第三話
――――和泉聡介
彼との出会いはまだ春先ごろ。私が二年生になったばかりの頃だ――――
「いたっ!イタタ…」冷たい感触と痛みが走った。
「ダメだよ、あかりちゃん。あばれないでよ」
押さえつけようとする彼女に「だってさぁ…」と涙声で訴える。
「だってじゃないよっ。大事な事なんだから」
放課後に私は、友達の宮島沙由子――通称さゆちゃんと保健室にいた。
「痛いっ、痛いってさゆちゃん。もう少し…優しくして?」
すごいジンジンする。ここまで痛いものなの?
「もう、さゆだって初めてなんだから。ちょっとは我慢して?」
必死な顔で続けようとするさゆちゃん。
「えっ、はじめてなの?」
驚いて大きい声を出してしまった。確かに手が震えている気がする。
「そうだよー、だーりんにもこんな事した事ないんだから」
初めてなのに自慢げに「さゆはうまいよー」とか言ってたのか。
てっきり彼氏がいるからこーゆう事には慣れてるのかと思った。
まぁでも、ある意味初めてが私で良かったかも知れない。こんなに乱暴なんだから。
「痛いっ!」「我慢だよー、痛いのは最初だけなんだから」
震えた手で刺激を与えてくるさゆちゃん。敏感に反応してしまう私。
正直こんなに痛い思いをするとは思っていなかった。
保健室には私たち以外誰もいなく、二人の声だけが響く。
グラウンドではサッカー部がランニングをしていて、その掛け声が遠くに聞こえる。
掛け声の方に目を向けると、顧問の先生らしき人が笛を吹きながら部員たちを煽っているように見える。
あの中では先生が一番元気なようだ。
「いたいってっ!」
不意に強い痛みが襲ってきた。余所見をしている暇はないみたい。強く目を瞑って次の痛みに備える。
「でもあれだねー、保健の先生帰ってこないね」
その言葉に薄目を開けると、さゆちゃんの手は止まっていた。彼女も窓の外を見ている。
「職員会議だからねー。さっき放送あったばかりだから、しばらくは帰ってこないかもね」
もう一度窓の外を見ながら答え、横目でさゆちゃんを盗み見た。いつもは幼い彼女だが、夕日を浴びて少し大人びて見えた。
保健室のドアには――職員会議の為、留守にします。ご用の方は勝手にお使いください――と、張り紙がしてあった。
なんともいい加減な書き置きである。先生らしいと言えば先生らしいけど。
そんな訳で、私たちは勝手に使わせてもらってる。いつも先生がいるはずの保健室に友達と二人きりっていうのは…少しドキドキする。
「よし、おーわりーっ!」と、最後にトントンと軽く叩かれた。
「いたっ、いたいって」
今度この娘に、応急処置のやり方教えてあげないとなぁ。ガーゼが張られた自分の膝を軽く撫でながらそう思った。
今さゆちゃんにしてもらっていたのは怪我の手当だ。
部活の最中に転んで膝に怪我をしてしまった私を、同じ女子バスケ部だったさゆちゃんが手当てしてくれていた。
「さゆにまかせろーっ」と言うからお願いしたのだが、これじゃ自分でしたほうがマシだったかも知れない。
でも彼女なりに一生懸命やってくれたのだからこれ以上文句は言うまい。
消毒液やガーゼを片付けながら「これから部活戻るけど、どうするの。帰るー?」と、聞かれた。
「うーん、今日は帰ろうかな。見た目ほど痛くはないけど、これで部活したらみんなに迷惑が掛かるかも知れないから」
手を合わてごめんをしながら言うと「それがいいかもー。先生に伝えておくよー」と、さゆちゃんも賛成してくれた。
「うん、ごめんね。パス回しの相手なのに」
私とさゆちゃんは練習する時、よくパートナーになる。
「大丈夫だよっ。さ、途中まで一緒にいこ?」
ニコって笑う彼女は、女の私でもドキっとする。こりゃあ彼氏がいる事が知れ渡ってても告白される訳だよ。
保健室を出た後、さゆちゃんは常に私の怪我を気遣いながら歩いてくれた。
「痛くしてごめんね?」など道中で何度も謝られた。良い娘だなぁ。
部室棟へ続く渡り廊下まで来たところで、さゆちゃんとは別れた。
かと思うと一度こっちに振り返って
「気をつけて帰ってねっ、またねっ!」
と言って、さゆちゃんは体育館の方へ走っていった。
ちょこんと結んである髪がゆさゆさと揺れていて可愛らしい。彼女の代名詞とも言えるものだろう。
さゆちゃんの姿が見えなくなると、私も部室に足を運んだ。
帰り支度を済ませ部室を出たところで「――~♪♪」と、何処からか鼻歌が聞こえてきた。
鼻歌の出所の方を振り返ると、階段を昇っていく人影が見えた。
こんな時間に誰だろうか。今の時間はほとんどの運動部が活動中で誰もいないはずだ。
この学校の部室棟には運動部の部室しかなく、文化部は本校舎で何かしらの教室を使って活動している。
「何してるんだろう」と言う好奇心が沸いてきて冒険心が私をくすぐる。
こっそりと人影を追いかけ二階への階段を昇る。普段私が使う女子バスの部室は一階にあり、二階はおろか三階にも行った事はなかった。
一年間も通ってきたけど、この階段を昇る機会がなかったのは自分でも以外に思う。
まるで尾行している探偵になった気分で、コソコソと二階の廊下へ出た。
二階もどうやら部室として使われているようで、一階と同じような景色が廊下に広がっている。
違うのはそれぞれの教室のドアに貼り付けてある―○○部―という文字と、各々の活動で使うと思われる物が廊下に出してあったりする。
私が物珍しく周りを眺めていたら「~♪♪――」と、また鼻歌が聞こえてきた。
三階から聞こえてくるようだ。三階には何があるんだろう。気付かれないように隠れながら尾行を続ける。
階段を上った先には…、教室はおろか廊下まで物置と化していた。
ぱっと見た感じだと…去年の学校祭・体育祭で使った機材や予備の教材…だろうか、が無造作に置いてある。
ぼろぼろになって使われなくなった陸上で使う器具・バスケットゴールなども置いてあった。
処分すれば良いと思うのだが…。この学校の管理体制を疑ってしまうような光景である。
見慣れない光景に辺りを見回していると、廊下の一番奥に何も置かれていない一角を発見した。
「なんであそこだけ?」そんな疑問が私を奥へと進ませ、恐る恐る近づく。
何も置かれていない一角には教室があった。ドアが閉められている。
他の物置になっている教室のドアは開けっ放しになっているのに、何でここだけ?
このドアの周りだけ荷物が退かされていて、綺麗に積まれている。まるで人の出入りがしやすいように。
それにこの階は、物置と言うわりにはあまり埃っぽくはない。やはり頻繁に人の出入りがあるのだろうか。
「帰ろう」ボソッと呟く。なんだか怖くなってきた。誰もいなくて物が散乱している廊下は不気味だ。
そういえば子供の頃にこんな感じの怖い映画を見た事がある。その描写を思い出した途端に鳥肌が立った。
私が教室から離れようとした時、コツコツコツと足音が近づいてきた。チャリンチャリンって音も聞こえる。
咄嗟に物陰に隠れた。だんだん近づいてくる足音。私はイケナイ場所に入ってしまったのかも知れない。
怖さのあまりキュっと目を閉じて息を潜める。
私は一人で何してるんだろう。不安が募る。不安になると人は怖さを感じるって言うけど本当みたいだ。
足音がこっちに向かってくる。だめだ見つかっちゃう。いっそう強く目を閉じた。
すると足音が私の前で止まった気がした。そして
「君は誰だ?」
と、男の声が聞こえた。
ゆっくり目を開けて声の方を見上げる。そこには右手をポッケに入れて左手でカギをチャリンチャリンと回している男がいた。
私はその場にぺたんっと座り込んだ。本当に怖かったから力が一気に抜けてしまった。
「どうしてこんなところに?立ち入り禁止の張り紙見えなかったのか?」
男が言うには、二階から三階へ続く踊場に『立ち入り禁止』と張り紙がしてあったらしい。
見てなかった。まったく見えてなかった。じゃあ私は生徒が入ってはいけない所に来てしまったようだ。
「あ、あの、ごめんなさい。私気づかないで」
素直に謝った。私は基本的に良い子なのだ。
「まぁ、見なかった事にしてあげよう。今日は帰りなさい」
カギを回しながら男は優しい口調で言った。
見逃してくれるらしい。…でも、ちょっとまって。この人は誰?この人は入ってきていいの?
「あの、あなたは入ってきても良いんですか?生徒ですよね?」
男はこの学校の制服を着ている。そして名札のシールの色は青、つまり私と同じ二年生だ。
「僕は良いんだよ。ほらそこの部屋は僕が管理してるから」
そう言って彼は持っていた鍵を軽く宙に投げた。
私に向かって落ちてくる鍵を両手で掴む。その鍵にはキーホルダーがついていて、木製の小さな板に名前が書いてある。
「和泉聡介…誰ですか?」と彼を覗き込む私に、「僕だよ」と微笑みながら彼は答えた。
「その鍵でそこのドアを開けてごらん」
さっきの教室の扉を指差しながら和泉聡介は言った。
あやしい人から渡された鍵をオドオドしながら鍵穴に挿して回した。ガチャと扉が開いた。
「あっ、開いた」
隣にいる和泉聡介を見ると「ほらね?」と言わんばかりに笑顔である。
「中に入ってもいいよ」
そのままの笑顔で言われた。ガラッと言われるままに扉を開ける。
「あれ、机が綺麗にならんでる。」
部屋の中は、まるで会議室のように机と椅子が並んでいた。
遮光カーテンで窓は締め切られていて、奥の机にはノートぱそこん?が開きっぱなしで置いてあった。
和泉聡介はそのノートぱそこん?に向かって歩いて行った。
「これを取りにきたんだよ。忘れて行ってしまってね。部活で使うんだ」
「いやぁ、まいったよ」と頭を掻きながら彼は言う。何でこんなところに私物を忘れたんだろう。
「この部屋で何してたんですか?何をする場所なんです?」私は周りに浮かんだ疑問符を彼に投げつけた。
「詳しくは言えないけどね、僕は漫画研究部なんだよ。そこでこのPC使うんだ」
ぴーしーってなんだろう。って言うか、質問の答えになってない。
「そ、そうなんですか。で、何してたんです?」
あやしいなぁ。この教室を管理って…許可取ってんのかな。
「仕方ない、見てごらん」長くため息をついてから、彼はぴーしーの画面を私に見せてきた。そこには…
「…え、えっと、通報しますね」
画面を一目見てから彼に向かって笑顔で言った。
一言で言うと、男女がアレやコレをしている絵が台詞付きで描いてあった。
「通報とは物騒な事いうね。これは自作の漫画だよ。ストーリーやイラストはオリジナルだ」
自慢げに説明を始める彼だが、物言いがあまり好きじゃない。
「あの…意味はわかるんですが、あまり横文字を使わないでください」
彼に指摘した。私は横文字はどうも好きじゃない。
でもたしかに、漫画にはなっている。彼がカチカチっと画面を切り替えると物語が進行していく。
「そうなのかい?でも君も使ってた気がするんだが、それはいいのかい?」と、痛いところを付いてくる。
「私が横文字を使うのは他に言い方がない時ですよ」と、ウィンクしてごまかした。そこは触れてはいけない部分だよ。
「それはそうと、話を戻しましょう。この漫画はいけないと思います。それと簡単に女子に見せないでください」
この漫画は一歩間違ったら本当に通報されるような内容だよ。よく平気な顔で他人に見せられるもんだ。
「そうか…、君にはまだこの内容は早いんだね。言っておくが、誰でもいずれヤる事だよ」
ニヤニヤしながら彼――和泉聡介はぴーしーの画面をどんどん切り替えていく。
私は馬鹿にされてるのかな。
「そ、そりゃ…興味はありますよ?私だって年頃の娘なんですからね!」
・・・・・・
ハッとした。自分が恥ずかしい事を言ったと気づくまで数秒掛かった。だんだん顔が熱くなり耳にまで熱を感じる。
それを聞くや否や和泉聡介は「ほほう、kwsk」と、迫ってきた。え、今なんて?何語?日本語でおねがい。
「わかんなかったかな?文面では『kwsk』だけど、発音は『クワシク』と読んだんだけど。それも聞き取れないのか」
私の疑問を読み取ったのか解説をされた。ちょっと何を言ってるのかわからない。なんなのこの人。
ってか、このままだと話が変な方向に進んで行っちゃう。修正しないと。
咳払いをして「えっと、この際この漫画はいいです。見なかった事にします。」と方向修正を試みる。
「残念だ。君の○○な話を聞きたかったのに」
残念そうに彼は言った。そんな話するもんか!変態なのかなこの人は。
「で、この部屋で漫画研究部のあなたは何をしてたんですか?」
少し声を張り上げて言う。恥ずかしかったのもあるけど。
「今の流れでわかんなかったの?漫画描いていたんだけど」
ヤレヤレと両手を挙げて言われた。
何なのこの人!本当にっ!超MM!!遊ばれてるとしか思えない。
「もう、いいです。帰ります!」
私が踵を返そうとした時「君、部活には入ってるかい?」と不意に聞かれた。
「入ってますが、それがどうしたんですか。あなたには関係ないでしょ」
馬鹿にされている感じに腹は立つのだが一応答えた。私って大人だからね。
そして立ち去ろうとしたが、彼がサッと私の前に立ち塞がって通せんぼをして来た。
あまりにも素早い行動に鳥肌が立って、それと同時に身の危険を感じた。ってか超怖いんですけどー!
「な、なんですか。退いて下さい!それとも私をあの漫画みたいにするんですかっ!」
和泉聡介の見せてきた漫画はまさに今のような展開だった。
「それも良い提案だが、リアル女には手を出さないのが僕の流儀でね」
別に提案してないって。意味わからないなぁ、もう!
これ以上この人に付き合ってたら精神が持たない。そう判断した私は、ポッケの中のスマホに手を掛け電話で助けを呼ぼうとした。が、その瞬間
「君、この部屋が何か知りたがってるよね。教えてもいいよ」
と言われた。
少し考えてから「わかりました」と、一言だけ答えた。
この人のせいで興味が薄れていたはずなのに、好奇心には勝てないなぁ。
「教えるけど、その代わりとして部活に入って欲しいんだ」
彼は手を差し伸べて握手を求めてくる。が、その手を軽く叩いて答えた。
「私、もう部活はしてますよ。女子バスです」
「僕だって部活はしている。掛け持ちをしないか?と言ってるんだよ」
と、もう一度握手を求めてくる。
「しつこいです。そもそも部活の内容はなんですか。それも知らないのに入部するほど私は尻軽じゃないです」
いい加減に腹が立ってきたので勢い任せにまくし立てた。
意味不明な人から意味不明な部活への勧誘を受けて、誰が入ると言うの?なんなの?しぬの?
「そうだね。じゃあ、付いて来てごらん」そう言って教室の隅にある扉を開く変態、和泉聡介。
案内されるがまま恐る恐るその部屋へ入ると、そこには流し台と食器棚…さらには冷蔵庫まであった。まるで台所のようである。
「なんですかココ!すごい綺麗に整ってますけど」
私は家事を良くするから良くわかる。生活観があって、それでいて綺麗に整頓もされている。
食器棚にはティーカップやポットなどが並んでいて、冷蔵庫にはお茶菓子などが入っていた。
「ここは我が部が使っているキッチンだよ。元からあった流し台を少し改装して使えるようにしたんだ」
彼は両手を広げ自慢げに話す。少しどころではなかった。これはもう一般家庭にあるそれか、それ以上だ。
「この部に入れば、君のティータイムは保障される。羊羹やケーキもあるぞ?」
この人…一瞬悪そうな顔したよね?女は皆甘い物で釣られると思うなよ?
「私を物で釣ろうって事ですか?」
たしかに甘いものは大好きだけどもだ!そんな単純な私ではない。
「詳しく話を聞きましょう。まずはそれからですね」
詳しい話も聞かないで無下につっぱねるのは人間として良くないと思う。
釣られた訳じゃないよ?ほら私って道徳がある女だから。
「よし、では決まりだ。普段ここは昼休みにしか使わないのだが、特別にお茶にしようじゃないか」
和泉聡介がちょっとだけ魅力的な提案をしてきた。その話に乗って上げようじゃないの。
「じゃ、じゃあ、私がお茶用意しますっ!お茶菓子は好きなもの選んでいいですか!?」
別にノリノリなわけじゃないよ?話を聞くだけだからね?
「おまたせしましたー!」
二人分の紅茶とケーキを机に置いて私は席に着いた。
和泉聡介はぴーしーをカタカタしていた。
「漫画描いてるんですか?」
その質問に「ん…ああ、悪いね。ストーリーの続きをね。」と言いながらぴーしーを閉じる。
「さて…」と彼が話を始めようとする。
「あ、その前におかわりいいですか?」
私のお皿からは一瞬にしてケーキが無くなっていた。このケーキおいしい!どこのお店のだろう。
「あ、ああ。気に入ってもらえて嬉しいよ」
呆れ顔で言われた。だっておいしいもん。
さっきまでの冷静な私はすでに何処かに行ってしまっていた。
私が二皿目のケーキを持ってきた所で「さて、本題に入ろう」と彼が話を始めた。もぐもぐしながらそれにうなずく。
「改めて自己紹介をしよう。僕は和泉聡介。この告白代行部の部長をしている。以後よろしく」と軽く会釈をしてきた。
礼儀正しくしてきた彼を良く見ると、それなりに格好は良いみたい。中身はどうかと思うけど。
「そういえば自己紹介まだでしたね!私は星野あかりって言います。よろしくおねがいします」
私も軽く頭をさげた。
これが日本人の性ってやつだろうか。相手が礼をしてきたら反射的に礼をしてしまう。くやしい。
ん、あれ?部の名前がなんか聞きなれない部だなぁ。「告白代行部ってなんですか?」
首を傾げながら聞いた。
「さっき言ったと思うが、僕は漫画研究部に所属している。告白代行部とは掛け持ちだ。掛け持ちと言っても、この部は常にやる事がある訳じゃない。そして、昼休みにしかこの部室に部員は集まらない決まりになっている。それぞれの本命部活に支障が出るからな」
説明してくれているのはわかるけど、いまいち理解ができない。
なんだろうなぁ、この遠まわしな言い方と言うかなんというか。
「あの、告白代行ってなにするんですか?」
この人って…実は説明下手?それともわざと?
「あ、ああ。悪かったね。告白代行というのはね…」
コホンと咳払いをして彼は続けた。
「文字通り告白を代行する事だよ」とズバリと人差し指を立てて言い放った。
それくらい私でもわかる。「あの…具体的には、何するんですか?」
私も私で飲み込みが悪いのかも知れない。
「そうだねー、たとえば…」しばらく考える和泉聡介さん。紅茶を軽くすすってから、
「君には好きな人がいるとする。だが、自分で告白する勇気はない。そこで我々の内の誰かが代わりに告白をすると言う事かな」
彼は得意げに説明してくれたけども、実にそのままの意味だった。この人はやっぱり私の事を馬鹿にしてるの?
「ただし、条件がある。」
机に両肘をついて手の甲に顎をのせて、彼は付け加えた。
あれ、なんだかこの人の空気が少し変わった気がする。鋭くなったと言うか真剣さが増したというか。
「告白を依頼してくる依頼者にも、それなりのリスクは背負ってもらう。そうじゃないと面白くないからね」
何か物騒な事を言い出した。リスクが面白い?告白に危険は付き物じゃないの?それとは別にって事かなぁ。
「えっと、たとえば?」私は少したじろぎながら聞いた。
その質問に彼は目を閉じて答える。
「A君がBちゃんへの告白を成功させるため、我々に依頼をしてきたとする。我々はC君と言う部員を派遣し、C君がBちゃんへ愛の告白をする。C君とBちゃんは恋人同士になる。そしてC君はA君に恋人の権限を渡す。と言う流れだ」
えっと、何ていうか…
「何でそんなにまどろっこしい事するんですか?簡単に言えば修羅場を作り出すって事ですよね」
それじゃあ、A君はちょっとかわいそうなんじゃないかなぁ。Bちゃんも何か気の毒な気がするし。
「何で…か。」彼は軽く深呼吸してから「僕の趣味だ」と言い放った。
エー!?それだけ?それだけの為にそんなことするの?なんで?意味わかんない。
呆気にとられてる私を一瞥して「何も恋愛事の告白が依頼の全てではない。コンプレックスの告白や疚しい事の告白もあるだろう。それらの依頼ももちろん代行する。その場合のリスクは既に依頼者が大いに背負ってると見なし、我々からは特にリスクは要求しない」
と、紅茶をすすって私に向き直る和泉聡介。
・・・・・
・・・・・
少しの間、本当に一瞬だけ「何言ってるのこいつ馬鹿じゃないの?」と思ってしまった。そんな事口にできないけど。
「…えっと」私はとんでもない人と関わりを持ってしまったかも知れない。動揺してキョロキョロと辺りを見回してしまっている。
と、ある疑問が出てくる。
「えっと…じゃあ、和泉さんは――愛の告白をして失恋してしまうのはリスクではない――と言うんですか?」
さっきの説明だと…A君がCちゃんに直接告白をして、A君がCちゃんにフラれる事はリスクに入らないって聞こえるんだけど?
告白してフラれて失恋に苦しむ事は、十分辛いと思うし当たり前の事なんじゃないかな。
「さっきも言ったと思うが、これは僕の趣味だ。当然依頼を受けたからには我々も尽力はする。その条件を飲めない場合は依頼を取り下げてもらっても構わない。自力でがんばれば良いだけの話だからね」
淡々としゃべるなぁ、この人は…。自分が変な事言ってる自覚はあるのかなぁ。
彼は基本的に両肘をついて顎を手の甲に乗せて喋っている。癖なのかな?なんか偉そうに見える。
それにあまり感情が見えないような気がする。さっきまで笑ったりしてたのに。
「そうそう、依頼者は各部員が見つけてくる事になっているのだが、大々的に部の宣伝はしていない。だから依頼ない時は本当に暇だ。ただのお茶会をするだけの集まりになってしまう」
思い出したように彼は説明を続ける。
「基本は秘密裏に活動する部活だ。よって学校で集まるのは昼休みだけ、ここで昼食をとる部員もいるくらいだ」
お、じゃあ依頼がなければ…ただの平和な集まりって事かな?お茶できるし甘い物も食べれる。ちょっと魅力的かも。
「どうしても…何をしてでも告白に成功したい者だけを依頼者と見なし、この名刺を渡して此処へ連れて来る。我々の活動を秘密に出来ない者へはそれ相応の罰を受けてもらう。それは部員とて同じだ」
そういうと和泉聡介は胸ポッケから名刺を取り出して、私に渡してきた。
うーん…、秘密結社って事かぁ。大体は理解できた。
ちなみにケーキは三皿目である。本当おいしいよこれ!
「さて、ではこの告白代行部の一員として君を迎えたいのだが。どうだろうか?」
改まって私に向き直り、今度は背筋を伸ばして聞いてきた。こう見ると見た目だけはなかなかの好青年だ。
「うーん、そうだなぁ。じゃあ、最後に質問いいですか?」
その言葉に軽く頷く和泉聡介。一旦、頭の中を整理して…そしてまくし立てる。
「ここに部員は何人いるんですか?皆さんが部活を掛け持ちしてるんですか?僕の趣味ってどーゆう事ですか?ここで私が断ったらどうなります?このケーキはどこのお店のですか?」
思いつく限り不明な点を質問してみた。言い終わったら少し息切れしてしまった。
、「さ、最後の質問と言う割には多いな…。まぁいいか、答えてあげよう」
私の質問攻めに呆れた様子で言われた。この人に呆れられるのは何か腑に落ちない。
「告白代行部の部員数は、僕を含めると現在6名」
以外に多いのね。どんな人達なんだろう。
「全員が各々の部活に入っていて、こことは掛け持ちをしてもらっている。ちなみに、君が三皿も平らげたケーキは家庭科部と掛け持ちの者が作っている」
なんと!こんなにおいしいケーキが自作とは…。是非お友達になりたい!
家庭科部というのは、炊事洗濯などの家事全般を身につける為の部活だ。部活の内容から女子部員がほとんどだと聞いている。
「入部を断ったらどうなるか。それは…我が部員達が君を監視し続け、秘密を厳守出来るかどうかを見させてもらう」
なっ…!それは嫌だ!今後の学校生活に関わるって事?こわっ!ってかそれいいの?何とか法に引っかかったりしない?
「もちろん、厳守できなければそれ相応の対処はする」と、付け加えた。非常に怖い事を平然と言うなぁ。
「さて、僕の趣味の事だが…。入部してもらえるのであれば直にわかる」そう言って紅茶を飲み終える和泉聡介。
コレに関しては答えになってないっ!知りたきゃ入部しろって事?監視もされるし?ケーキ食べちゃったし…三皿も!!
嫌な汗が額からじわりと流れてくる。これってピンチなのでは?私ピンチなのでは?
必死に考えるがうまい逃げ道が見つけられない。入部すれば変な事に巻き込まれかねないし断れば監視される。
何でこうなった?好奇心は猫をも殺すってことわざを聞いた事あるけど、まさにそれ…私は猫!にゃーん!!
質問に答えた後、おなじみになった両肘を机について手の甲に顎を乗せたポーズをとる和泉聡介さん。
じっと私の応えを待っている。目を細めて私を見ている。視線が痛い!もういやだ!
気分はまさに蛇に睨まれた蛙。いや猫?どっち?どっちでもいいし!猫で蛙な私…、えーん><かえりたいー!
よく考えろ私!依頼がなければ何もないんだっ!おいしいお茶とお菓子を食べれるんだ…。
これからの学校生活を監視されるよりかは…マシなのでは?まてまて、もし依頼が殺到するようなら…?
何だこの究極の二択は、私は一般ピーポーだよ?純情な乙女で女子高生な青春を謳歌だよ?ええぇ!?なにこれぇ…;;
自分が何を考えてるのか判らなくなってきた。
――――
――
どのくらいの時間が流れただろう。三十分?一時間?時計どこ?あれ…どこ?
この部屋の教室にあるはずの時計がどこにあるかもわからない。それほど私は焦っていた。
秒針の音がやけに大きく聞こえる。もうだめだ…、この重圧に耐え切れない。
和泉聡介の目線と秒針が刻む音でおかしくなりそうだ。もう…どうにでもなれっ!自暴自棄になる私だった。
そして
「入部させてください」
と言ってしまった。考えるのをやめたのである。言っちゃったー!!
その応えに「良く決断してくれたね。ようこそ我が告白代行部へ」と、ニコッて笑う和泉聡介。
さっきまでの刺さるような視線はもうない。この人演劇部に入ったほうがいいんじゃない?
彼の笑顔を見て少し安心したのか「はぁ~」と机に突っ伏す私。勘弁してよぉ~。
そして彼は一枚のコピー用紙を取り出して私にサインを求めた。
『私は告白代行部へ入部する事をここに記します。この部で起こったあらゆる事柄を部員全員で共有し、秘密事項としてそれを厳守します。厳守出来なかった場合は如何なる罰も受ける事をここに承諾します。』
コピー用紙にはそう書かれていた。如何なる罰って言うのが気がかりだけど…サインするしかない。女に二言はないのだから。
緊張しながら、渡されたペンで自分の名前を書いた。すると和泉聡介は朱肉とBOXティシュを私の前に出した。
「拇印もおねがいするよ」
うわー…本格的だぁ。おそろしいよぉ。それとそのニコニコ顔怖いからやめて!
私これからどうなっちゃうんだろう。
「これから僕の事は部長って呼んでね、星野ちゃん」
今度は歳相応な笑顔を見せる和泉聡介…改め部長。
うわぁ、急に人格変わったみたいになった。何この人こわいぃ。
この後部長は部活が終わった部員全員を急遽カラオケ屋に呼び出した。私の歓迎会をやるためである。
皆さんはとても良くしてくれて全員と連絡先を交換した。部長は本当に人が変わったかのようにはしゃいでいた。
どうなる事かと思ったけど、この人達とならうまくやっていけそうな気がした。そう願いたかった。
「さて、みんなグラス持ったかな?それでは改めて…」
部長がマイクに向かって言った。
その声に反応するように全員が飲み物を持って立ち上がった。
「じゃあ、いくよ。せーのっ!!」
『星野あかりさん、告白代行部へようこそっ!!』――――
――――
――
「勇也遅いねー」
私はベッドで横になりながらポテチップを食べている娘に言った。
「急に呼び出したんだしすぐには来れないと思うよ?」と言いながらポテチップが空になったアピールをしてくる彼女。
今は午後八時。私の部屋に勇也を呼び出したのだ。何故かって?そりゃ、今後の事を話し合うためだ。
今日のお昼休みに告白代行部の部室まで来た勇也は、結局部長の説明を受けただけだった。
その後すぐに五時限目の予鈴がなってしまって、解散になってしまったからだ。
そして、勇也から直接依頼を受けた私が補足説明と今後の方針について話をしておく事になった。
「あかりさー、立花君と友達なんでしょ?どんな子なの?」
食べる物が無くなって手持ちぶさたになった彼女は私のベッドでごろごろ転がっている。
「ちょっと美月、あんただらけ過ぎじゃない?仮にも今から男がここに来るんだからね?」
彼女の名前は七瀬美月―ななせみづき―。告白代行部の部員で家庭科部に所属している。
前髪はぱっつんで後ろ髪を二つ結びしている変わった髪型の女の子だ。肩にも掛かってないのに髪を結ぶ意味あるの?
学校では口数少ない彼女だが、ぷらいべーとではそうでもないらしい。内弁慶なのかな。
ポテチップが大好きで暇があれば口にしているのだとか。その小柄な体系のどこら辺に脂分が消えていくのか知りたい。是非に。
「いいのいいのー、遅れるってメールあったんでしょ?もう少し平気だもん」
相変わらず抱き枕をギューってしながらごろごろしてる。
語尾に「だもん」をつける癖があるみたい。そのキャラクターは少し翔太ちゃんと被るんだけどなぁ。
「それより美月、いつものノート持ってきたの?手ぶらで来たみたいだけど大丈夫?」
呆れ半分でベッド上を転がってる物体に問いかけた。
「だいじょうぶー、メモ帳持ってきてるもん」
そう言うと美月は自分のポッケからメモ帳を取り出した。
いつものノートとは、部長からのポイントを貰ったり告白代行する際の作戦会議に使うノートだ。
この娘は告白代行部で書記のような事をしており、会議内容や各部員の所持ポイントをそのノートに書き込んでいる。
部長からもらえるポイントとは、簡単に言えば部活内での地位に関わる物だ。
地位と言っても大層なものではなく○○係みたいなものかな。
「家に帰ったらノートにまとめるから良いんだもん」
寝転んだまま両手でピースサインを送ってくる美月。
もんもんもんもんとしつこい語尾だが許して上げて欲しい。彼女は彼女なりに自身のキャラクター作りで頑張っているのだから。
「それよりポテチップ取って~」とせがんで来た。
仕方なく新しい袋を渡す。この娘…本当に家庭科部なのかな?だらしなさ過ぎる。
信じられないと思うが彼女が告白代行部のお茶菓子を全て作っていて、和菓子や洋菓子などあらゆるお菓子作りをする。
紅茶葉の調合も彼女がしていて自宅ではハーブ栽培もしているようだ。
それだけ見れば素敵な女の子なのだが現実は…「あかり~、お茶ちょうだ~い。あれ、あの漫画どこ~?」である。
私の部屋が居心地よすぎるのか、学校が終われば何処でもそうなのか。いろいろ謎といえば謎な女の子。
「はいはい、まっててね~。下から持って来るよ。あと、漫画は本棚の下から二段目ね」
甘やかし過ぎかなぁ。出来の悪い娘を持った気分だよ。
私は部屋を出て、麦茶を取りに一階へ下りた。居間の電気を付けるとソファで妹が寝ていた。
「おーい、こんな所で寝ると風邪引くよー?」軽く揺すって起こす。
「ん…、ぅぅん」「ひかりー?お母さん達がいないからってこんな所で寝ないのー」今度は少し強く揺すった。
「ん、んー…、おねえ…ちゃん?」
妹が目を覚ました。もぉー、可愛いなぁこの子は。
妹の名前は星野ひかり。私の五個下で中学一年生だ。ちょっと甘えん坊である。
両親が共働きで家にいない事が多く、その度にひかりはテレビを付けながらソファで寝てしまう事が多い。
「もうすぐ勇也が来るから、だらしなくしてたら笑われるよ?」
ひかりは勇也が大好きである。ひかりがだらしない時は勇也の名前を出すのが一番効く。
大好きと言ってもお兄さん感覚だと思うんだけどね。
「ん…。え、えっと。勇也さん来るの?えっ…いい今から?もぉ、早く行ってよぉ」
そう言うとガバッと起きて洗面所へ走って行った。
身だしなみでも整えに行ったのかな?テレビつけっぱなしで。
「もう、しょうがないなぁ」微笑ましい妹を見送るとテレビを消してお茶の用意を始めた。麦茶を入れるだけなんだけどね。
勇也とひかりが始めて出会ったのは私が中一の時、ひかりがまだ小学校三年生の頃だ。
私が勇也と翔太ちゃんを初めて家に誘ったその時に、勇也がひかりと遊んでくれていた。
それがきっかけで勇也はひかりのお気に入りになったらしい。中学生になってもお気に入りのままとは…それはそれで一途って事かな。
そんな妹が微笑ましくて可愛くて仕方ない私である。ちょっと羨ましいと思わない事もないけど。
「おねえちゃーん!昨日買ってきてくれたワンピースどこー!?」
妹の声が響いた。私のお姫様がお呼びである。
「はいはーい、今出すから待っててねー」
二階に運ぼうとしていた麦茶を一度テーブルに置いた。
麦茶を持って部屋に戻った私は言った。
「何してるの?」
「見てわかんない~?髪整えてるの。外に立花君いるよ?」
美月が私の三面鏡とにらめっこしていた。
あちゃー。スマホ置きっぱなしだったから着信に気付かなかった。
窓のカーテンを開けてちらっと外を見ると、家の前に勇也が立っていた。
「あ、本当だ。私行ってくるね」
私は急いで部屋を出て階段を駆け下りた。美月も教えてくれたら良かったのに。
「ごめんねー、こんな時間に呼び出して」そう言いながら玄関を開けた。
ん…、あれ?
「勇也…、その子誰?」勇也の傍らには小学生くらいの女の子がいた。
「よう、あかり!こいつか?俺の妹だ。付いて来るってうるさくてな。大丈夫だったか?」
そう言って勇也は妹の頭をぽんぽんしている。勇也に妹がいたなんて初耳なんですけど。
「ま、まぁ大丈夫だと思う。とりあえずあがって」
とは言ってもどうしよう。ひかりと遊ばせておこうかなぁ。
一応学校外とはいえ妹達がいるのは問題だ。秘密厳守の話をするのだから。
「お邪魔します。こんな時間だけど、両親は平気なのか?」
勇也が心配そうに聞いてきた。
「今日は二人とも帰りが遅いって言ってたから、たぶん平気」
勇也に親指と人差し指で輪っかを作ってバッチグーした。
両親が遅くなる連絡をよこす時は、大抵が日をまたいでから帰ってくる。夫婦で同じ会社っていうのも大変そうだ。
「ほら、希?あいさつして」
勇也が妹に挨拶するように促した。希―のぞみ―ちゃんって言うんだぁ。可愛い。
希ちゃんは勇也の陰に隠れてる。こんな小さい子が夜に出歩いても良いのかなぁ。
「あ、ええと…。こ、こんばんわ。立花希です」
おぼつかない感じで希ちゃんはぺこっと頭を下げた。何この可愛い生物。
勇也と出会った頃のひかりを思い出すなぁ。歳はあの頃のひかりと同じくらいかな?
「よし、偉いぞ」と軽く希ちゃんの髪をわしゃわしゃする勇也。いつもとは違う見た事ない顔だ。
へぇ、良いお兄ちゃんしてるんだなぁ。ちょっと勇也の事見直したよ。
よし!私も良いお姉ちゃんしなきゃ。変な対抗心を燃やした。
「こんばんわぁ、希ちゃん。お兄ちゃんに付いて来て偉いねー。年はいくつなのかなぁ」
少し前かがみになってなるべく優しく言った。こう見えても小さい子は大好きなのだ。扱いも慣れている。
「あ、え、えと…。ゆうにぃ…」そう言うと希ちゃんは勇也の後ろに隠れてしまった。
何かまずい事言ったかなぁ。嫌われちゃった?助けを求めるように勇也を見上げた。
「あかり…、こいつ中一だぞ?ひかりちゃんと同じ学校だ」呆れ顔で言われた。
え、ひかりと同い年?十三歳?しかも同じ学校なの?ごめん希ちゃん、小三くらいかと思った。
「あ、そ…そうなんだ。可愛すぎててっきり…」
年齢を見極められなかった事が結構ショックだ。
私があたふたしていると勇也がふぉろーしてくれた。
「可愛いってさ。よかったな希。許してやれよ」
また髪をくしゃくしゃしている。この構図はとても微笑ましい。
「うん…、わかった」希ちゃんが勇也の言葉に頷いた。良い子だぁ。
「ありがと希ちゃん。さ、いこっか」
泣きそうな気持ちを抑えて二人を二階に案内した。
第三話を読んでいただきありがとうございます。
すこし反則かもしれませんが実は…第三話は実体験がところどころあります。
どこら辺なのかは秘密です。
それでは第四話をおたのしみに!