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義弟が余所余所しい件。

パーティは明日だ。


「ひまだー……」

「ゴロゴロしないでくださいよ」


ベッドでダラダラと過ごす私を、クレアがうんざりしたような目で見てきた。

うう……それが仮にも仕える相手に向けるものかー。


「暇ならあれですよ、ジョシュア様のとこでも行って来たらいかがですか」

「んー、なんか最近、ジョシュ余所余所しいのよ」

「なんです、その熟年夫婦の愚痴みたいなのは」

「……」


そんなこと言われても、事実そうなんだよね。


なにか言いたげに口を開いては、ふっと視線が逸れる。

私もなんだか声がかけづらくて、最近はなかなか話せてない。

本当は、パーティ前にまたダンスの練習に付き合って欲しかったんだけど……。


「ままならないよねぇ」

「……大丈夫ですか? 今めっちゃ老けてますよ」

「そう? ほっほっほっ」


わざとふざけて、ほっほっほっと笑っていると、顔をすごくしかめられた。


「じゃあ、折角ですから、貴族のお嬢様らしい暇つぶしでもしますか」

「お嬢様らしい?」


何だろう。

頭の中で、コロネ髪の少女が高笑いしている姿が浮かんだ。

こういうお嬢様がしそうなことは……。


「転校生いびりでもするの?」

「えっ、な、なんでそうなったんですか!?」


あら。違ったらしい。

えー、他何してるっけ、お嬢様。


いや、この場合、ヨーロッパ風じゃないかもしれない。

日本風にいけば、あれだよね。


「和歌か!」

「だからなんでそうなる!?

怖いですよ! その思考回路が怖いですよ!」

「えええ……」

「いや、不満げな顔されても困ります!

お嬢様の暇つぶしと言ったら——」


「お茶会、ティーパーティーですよ」








「ひっさしぶりやな〜! 元気にしとったか?」


快活に笑って入ってきたその少女に、クレアは少なからず驚いたみたいだった。


「うん。リリアちゃんも元気だった?」

「私? 元気っちゃあ元気や。

……あの王子の顔を見んくて済むんやったら、もっと元気になるんやけどな」

「あ、あはは……」


聞いたところによれば、ゲームみたいな標本系の兆候はあまり無いとのことだから、なんとか頑張って……としか言いようが無い。

そして、あまり無いの「あまり」って部分は気にしない方が身のためだと思う。切に。


「あれですの、クロ君流に言うと、アウェイですの……」


ブツブツとアリスちゃんが何かを呟いていた。


「だ、大丈夫? アリスちゃん」

「ええ。ただ、今回出席の方々は……えっと、よく知らないので……」

「ああ、そっか。でも、悪い子達じゃないから、みんなで仲良くできたらなって思うんだけど」


私がそう言えば、グッと思いつめたような顔でアリスちゃんは頷いた。


「善処いたしますわ」

「い、いや、無理はしなくていいからね?」


どうしたのだろうか、人見知りなんだろうか。


そんなこんなで、私、クレア、アリスちゃん、リリアちゃんの四人を集めて始まったお茶会なんだけど……どうしよう。


何ら会話が無い。


「……お砂糖をとっていただけます?」

「……どうぞ」

「……どうも」

「……あの、私もください」

「……あ、はい」

「……」

「……」


みんな、無言のままお茶を飲む。


あれ!? お茶会ってこんなもんだったっけ?

このままだと、砂糖回しただけで終わるんだけど!?


「え、えっと……みなさん、ドレスどんなのにしましたか……?」


聞けば、クレアが困ったように囁いて来る。

「……メリアーゼ様、それ聞いちゃいけないやつですよ。

あれです、慣習として、当日まで参加者同士は明かさないのが常です」

「あ、あれ、そうなの?」


や、ヤバイ。

話題を外してしまった。


キョロキョロと視線を彷徨わせていると、突然ぷっとリリアちゃんが吹き出した。


「え、え? 何?」

「いや、あんたもうホントおもろいわ!

何なん? ツッコミ待ちか! その子犬みたいなんは、ツッコミ待ちか!?」

「え、えええ?」


アリスちゃんまで肩を揺らしていた。

クレアはもはや声を上げてたし。


な、何があった?

というか私何かした?


「ふふっ!」

「あははは!」

「ははっ、はははっ!」


何でみんな笑い始めたのか分からなくて私がオロオロすればするほど笑い声が大きくなる。


これ、笑ってるっていうか笑われてるよね?

いやいや、まあ、雰囲気が解れたから結果オーライだ。

終わり良けれなんとやら、である。


「なになに、ドレスやったっけ?

私、言うてもええけど?」

「いや、いいよ。大丈夫」

「そお?」


確かに楽しみがなくなるのは良く無いと、うんうんと頷けば、それを見てまた皆がクスクスと笑った。


「それにしてもや、そこのお二方!」

「え? 私ですか?」

「私もですの?」

「その口調どうにかせぇや」


二人はよく分からないと言わんばかりに顔を合わせた。

口調って……敬語だよね?


「敬語の何がいけないんですか?」


クレアがそう聞けば、リリアちゃんはビシリとそれを指差した。


「キャラがかぶっとんねん、キャラが!」


瞬間、部屋の空気がしんとなる。

アリスちゃんが固まってるけど、大丈夫だろうか。


「そんなの気にして生きてないですし……」


クレアが反論するけれど、リリアちゃんも譲らない。


「気にせぇや!気にしんかったら、いつまでも脇役で!」

「貴女に言われたく無いですが……」

「うぐっ!」


ちょっとさっきからメタ発言が出てる気がするけど……まあ、こだわり始めたら負けだ。

何にって、そりゃあ——何だろう?


「じゃあはい! 今から敬語はなしや。

いいな?」

「なんでそっちが仕切ってるんですか」

「はい、敬語ー!」


不機嫌そうに眉をひそめたクレアだけど、またぷっと吹き出して笑いはじめた。

良かった。

この二人は案外、馬が合ううみたいだ。


まあ、立場的にも追いかけられて避けてるあたり似てるとも言えるし。


ただ問題は……。


「キャラが、かぶってる……やっぱり……。

いえ、でも人から言われると……」


落ち込みっぱなしのアリスちゃんだった。

そ、そんなに、傷ついたのかな?

ザ・女子会!でしたw


ジョシュアが悶々としている裏で、平和なメリアーゼです(ー ー;)


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