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義弟と学院に行くことになった件。

ジョシュアが欠席。

義弟とレンデヤ学院に行くことになった。











叔母さんが出発する日に、いこうって言われた時は心中かと思って焦ったものだ。


あれ? 心中とかするのは別のキャラのはずなのに!


よくよく聞いてみれば、学院に行こうってことだったらしい。

ああ、なんだよかった学院ね、うんうん学院……


「学院⁉︎ レンデヤ学院⁉︎」


い、嫌だああああ!








叫んでみたものの、残念ながら、魔法が使える人が学院に行くというのは国法で決まったことらしい。……マジか。

ズーンと沈んだ私だが、いや、待てよと思う。


私別に主人公とかに転生したわけじゃないし、大丈夫じゃないか?

それに、ジョシュアがちゃんとヤンデレ化してないか確かめる義務があるよね。うん。

……本音言うと他のイケメンを見てみたい。




学院に入るため、私は絶賛勉強中なのだ。

……勉強中なのだけれど、


「……いーやーだー」


誰も見てないことをいいことに机に突っ伏する。

思った以上にメリアーゼという人は勉強してこなかったらしい。

勉強した記憶がまるで無い。

いや、使い道がなかったといえばそうなんだから仕方ないのだけど。


でも、その負担が今一気にかかってきてるものだから、辛いことこの上ない。

一ヶ月ちょっとで知識を入れなきゃいけないのだ。

学院は魔法使える貴族はみんな入れるから、入学テストは実技だけらしいけれど、マナーやらもそうだし、他のことも入学後には必要になるからやらなきゃ言えないとのことだった。


「ううー勉強したくないー」


辞典みたいな教科書をバンバン積み上げられた。幸いにも、メリアーゼは字が読めるし書けた。

……それすら無理なら、もはや絶望しかなかったよ……。


それでも多いものは多いし、分厚いものは分厚い。

なんだ『実践! 魔法理論』って!実践なのか理論なのかはっきりすべきだ。

こちとら知識はほぼ魔法ない世界のものなんだぞ!


本にぐちぐち言ってると、コツコツとドアがノックされた。

慌てて背筋を伸ばす。

誰だろう?


最近私に後ろからもたれてくるのがお気に入りな弟は、今寝込んでいる。

成長痛らしい。


ざまぁと思わないでもないが、背が伸びた状態でもたれてきたら私のダメージが増えるだけだ。


くそう、私の背が伸びなくなったらどうしてくれる。

19なんだからもう伸びないだろうとか言うな!希望は捨てない!


まあ、入学までの短期間であと10センチ以上伸びるわけだから、相当痛いだろう。

そんな状態のくせに、私の部屋にベッドを運び込もうとしていたらしい。


なんだ。弱ったところをいじめてほしいのか。……怖い。M怖い。

それは全力で阻止させてもらった。

なんでこんな時だけ鋭いんだ、とかボソボソ言っていたが、失礼な、私はいつだって鋭いぞ!


コツコツ、と再びノックされた。

あ、そうだ。いいと言わなきゃ入って来れないんだっけ。

弟は無断で入ってくるものだから忘れてた。


「どうぞ」

「……まずは誰だと聞くものだと思うが」


入ってきたのは父だった。珍しい。


今年で45になるのだったっけ。

シルヴァーグレイの髪にラピスラズリの瞳。した渋いおじさんである。シルバーじゃなく、シルヴァーなところがポイントだ。


絵師に「私の最高傑作の中年紳士」と言わしめただけあって、ジョシュアルートでチラリと出てきただけだったのに質問が殺到したという。


「お父様。どうかなさいましたか?」

「ああ、ちょっとな……」


どうしたのだろうか、表情が暗い。

一見無表情に見える父も、慣れればよく分かる。

ジョシュアには分からなかったようで二人の間には距離があったけど、最近は結構話したりしているみたいだ。


私はジョシュアとの和解の会話知ってるから、二人ともちょっと言葉が足らなかったのだと分かっている。

本編ではわたしが死んじゃったことで父には余裕がなかったけど、今はそんなことはないんだから、仲良くして欲しい。


と、そんなことを考えていたけれど、父はいっこうに話し出さない。


「お父様?」


問い掛ければ、困ったようにその瞳が揺れた。


「本当に行くのか? 学院に——王都に」

「……突然なんです?」


法律なら、そうするしかないだろうに。

それとも実は子離れできない親なのだろうか。


……ぷっ! このダンディな感じで親バカだったらすごく笑える。


にやけそうになる頬を堪えて、真面目な顔をした。


「行きますわ。外の世界(とイケメン)が見たいので」

「……そうか」


勿論かっこの中は聞こえないように言った。

どっちが主かって? 言うまでもないよね。


父はそれでも眉を寄せていたが、私の「イケメンイケメンイケメン」という瞳を見て、諦めたようだった。


「お前の決意は分かった」


なら良かったです。

あ、でもイケメンに会いたいというミーハーな考えまで分かられたら良くない。


まさか分かっちゃないよね? とじっと伺っていると、何を勘違いしたのか、


「……そうだ、お前たちの出立とジョシュアの成人の祝いを兼ねてパーティでも開こうか」


と言い出した。


「パ、パーティ?」

「そうだ。お前が15の時は成人のお披露目どころじゃなかったからな。社交の練習としてはいい場だろう」


この世界での成人は15歳らしいが、そんなこと知ったこっちゃない。

パーティを開いてもらうも何も、


「私、ダンスは出来ませんわよ?」

「ああ、だから先生をつけよう。なに、そのうち必要になることだ。うん、それがいい」


そうなれば早速手配せねば、と言って父は出て行こうとする。


ちょ、ちょっと待って欲しい。父には私の前に積み上げられたこの山のような課題が見えないのだろうか。

ダンスがいつか必要になるっていうなら、いつかやればいいだけの話でしょ⁉︎


困惑する私に、父はとどめの一言を残して行った。


「あと残り半分の教科書は、ここに持ってくるがいいな?」


残り、半分?

え、これの二倍になる?


沈黙を肯定と受け取ったらしい。


「では、そうしておこう」


と去って行った。






お父様……さっきの学院に行くっていうの、取り消しちゃダメですかね?







感想等、お待ちしております。

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