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義弟を奪われたくない件。

「貴方、一体どういうつもり?」


いや、私の方が聞きたいんですが。

今、絶賛取り囲まれております、私。

三人ほどの、いかにもお嬢様な方々に。


「あ、あの……」

「何?」


ちょっと聞こうとすれば、キッと睨まれた。

怖い! 女子怖い!


「わ、私何かしましたか……?」

「何かしたか、ですって?」

「す、すみません!」


思わず謝ってしまった。

そもそも、この人たち誰!?

それすら分からないのだけど……。


「その、何かお気に触ったのでしょうか?」

「本当に分からないの!?」


コクコクと頷けば、信じられないという顔をされた。

えー……。


「ジョシュア様のことよ!

いっつもベタベタして、姉として恥ずかしくないの!?」

「え?」


私がベタベタしてる?

いやまさか。


そりゃあお昼とか帰るのは一緒だけど。

でも、ご飯の時はアリスちゃんもいるし、部屋は一緒なんだから仕方なくないか?


そう言いたいところだけど、怖くてとても言えない。

そもそも、こうして言ってきている時点で伯爵以上の家の人だろうからなぁ……。


「それに、実技の時のあれは何なの?

ジョシュア様の頼みを断るなんて!」

「えええ……」


仲良くしてもつめたくしても駄目なのか。


というか、こういう囲まれたりっていうのはヒロインの仕事じゃないのかな、リリアーヌちゃん!

あ、でもリリアーヌちゃんもセシル王子のゴタゴタに巻き込まれてるらしいから、今度会ったらお互い大変だねぇと言い合おう。


「……って、ちゃんと聞いてるのかしら!」

「あ、すいません、聞いてませんでした!」

「何ですって!?」


リーダー格らしい人に怒鳴られて、思わず後ずされば、背中に壁が当たる。

……う、うわ、追い込まれてる。


「わたくしに部屋を譲れと、そう言ったのだけど」

「……はい?」


部屋を譲れって、つまり、私にあそこを出て行けってこと?


「それで、私はどこに行けば……」

「はぁ? 知らないわよ、そんなこと」


なんなんだ、この人は。

他人のことを考えてないというより、自分のことしか考えてない。


「そういうのは、ちゃんとジョシュアと話し合わないといけないので……」

「私が譲れって言ってるのよ? 譲りなさいよ!」

「そうよ、ソフィア様の言うことが聞けないというの!?」

「まあ、なんて強情な!」


取り巻きの人たちがまたそのソフィア様という人を盛り立てるものだから、私はいよいよどうするべきか分からなくなった。


怖いからと言って、こんな人とジョシュアが暮らすなんて絶対にいやだ。


キュッと胸元のペンダントを握る。


そういえば今朝、ジョシュアがこれに魔力をこめてくれた。

なんか、悪いもの除けのおまじないみたいなものだと言っていたけど、今はそれが無性に心強い。


なんだか、心の奥から何かが湧いて来るようだ。


ソフィア様と呼ばれた先輩は、喚くように続ける。


「少し見目が良いからって、調子に乗らないで!」


そんなつもりはない。

自分のことを見目が良いだなんて、思ったこともない。


「大体、ジョシュア様は貴方のものじゃないのよ!」


あなたのものでもない。

それにジョシュアは私の“もの”じゃないけど、私の“弟”だ。


石の中で、ジョシュアの力が脈を打っているような気がする。

それにつられるように、私の頭はぼうっとして——いや。


ひどく、透き通るように、冷えて行く。

怯えも困惑も、どこかでなくしてしまったかのように。


なんだろう。変な、感じだ。

私だけど、私じゃないみたいな——。


「何で、譲らなければならないのです?」


気がついたらそう言っていた。


「私たちがどのようにあろうと、それは家族の問題です。貴女様方からの干渉を受けるようなことではありません」

「なっ! あなた、急に何を言って……」

「そもそも、」


私は自分の口が笑みの形に歪むのが分かった。

普段の自分なら絶対にしないような、冷たい笑みの形。

けれど、気分は悪くなかった。

いや、むしろ——最高だった。


「ジョシュくんは、貴女様方のことなんてきっとなんとも思ってないでしょうね」


あれ、何で私、ジョシュアのこと、ジョシュくんだなんて……?


先輩たちは一瞬固まって、そして、一気に怒りで顔を赤くした。


「言わせておけば、あなた……!」

「くっ、これでも、くらいなさいな!」


その時、ようやく私はその人たちが攻撃科の人だったということを知った。

飛んでくる火球に向かって、ペンダントを握っていない方の手をかざす。


「“反射”」


それだけで魔法は跳ね返る。

先輩の顔をかすめて、わずかにその髪を焼いた。


「熱っ!」


ああ、なんて、たやすい。

防御のはずの魔法が、こうも簡単に人を傷つけかける。


私は笑みを浮かべたまま、先輩に寄っていった。

立場逆転。

先輩たちは今にも逃げ出しそうに後ずさる。


「先輩方に、後輩より忠告いたします。

ジョシュくんは可愛くて、愛しくて、何よりも大切な、私の弟なのです。

だから……私から取らないでくださいね?」


ガクガクと顔を縦に振るのを見て、私は笑みを深めた。







×××


『そうだな、一番は、メリアーゼだな』


『……誰それ?』


『あ、いや第一案でボツったんだけどさ、ジョシュアルートのライバル予定だった子だよ。

ジョシュアの義姉っていう』


『あれ、その人病気で死んだんじゃなかったっけ』


『だからボツになったんだってば。

ヤンデレキャラ攻略のライバルがヤンデレってどうなのって話でさ』


『へぇ』


『でも、俺はあの子がダントツだなぁ。

なんたって、一番執着が強くて、依存していて——』



『えげつない、からさ』

何ルートか考えていて、このルートを選ぶかは結構迷いましたが…選んでしまいましたw


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