戦闘
気づくとそこは直径15〜20メートルほどの円形の足場があるだけで周りは真っ暗な空間だった。光源は見当たらないが、なぜか床の淵のほうも、隣にいた彼女も、自分の体もしっかり確認できる。
「ここは?」
場所を確認を確認しようと訊ねるが、彼女はさっき僕に渡されたスマホと色違いと思われるスマホを高速で操作していて答えない。仕方ないので歩いて淵まで行き下を確認しようとする。すると、
「いてっ!」
僕は思いがけず頭を打った。目の前に壁があるわけではなく、踏み外せば落ちそうなのに、そこには確かに壁の感触があった。不思議に思っているとさっき渡されたスマホが鳴った。見てみると、
ー進入禁止エリアですー
と、たった一言書かれていた。目の前の見えない壁のことだろうか?にしてもこれじゃゲームだ。そんなことを思うと、さらに文が上書きされた。
ー雪衣乃さんからメッセージとプレゼントが届いていますー
と書かれていた。さらに今すぐ開けますか、と続いていたので、ハイを押すとまずメッセージらしきものが出てきた。
“私の名前は下野雪衣乃。とりあえず武器とか色々送ったから使って!説明は後!”
と書かれていた。武器って今から戦いでも起こるのだろうか。僕はプレゼント欄があったので押してみた。すると入っていたのは、何やらよくわからないカタカナや漢字のなまえだった。スクロールして全てを確認しようとすると後ろから大きな声が聞こえる。
「陸也くん、後ろ!」
その声を聞いて振り返ると、目の前にまるで闇の実体化というのがふさわしい黒く得体の知れない生物がいた。状況を飲み込む間も無く、向こうが攻撃してきたので、回避行動に入る。なんとかかわしたものものの、回避の際に体制を崩してしまい、さっきの生物の後ろにいた同種と思われる生物に距離をじわりじわりと詰められる。
「何なんだよ!?」
もうかなり近距離にいる。しかし逃げようにも体勢が悪すぎる。相手は攻撃態勢に入ろうとしている。もうだめだ。死を覚悟した。
その時、一本のダガーがそいつに刺さった。
そいつは不吉な鳴き声をあげながら無数の小さな光となって消え、ダガーが床に落ちる。
「陸也くん、大丈夫?」
彼女、雪衣乃が近づいてきた。ダガーを投げたのは雪衣乃のようだ。
「あれなに!?」
「だから説明は後!早く武器を装備して!」
僕の質問に答えずに雪衣乃は言った。
「どうやって装備するの!?」
「さっき送ったやつあるでしょ?あれをなんでもいいから押せばいいよ!」
こんな会話をしている間にも雪衣乃は拾い上げたダガーと元々持っていた同じ種類のダガーでさっき最初に僕を襲ったやつを蹴散らす。僕は慌ててスマホをもう一度見て、たまたま目に入った『カオスソード』とかいう武器を選択、装備をしますか、と出たのを無視してハイを連打しまくる。
すると完了しました、と出たので連打をやめると右手に一本の剣が現れた。黒と白のコントラストを基調とするデザインだった。剣を持ったことを雪衣乃は確認すると、
「初めてで戸惑うかもしれないけど大丈夫、剣を信じて!剣が教えてくれる!」
そう言って敵集団に突っ込んでいく。ざっと15体ほどだ。敵の攻撃を鮮やかにかわしながら攻撃をしていく。敵の数はすぐに減っていったが残り5体になったところで淵に追い込まれてしまう。
「一か八か!『ウィングストーム』!!」
そう言い放つと雪衣乃はその場に大きな竜巻を作り出し、敵を巻き込んでいく。敵は次々に消えていく。
少しして竜巻が消えた。しかし一体消えていなかった。他のやつらとは似ているが少し大きく、この集団のボスのようだった。雪衣乃はなぜか動かなかった。
「硬直時間が…!」
彼女は技を使った反動で動けないのがすぐに分かった。危険を感じ僕は走り出した。
言われた通り剣を信じる。すると不思議とどうしたらいいのか分かる気がした。僕は剣を構える
「『閃光斬』!!」
一瞬だった。敵は光となって消えた。