了知した。

一回何かで見た事があるような気がする。どうやら、デパートなどにある、業務用のエレベーターらしい。

私は、閉ざされたドアから見て左上の隅に持たれているのだが自分以外、四隅に若い男、中年の女そして男の老人が同じくしている。

我ながら三人の配置が 金輪際覚えがない。若い男は、相当怯えた表情をし頭がわなわなと震えている。中年の女は、無表情をし俯いている。老人、これも無表情に違いはないが、正面向いて茫然としている。


無為に周りを観わたしても、取り分け変化するわけではない。

だが、下を見ると大きな血溜まりがあるではないか。目線を徐々に上げると、池の中心に大きな一枚岩があるように、血溜まりの中央に古事記に出てくる神武天皇の様にむしゃむしゃとした髭、爆発が起きた髪の毛が印象の男の生首がたたずんでいる。

非現実ながら何の感情も湧かないのは夢の中だからに違いない。

見ている自分さえそう成り得ないほど、顔面蒼白極まりなく、唇、双眼ともに慎ましく閉じている、けども唇の端からは血がはみ出している。そしてもじゃもじゃのお髭は、当然ながら鮮血に浸っている。


いつの間にか閉じていた筈のエレベーターのドアが開いていた。

少しして男が怯えきった顔をしてドアの方へ歩いて行った。ドアの外は墨を垂らしたようで、そのほか何も無い。お先真っ暗とはまさにこの事だろう。

男はフラフラとした足どりでドアの外に出て行った。

二、三メートルという所で男は視界から消え失せた。

ぼーっと外に広がる闇を見つめていたら、突然外に出て行ったであろう男の叫び声が聞こえてきた。

物凄い。断末魔。

急に叫び声がやんだ。出現するのは静寂。

少しのタイムラグ、微かながらこちらに近づくと思われる足音が耳朶に触れる。コツコツ…コツコツ…

すると、エレベーターののドアが閉まった。思い返せばエレベーターのボタンのような気の利いたものは無かった気がする。

上昇しているのか、下降しているのか、皆目見当つかない。エレベーターは、上か下、どちらかに移動している。

止まったのは流石に分かった。

ドアが開く。眼前に展開されているのは、同じ静寂と闇である。

女は無表情で、ドアの方へ歩いていく。

躊躇無く女はエレベーターの外に出て行った。

すると、絹の裂くような甲高い叫び声が走った。女がこれの持ち主なのは確かだ。

またピタリと止んだ。

コツコツ…コツコツ…また同じく、こちらに近づく足音が聞こえてくる。

さっきの男の時より足音が大きい。どうやら近くに迫っているようだ。

近づいてくる足音を聞つつ、エレベーターの扉が閉ざされた。


ドアが開く。例のごとく、ドアの外は、黒一色、光一つ無い。

千鳥足で老人は、外へ。足音だけが聞こえる。

ピタリと足音が消えた。

コツコツ…コツコツ…いよいよもって迫る。

何時ここに来るか、謎の何かがここに来るのか、という所でドアが閉まった。


ドアは、今までと何ら変わらず、開く。


私はゆっくりとした足どりで、ドアに近づいていく。そのまま、闇の中をひたすら歩き続ける………暗転。


気がついたらいつもの自分の部屋だった。何らかわりはない。




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