表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/84

義弟の好きな子を思い出す件。

更新が遅くなってすみません(ー ー;)


テンションが×××の前後でかなり違いますので、ご注意ください。

「初めまして」


とその少女は言った。

だけど、そのオレンジに近い髪と明るい茶の瞳は凄く見覚えがある。


「ニーナ・ウェグンです」


と言っても、見覚えがあるだけで……目の前の人物はゲームの時とはまるで違った。


まず、表情が違う。

ニーナはよく言えば無表情、悪く言えば“鉄仮面”みたいな感じじゃなかった。


次に髪型が違う。

上の方でツインテールにしていたはずなのに、今は寧ろ、クールな雰囲気のショートヘア。


って、多分挙げだしたら切りが無い。

それくらいに違う。


思わず、手招きでリリアちゃんを呼んだ。


「ちょ、ちょちょちょリリアちゃん!」

「うん? 何や?」


ニーナちゃんに曖昧に笑うと、背を向けてリリアちゃんに小声で囁く。


「あの子、本当にニーナ・ウェグンであってる!?」

「やから、本人がそう言っとるやん」

「でも、全っっっ然違うよ!?」


二人でチラッと後ろを振り返る。

クスリともせずに、こちらを見ていた。


「……せやね」

「でしょ!?

ゲームの時は、何て言うか元気系っていうか、ほら、きゃぴっ☆みたいな感じだったよ!」

「きゃぴっ☆って……」


古ない? と呆れた顔で見られた。


「ま、まぁだって私も前世の年齢足したら四十近いわけだし、古くもなるよ」

「ああ、そうやね。ウチも四十超すわ。

あーお互いもうアラフォーか」

「うん、早いよねー……じゃなくて!」


ツッコむと、リリアちゃんは楽しそうにノリツッコミやね、とか言ってきた。


「違う! こういう同窓会みたいなのを求めてるんじゃないの!」

「同窓会の経験有るん?」

「ないけど!」


イメージだけど!


「何であんなに別人なの? 転生者?」

「ちゃうって、だからバタフライ効果や。

身近に転生者がおったらしゅうて」

「へぇ」


ちなみに、とリリアちゃんは一層声を小さくして囁いた。


「好きなタイプはジル先生らしい」

「それは……」


なんと言うか。


「……終わってるね」

「終わっとるやろ」


そんな私達の後ろで、ニーナちゃんはコテンと首を傾げた。


「何か、とても失礼なことを言われている様な気がします」







仕切り直して、とリリアちゃんが荷物を移すように手を動かした。


「改めて、ニーナ・ウェグンちゃんや。で、ニーナちゃん、こちらが……」

「メリアーゼ・レオンハイト様ですね、存じております」

「ああ、そやったね」


当然、というように言われたので、思わず首を傾げる。

私、そんな有名人になった覚えはないんだけど……。


不思議な気持ちが顔に出ていたのだろう、リリアちゃんが笑って言う。


「あのな、これ、この子の魔法なんよ」

「魔法?」

「そ。ウチはステータス魔法って呼んどるけどな」

「正式名称としては、情報表示魔法ですが……私の侍女もステータス魔法と呼んでいましたね。皆さんがいらっしゃった世界の言葉ですか?」

「え」

「まぁ、せやね」


さ、さらっと異世界、みたいな話が出たのだけど……。

リリアちゃんの表情を伺うと、「ああ、大丈夫、この子全部知っとるから」と平然とした様子だった。


大丈夫……なのか?


「あの、それでリリアさん。

なぜ私とこの方を……?」

「ん? いや、仲良うなってもらえたら、ちゅうのもあるけどな、本当のところは顔合わせやな」

「顔合わせ?」


私が聞けば、リリアちゃんは、そうや、と頷いた。


「これからちょっと色々と、このニーナちゃんには協力してもらおう思っとんねん」

「へぇ……?」


学部祭のことだろうか?

少し不思議に思いながらも、ニーナちゃんに手を差し出す。


「えっと、その、よろしくね」

「いえ……こちらこそ」


表情はほとんど変わらなかったけど、微笑んだように見えた。

手がそのままスッと離れる。


「それにしても、ステータス魔法ってすごいね。何まで見れるの?」

「様々です。名前や年齢、得意な、あるいは適性のある魔法分野から始まり、果ては筋力値なども。

好みなども少しでしたら分かりますよ」

「そ、そうなんだ」


つまり、個人情報が丸見えなんだ、と思うと、少し笑いが引きつった。


「まぁ、ステータス魔法がなくとも、貴女のことは存じていたでしょうけどね」


と、ニーナちゃんは続けて言った。


「え、どうして?」

「……ご自身の著名さに自覚がないのですか?」



リリアちゃんが後ろでヒラヒラと手を降る。


「あー、あかんよこの子。自己評価が極端に低いんや」

「なるほど」

「別に、低くないと思うけど……?」


私が言うと、二人で顔を見合わせて、ハァとため息をつかれた。

ふ、二人してひどくないだろうか。


「ラヴェンダーの君、というのをご存知ですか?」


ニーナちゃんの質問にフルフルと首を振る。


「ラヴェンダー色の髪にスミレの瞳、肌はまるで白磁のような、細長い手足が美しい、と評判のお方のことです」

「へぇ、綺麗そうな人だね」

「貴女です」

「……へ?」

「今言ったのは、貴女について言われていることです」

「ちょ、ちょっと待って! だって私の髪なんか灰色みたいな紫だし、目だってそんな宝石みたいじゃないよ!? 肌も、ただ体弱くて外出れなかったから白いだけで……」


というか、更に思い出してみる。

ニーナちゃんが言った描写は、誰かが言っていたものによく似ているのだ。


それは、アリスちゃんと——ジョシュア、だ。


ジョシュアは、その人のことをなんだと言ってたっけ。


確か——


思い出して、私は顔が真っ赤になるのを感じた。


「ちょっと待って!」

「……待ってますよ?」


そうだ、好きな子、だ。




×××




メリアーゼが何か動転したように走って行ってしまったものだから、取り残された二人は思わず無言で向かい合った。


「あの」


と、先に口を開いたのはニーナの方だった。


「あの、貴女は、顔合わせと言いましたけれど……何の為の、顔合わせなのですか」

「何の為?」


何の為、何の為ねぇ、と呟きながら、リリアーヌはニヤリと顔を歪ませた。


「そんな、警戒せんでもええと思うんやけど? ウチはな、ただ、メリアーゼちゃんがええ子やってこと知ってもらいたかったんよね」

「は?」

「あんた()が遊びに巻き込みすぎひんようにな」

「……」


しばらく沈黙したニーナだが、それから、貴女は、と、リリアーヌに関わる者の多くが口にしてきた言葉を言った。


「貴女は、一体、どこまで知っているんです?」

「……さぁ?」


リリアーヌは笑うだけだ。ただ、一言付け足した。


最愛の人(ジル先生)にも、伝えといてぇな。メリアーゼちゃんを危険な目には合わせんといてって。それと——」

「?」


そこで、リリアーヌはニーナに背を向けた。

いかにステータス魔法などを持つニーナでも、目の前の人間の心が読めるわけではない。

だから、その時リリアーヌがどんな顔をしてその言葉を言ったのかは分からない。


「黙って見とき。きっとこれから、とびきり面白おもろいもんが見れるで」






そして、一人残されたニーナはポツリと呟く。


「すみません、リリアさん、メリアーゼさん。

手出ししないなどと約束はできません。

黙って見ていることなんて、できそうもないですよ」


そこでニーナは、誰にも、否、たった一人にしか見せたことのない、凶悪な笑みを浮かべた。


「私とジル先生は面白いことが、そして、事態を引っ掻き回すことが、大好きなのですから」



ニーナ「第三勢力、快楽主義者組……参戦です」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ