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義弟にモヤモヤする件。

珍しくメリアーゼ視点でシリアス気味です。

義弟のこと、どう思ってるの?








ゆっくりと日が沈んでいくのを見て、部屋の明かりをつける。

この明かりも生活魔法をかけた魔法道具だ。

いやぁ、見れば見るほど魔法に満ちてるよね、この世界。


ベッドに座ってその魔力灯を見ていると、ノックの音が聞こえた。


「姉さん、今いい?」

「ジョシュア? いいけど……どうしたの?」

「……ちょっとね」

「ふうん。まあ、入ってよ」


ドアがゆっくりと開く。

少し複雑そうな顔をしたジョシュアが立っていた。


「何? どうかしたの?」

「……夜に尋ねてきた男を、こんな簡単に部屋に入れていいの?」

「今更?」


私は思わず笑った。


「まだ日が沈んだばっかりだし。

今までだって、もっと遅い時間でも軽く入ってきてたくせに」

「そうだけど」

「それに、来たのはジョシュアでしょ?」

「……そうだけど」


あはは、と声をあげれば、ジョシュアの顔に不機嫌さが滲むから、余計に私はおかしくなってしまう。

それに、と付け足した。


「ジョシュアじゃなきゃ入れないよ。だから……安心して?」


にこり、と笑うと、ジョシュアは一瞬硬直して、目線がそらされた。

不機嫌さは消えたけど、なんだかまた複雑そうだ。眉を寄せてる。


「信頼されてるのか、それとも意識されてないのか……」

「意識? よく分かんないけど、信頼はしてる」

「……」


あ、眉間のシワが深くなった。

せっかくのイケメンが台無しだ。

ジョシュアはどちらかと言えば爽やか顏だし、そんな表情は似合わない。


思わず駆け寄ってそのシワをギューと伸ばした。

めがまんまるになる。


「な、なっ、何!?」

「そんなに眉間にしわ寄せてると、取れなくなるよ?」


そんなに驚かなくてもいいのに。

心なしか、顔も赤い。

びっくりしたのが恥ずかしいのかな。

可愛いなぁ。


ニコニコと見ていると、ジョシュアは不機嫌そうな顔に戻ってしまった。


「……誰のせいなのさ」

「誰のせいって、え? 私のせいなの!?」


ジョシュアは何も言わなかったけど、それって肯定ってこと?

うわぁ、私、なんか変なことしたかなぁ。

心当たり……うーん。


ないな。


じゃあ、無言の否定だったってことだね。

良かった良かった。


「姉さん、絶対また間違った方向に思考が行ってる気がする……」

「失礼な! ちゃんと正当な方向に行ってるよ!」


疑わしげに見られた。

なんだもう、姉の尊厳とかないのか私には!

……ないのか。


なんだか悲しくなったきた。

そ、そりゃあジョシュアに勝てるようなものほとんどないけどさぁ。


——おっと、いけないいけない。

notネガティブ。


「それで、本当に何? 何かあった?」

「……いや、いいや。顔が見たかっただけ」

「あはは、何それ」


ほかの子に言ったら口説き文句だよ? とおどけて笑えば、ジョシュアは苛立ったように声を荒げた。


「他の子になんて言わないよ! 好きな人にしか言わない!」

「……え?」

「あ」


目に見えて分かるほどにジョシュアの顔が赤くなり、一気に青くなる。


「……今のは忘れて」

「……うん」


私は、笑ってたさっきまでの楽しい気持ちが急激に冷めて行くのを感じていた。


へぇ、好きな子にはそういうこと言うんだ。

ふぅん。


なんだろう、この感じ。

姉としての独占欲?

私って、すごいブラコンだったのか?


もやもやする。気持ち悪い。



「本当は——ひとつだけ聞きたいことがあったんだ」

「うん……何?」


自分でも感じるほどに声が冷えていた。

けれどジョシュアは真剣な顔をしてて、気づいていないようだった。


さらにモヤモヤが強くなった気がする。


「僕が……例えば、その、大罪人の息子でも、あるいは何処かの国の王子でも……。

僕のこと、嫌いになったりしない?」

「大罪人? 王子?」

「——ッ! た、例えばの話!」


答えは言うまでもなく決まっていた。

けれど、


「……嫌いになんてならないよ。家族だからね」


こんな冷たい言い方、するつもりじゃなかったのに。


ジョシュアはパッと顔を綻ばせて、それから私の顔を見ては顔を伏せた。

……そんなに、ひどい顔、してるかな。


モヤモヤがイガイガに変わる。


「それを聞くの、私で良かったの?」

「え?」


だから。違うのに。

こんなこと言いたいわけじゃないのに。


「好きな子がいるんでしょ? その子にも、聞いたら?」

「ね、姉さん、何を言って——」

「そうだジョシュア。言っておかなきゃいけないことがあった」

「——何?」


自分でも、何がしたいのか分からなくなる。

このタイミングは、きっと最悪だ。


「私、ジョシュア離れするって決めたから」

「え、どういう意味?」

「だから——ジョシュア、もう私についてこないでね」


ああ、やってしまった。

思わず顔を伏せる。

ジョシュアを悲しませてしまったかもしれない。

どうしよう。


そっと、表情を伺う。

……え?


「何、それ」


見えた顔は、怒気に満ちていた。

あ、あれ?


モヤモヤもイガイガも吹っ飛ぶ。

悲しむなんてもんじゃなくて、ジョシュア……すっごい、怒ってる?


「何で?」

「え、その、貴族の人脈を作らなきゃって……」

「そういうのは僕がやるから。

それで、何で僕が姉さんと離れなきゃいけないの?」


一種の覇気みたいなそれに圧倒されて、私はジリジリと後ずさる。


「だ、だって、ジョシュアといたら、私、他の友達とかできないし……」

「いいよ、作らなくて。僕がいるでしょ」

「そういうわけには……って、ひゃあ!」


足が何かにぶつかって、そのまま座り込む。

ベッドがあった。

ジョシュアのところに寄ってって、大分距離があったと思ったんだけど。


そのままぐっとベッドに押し付けられる。

なにこれ、まるで押し倒されてるみたい。


そう思った瞬間、また頭に血が上った。


なんなんだ。なんなんだ!

好きな子がいるんなら、姉にこんなことしないでよ!


「ジョシュアだって、好きな子と一緒にいればいいじゃん!」

「は? 何言って……」

「姉なんて、ほっといて、その子と仲良くすれば!?」


キッと睨みつけると、ジョシュアの表情が困惑を帯びた。

瞳の影に、一つの感情がよぎる。

え、なんでジョシュア……。


「さ、さっきから、なにを言ってるのさ、姉さん!? 僕が好きなのは——!」

「ジョシュア」


言葉を遮るつもりがなかったと言えば嘘になる。けれど、何より気になった。

ジョシュアの目の奥に、それは確かに存在した。


「何をそんなに、怖がってるの?」


あまりにも近くにある深緑の瞳が、揺れた。

そろそろお互いに気づけーっ!

とか言いたくなります。

書いているの私なのに。


さて、二人ともが揺れに揺れた今回のお話でした。

感想など、頂けると嬉しいです!

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