第二話:鞘の無い殺意
視点が少しぶれた気がします。すいません。
それじゃあ、どうぞ!
電子機器の発達により電子化、人々は印紙による書籍から電子書籍へと移行していった。
電子化により、より簡単に、より多くの人は書籍を目に付ける機会が増え、さながらその影響からか書籍は世界中で大人気のカルチャーだ。
電子世界では、多くの創作家が、さまざまな書籍を発表し、世界を舞台に一攫千金を狙っているのだ。
そんな、運任せの世界にもいわゆる『必勝法』というものが存在する。
そう、それこそが___『異世界もの』である。
この電子と科学で構成された世界の住人にとって、剣と魔法から成る幻想世界に人々の心は躍るのだ。
世界中で愛されるそのジャンルは、国境をも超える勢いである。
そして今、ソウタとリサ属するこの高校は、丸ごと来てしまった。
_____異世界に。
今彼らがいるのは、食堂というには余りにも仰々しい『広間』で、天井なんかは映画でしか見たことないような高さを扮しており、ソウタは大人気映画『ハ○―・ポッ○―』シリーズの、生徒全員で集まる食堂を連想していた。
隣に座るリサに至っては、彼が見たことのないようなハイテンションである。
「そーちゃん!異世界だよ!?トリップだよ!?はあー、なにしようかな?!やっぱり魔法もいいけど、剣士もいいよね!?でも、やっぱりぃーーー、、、俺TUEEEでしょ!!!」
「お、おう。おれつえーぃ、、、」
「っえーーっい!!!!!」
ハイタッチをかましたところで、説明させてもらうと、彼女も『異世界もの』の大ファンである。
では、ソウマもそうなのかというと否だ。
彼は、電子書籍を好まず、長年集め続けた現物の本を読むことが大好きな『本収集家』である。
彼の祖父も生粋の『本収集家』であった。
家族を早くに亡くして、親戚をたらいまわしにされたソウマを引き取った祖父が彼に残してくれたものが『本』だった。
大好きだった人がくれたものをどうして嫌いに慣れよう。____と、彼が心に決めたのがきっかけである。
周りの生徒も、リサのようなハイテンションの方が大半を占めていた。
しかし、ソウマだけは違った。
「(こいつら、元の世界に何の未練もないのか?)」
そう考えた時、先程の兵団の先頭の女性が言っていたことを思い出す。
『もし、魔王を討伐したら、元の世界、元の時間に戻すことを約束しよう!!』
はっきり言おう。
そんな保証はどこにもないと。
もしもこの世界で死んだらどうなる?勝手に人を召喚するような奴らだ。それほど魔王にご執心に違いない。その上、その願いが成就された時、彼らが求めるものはただ一つ。
『名誉と金』だと。
そのとき一番邪魔になるのは俺らだという答えはおのずと分かった。
そうとわかったら、あまり彼らを頼りにするのは得策だと、彼はリサではなく自分を信じた。
とりあえずこの広間は『ハリポタの間』と名付けた。
え?なんでそんな名前なのかって?
気まぐれだ。
五分位だろうか。ハリポタの間での喧噪はより一層激しさを増していた。
なぜかというと____いないんだ。『先生たち』だけが。
どういうわけか単層されたのは俺ら生徒身分の奴らだけのようだった。
先生がいない高校生千人近くを、こんな未知の領域に放り込んだらそりゃこうなる。
そんな喧騒が一層激しくなった時。
ハリポタの間の四方の壁の一角にあるひときわ大きな扉が大きな音を立てて開かれた。
その扉の奥から出てきたのは、先ほどお世話になった兵団が現れた。
しかし、彼らを率いるは、先程の美人さんではなく、先頭には王冠をつけたおじいさんがにこにこ顔で引き連れていた。
うん。王だ。
俺がそう確信した瞬間先程までの喧噪が収まり、ハリポタの間を静寂が支配した。
静寂を打ち破ったのは王と思わしきお爺さんだった。
「選ばれし者どもよ!お前らには勇者としての才能があるといっても。まだまだ戦闘においては赤子同然よ!まずはわしらが責任を持ってお主ら一人前にする!そして、この国に使え、魔王を倒し真の勇者となるのだ!」
「「「「「「オオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」」
ソウマ一人を除いてハリポタの間が一丸となって湧いた。
次の瞬間、その歓喜はまた静寂に包まれる。
「しかあああし!!!」
王の怒声によって。
「勇者といっても、それぞれには差があることも必然よ!まずはお主らの強さを自らで知ることが重要じゃ!心の中で『ステータス』とつぶやくのじゃ!。」
隣にいたリサが、両手を組んで胸の前に置き目をつむったと思えば、彼女の前に質量のない白い板が浮かび上がった。
「なんじゃこりゃ!?」
隣にいた俺が一番驚いてしまった。
しかも、その板には文字が書いてある。
隣にいたリサは意外にも冷静にその板を読み解いている。
「んー、魔法使いなのかな?俺TUEEEがしづらいじゃないかぁ、、、、」
隣で、何やら絶望してる彼女を尻目に俺も心の中で念じてみる。
「(、、、ステータス。)」
瞳を開けた彼の前に現れたのはやはり、彼女と同じ白い板だった。
素直に書かれている文字を読み取ってみる。
日向 ソウマ:Lv1
職業:純血の異世界人
膂力:10
抗力:15
動力:10
魔力:0
技能スキル:無
固定スキル:無
なるほど。
職業を見る限り俺らが異世界人ということが分かる。
しかし、俺のステータス一つじゃ何も分からない。
「リサ。ちょっとリサのステータスを見せてくれ。」
「じゃあ、そーちゃんのもみせてね!」
「ああ、いいぞ。」
俺らは体を寄せ合い、お互いのステータスを見比べる。
月島 リサ:Lv1
職業:純血の異世界人
膂力:6
抗力:51
動力:10
魔力:100
技能スキル:無
固定スキル:無
俺と比べて、魔力と抗力が高すぎないか?
これが、『おれつええ』とかいう奴の恩恵なのか?
俺の疑問が頭の中を埋め尽くす中、
「まあ、、そーちゃんにはそーちゃんにしかできないことがあるよ!うん!」
なぜだかわからないが、リサに慰められてしまった。悔しい。
そんなことはさておき、俺の疑問は何一つ解決していない。
そんな折に。
王冠の爺さんのわきにたたずんでいたあの美人さんが口を開いた。
「君たちにはぱっとしないかもしれないので一応説明しておこう!まず君たちの名前のわきにあるレベルというのは、この世界に存在する命あるものをすべてを殺めることで得られる経験値により上昇する!レベル上昇の恩恵はさまざまだが、主に、ステータスの補正だ。」
ここまでは、RPGゲームをやったことがあるものなら大体分かるだろう。
「次に職業だが、君たちは、異世界から来たので『純血の異世界人』というのがあると思う。これは君たちしか持ちえない先天的な恩恵だ!その恩恵は、各ステータスの上昇地の強化だ!ちなみに言わせてもらうと、そのステータスの『10』がこの世界の平均的農夫のステータスだ。君達には恩恵があると思うので、何か一つのステータスが突出しているのが大多数だろう!」
あー。うん。リサとか魔力がレベル1なのに常人の10倍あるね。
俺なんか、抗力とかいうの常人の1.5倍だわー。まじっべーわ。
「そして、ステータスの説明だ。簡単に言うと、膂力とは力の強さだ!抗力とは、攻撃に対する防御力だ!動力とは、どれだけ速く動けるかということだ!最後に一番重要な魔力だ!これはすべての人間が体にためる見えない力に他ならない。これを用いて、魔法という対価交換が成り立つのだ!。技能と固定は、この世界で生きていけばおのずと分かる!。」
こいつめんどくさいだけだろ。とか思いつつ聞き捨てならない言葉を耳にした。
『魔力とは、すべて(・・・)の(・)人間が体にためる見えない力?』
俺魔力0なんすけど。
隣にいたリサが涙目で俺を見つめてきた。
「大丈夫、そーちゃんはあたしが守るから、、、」
「ありがと、、、っておい!マジ冗談にならんからやめろ!」
俺の胸には不安が募るだけだった。
「(でも、リサといられるならどんな地獄でも生きられる気がしたよ)」
こんなことを考えている時点でフラグなわけで、兵団の方々がドでかい水晶を用いて何かを検査している。
リサと一緒に列に並んでいると、だんだん自分らの出番が近付いており、何をしているのかが、はっきり聞こえた。
「えー、じゃあ最後に魔法属性の適正図るから!列になってくださーい!!」
フルフェイスの鎧の兵士たちが大声で並ぶ人たちをまくし立てていいる。
前の奴らの挙動を注目していると、生徒たちが手をかざした水晶がさまざまな色に変化していた。
机に座る兵士が練れた手つき、水晶の色と生徒の名前を紙に記入していた。
紙には、『火、水、地、風、光、闇、白、黒』と書かれてある。
おそらくあれが属性の適正とかいう奴なのだろう。
心なしか、周りの奴らがそわそわしている。
たぶんあれだ。もしかしたら、異世界の俺なら何か『特別な力』が隠されているとか考えてるんだろう。
しばらく待つと、俺の前に並ぶリサの出番が来た。
「はい、こちらの水晶に両手をかざしてください。」
「はい!」
「手に意識を集中して、深呼吸してください。」
「すぅー、はぁー」
すると、透明な無色な水晶が、真っ白に濁ってしまった。
「ほう。適性は、光と白魔法ですねー。回復職の天声をお持ちのようですね。」
すると、兵団の間から感嘆の声が漏れる。
どうやら、リサは『特別な力』に恵まれているようだ。
彼女のつきたてられた親指とドヤ顔が胸に痛い。
「(、はぁ=、最悪だ。)」
しかし、俺の後ろにもまだまだそわそわしたお馬鹿さんたちが並んでいるわけで。
「どうしました?両手を水晶にかざしてください。」
俺は恐る恐る、両手を水晶にかざす。
何も起こらないと思った水晶の色は変わった_____真っ黒に。
「えー、、、」
何やら、兵士から苦い言葉が漏れる。
いやな予感しかしない。
「あの、これはどんな属勢なのでしょうかー、、、、?」
「これはですねー、えーと、、、、、『ち属性』です。」
「『地属性』ですか!いいじゃないですか!防御力とか高そうじゃないですか!」
なんだ、魔力がないのはステータスの異変だったのか。ふぅ、あぶねえあぶねえ。
しかし、この兵士固まったまま動かない。
「いえ、あの『地属性』ではなく、えーと、『血液』のほうの『血』です。」
「つ、つまり『血属性』だと、、、?」
「っ、っそうです!。」
なんだ『血属性』って、その紙にも載ってないじゃないか。これが『おれつええ』なのか?
「『血属性』とは、、どういう属性なのですか?。」
恐る恐る口を開く。
「えーと、長くなるんですがいいですかね?」
「ハイお願いします。」
彼の話をまとめるとこうだ。
人間みんなに魔力がやどったのはつい百年前のことで、その前には魔力を持たない人間と、魔力を持つ人間の間で、激しい差別があったそうだ。その差別を無くすべく、持たない人間が持つ人間に戦争を仕掛けたのがつい百五十年前のこと。
しかし、持たない人間が勝てる道理もなく、苦戦を強いられていたのが現実だった。
そんなときに持たない人間が編み出したのが『血属性』らしい。
『血属性』の魔法は、さまざまな属性を使えるという優れた点を持っていた。
しかし、そんな美味しい話はなかったのが道理で、彼らは魔力の代わりに血液を代償としていたのだ。
当然、そんな欠陥付きで勝てるはずもなく、持たないものは淘汰されたのがこの世界に魔力の平等をもたらしたのだ。
まあ、つまりあれだ、俺は持たない人間なのが周知の事実になってしまったのだ。
周りにいた俺のクラスの連中はくすくす笑っていた。
「(しかし、まいったな。)」
すぐにでもここからリサと脱出しようと考えていた彼にとって、この事実は逆に都合がよかった。
だが、彼が悩む点が一つ。
それは、リサの存在だ。
先程の反応を見ればわかるが、どうやらリサはこの世界でも重宝される存在だ。俺みたいな持たざる者が、リサとここを脱出すれば、彼らは絶対に追跡者を出すに違いない。
俺だけじゃなくリサにも手が回ることだけは避けたいものだ。
俺だけだったら、誰にも怪しまれない。いや、逆に歓迎されるに違いない。
だが、、、
考えことをしながら、列の間を抜けて後ろに行こうとした時、眼の前に立ちはばかる影四つ。
「よう、おちこぼれのそーちゃぁん?」
コウジ率いる天敵四人組だ。
こんな状況でも俺への配慮を忘れないあたり。いじめのプロとでも言うべきなのか。
「何の用だ、、、」
「いやあ、これから始まる異世界生活の挨拶に来ただけだよぉ。」
寒気がする。この余裕の表情からして、こいつらかなりの才能がると伺える。
「それに、、、仲良くしなくっちゃ!な!爺さん!」
彼ら四人が間を開けると、先程の王冠の爺さんがにこにこ顔で近づいてくる。
「ふぉふぉふぉ。おや、お主がソウマ殿か。なあに、気に掛けることはない。そういう世界じゃからな。それにここにいるこの四人。検査の時点で勇者の血を色濃く受け継いでいることがわかったわ。」
「そーそー、君みたいな弱い奴は、死んじゃうかもねー?運の悪い事故で。」
気味の悪いしたり顔を浮かべたチビの間ことが俺に狂気をぶつけてくる。
俺は悟る。
こいつらは、この世界で俺を殺すつもりなのだと。
こんな王政の世界で、一人の死などどうでもいいことに違いない。
怖い怖い怖い怖い____
殺されることが怖いのではない。いじめられるのが怖いのではない。
俺が死んだあとに残るリサが奴らに何かされたらと思うと、怖くてたまらない。
あんな奴と、リサが二人並ぶ光景が頭に焼きつく。
「(絶対、死なない!)」
まだ、この世に絶望はしそうにない。
俺は、一瞬の思考を捨て、眼の前の王さまと笑顔で握手を交わした。
俺ら生徒は、とてつもない大きさを誇る別の兵舎と呼ばれるところに移り、四人部屋に分かれた。訓練は明日から始まるようなので各自寝るようにとのお通しだ。
端末も意味の成さないこの世界は、僕にとって過ごしやすい。
しかし、自分以外が友達の部屋は非常に過ごしづらく、俺は部屋を後にして夜の風に当たっていた。
電気による光が何一つない世界ノ夜は、まるで、夢の中のようで俺はしばらく外のベンチに座っていた。
「なにしてるのー?」
聞き覚えのある声が背後に聞こえた。
「眠れないんだ。」
「ふーん。あたしも!隣座るね。」
「嗚呼。いいよ。」
隣に座ったリサはしたり顔で俺を見つめている。
「ど、どうした?」
「いや、そーちゃんはかっくいいなぁーとおもって。」
「そ、そうか?」
なんかすごくはずかしい。
「うん。あ!あの鎧着た美人さんいたでしょ!」
「ああ、いた名そんな人。」
「さっきその人から、女子だけ魔法習ったんだー。」
「ほう。みたいな。」
「うん!そのためにならったんだよ!」
「じゃあ、いくよー?」
彼女は両手を胸の前に肘を伸ばして掲げると、両手の前に透明な小さな魔方陣が浮かび上がった。
「光!」
すると、魔方陣から蛍の光のような小さな光がいくつも飛び出した。
光は、リサの周りを飛び回っている。
夜の月明かりと、幻想的な光に照らされる彼女もまた、妖精のように見えた俺だった。
「すごくきれいだよねー、、、」
「ああ、そうだな、、、」
「まるで、ゆめみたいだよね。」
「ああ、もしかしたら俺は夢を見ているのかもしれないよ。」
「目を覚ましたら、またあの日の何でもない『俺』なのかもしれない、、、。」
「目を覚ましたら、またあの日の何でもない『俺』なのかもしれない、、、。」
月明かりのそーちゃんの涙には、涙があった。
それを聞いた私も何かが悲しくなって、気付いたらそーちゃんの手を握っていた。
「ぐすっ、、、そんなこと、いわないでよぉ、、、」
「、、、ゴメン。」
彼の顔は優しい頬笑みだった。
次第に二人の顔は近付きあい、月夜と、蛍火に照らされた二人の唇は深く重なり合った。
涙の味の余韻を舌に残して、、、、
彼の眼は、血走っていた。
林の中から彼が見据えるのは、ベンチに座る重なり合う二人の影。
「コロス、、、、、」
彼は、闇に消えていった_____
一応、伏線はっておきました!
簡単なものですが、勘弁してください。
感想、脱字報告してくれたしょーさん、コアコアさん、ラーズさん、きんちゃさん、あしたかさんありがとうございました!!
これからもよろしくお願いします!