義弟のいぬ間に女子はこそこそ話す件。
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義姉が気づかないのは何故だ?
二人が戻って来る前からしばらく顔を真っ赤にしていたアリスちゃんだけど、やっと落ち着いたらしい。
顔を手で覆って「もう!」とか言い出した時はどうしようかと思った。
「大丈夫?」
「大丈夫、です。その、思い出し笑いみたいなものですから」
……それならそれで一体何を思い出したのか聞きたいところだけど。
「さて、メリアーゼ様。館の案内をいたしますわ」
「え? ジョシュアはいいの?」
「ええ、もうすでに館の地図をお渡ししたところ、覚えられたとのことでしたので」
そんなとこでもハイスペックな弟だった。
「では、まずメリアーゼ様に滞在していただくお部屋にご案内いたしましょうか?」
「うーん、部屋は最後でいいかな」
「了解しました。では、浴場や娯楽室、図書室などを回った後、お部屋ということで。
荷物は、既にそちらに運んでおりますわ」
「あ、ありがとう」
娯楽室とか図書室とか、やっぱりあるんだなぁ。
レオンハイトの家では、あんまり行けなかったし、ちょっと興味がある。
ちなみに、一階はエントランス、食堂と厨房あって、客室やさっき言った娯楽室や図書室がある。
浴場は最も景色がいいように、ということで三階になるそうだ。
一応この国は風呂文化で、風呂は常時魔法で温かい状態に保っているらしい。
どのお時間でもどうぞ、とのことだった。
あまりに、至れり尽くせりだから、なんだか前世での高いホテルを想像してしまう。
いや、実際はホテルよりもすごくて、城なんだけどさ。
「これで一通り、ご案内いたしましたでしょうか」
「うん、ありがとう……って、あれ? こっち案内してもらってないかも」
と、私は右の方を指差した。
「ああ、そちらは私とクロ君の遊び場だったところなのです」
「へぇ」
なんだか微笑ましいね、と言えば、そうですね、とアリスちゃんは頷いた。
「ふふっ、昔は私たちもやんちゃでしたわ」
「えっ、意外」
「そうですか?」
うんうん、と肯定する。
なんか昔から落ち着いてそうなのに。
「最初は遊びだったのですけど、お互いに罠を張り合ったものですから迷宮のようになってしまいまして。最終的に訓練場として使っておりましたわ。
もう、クロ君が感電する床なんてかけてきて、お返しで矢が飛ぶ仕掛けを作ったら怒っていましたわね。懐かしいですわ」
「……」
さっきの私の「微笑ましいね」に対する「そうですね」の部分がいっこうに見つからないんだが。
そもそも、訓練場って何。
「その頃の罠がまだ残っているので、この先は立ち入り禁止ですの。お気をつけてくださいませ」
「……冗談、でしょ?」
ふふっ、とアリスちゃんは微笑んだだけで何も言わなかった。
無言は肯定——だよね?
え? 違う?
「そろそろ、お部屋の方をお見せ致しましょうか。馬車旅でお疲れでしょうし」
「あ、うん」
別にそこまで疲れてないのだけど、なんとなくこの場を離れたくなった。
「お部屋で、ちょっとお話よろしいですか?」
「いいけど、何の話?」
アリスちゃんはイタズラっぽく微笑んだ。
「恋バナですわ」
「さて、メリアーゼ様。メリアーゼ様は、誰か好きな方はいらっしゃいますの?」
「えっ、いないよ」
「本当ですか?」
「も、もちろん!」
案内された部屋はすごく広くて、洗面所やらシャワー室まであった。
本当にホテルみたいだなぁと思う間もなく、大きなベッドに連れて行かれて、絶賛恋バナ中だ。
恋バナというより尋問されている気がするのは何でだろうか。
「そうですの……では、単刀直入にお聞きしますわ。ジョシュア様のこと、どう思われていらっしゃるのです?」
「ジョシュアのこと?」
思わず聞き返した。
何だろう、急に。
「別に、大好きだよ」
「っ! そうなんですの!?」
「うん、弟としてね。姉弟愛だよ!」
「……」
あれ、黙っちゃった?
いやなんか言ってる。よく聞き取れないけど。
「全く、あの女のせいですのよ。メリアーゼ様に姉弟愛だなんて逃げ道を与えて……!」
逃げ道? なんの話?
聞き返す間も無く、アリスちゃんは打ち払うように首を振った。
「もう、それはいいですわ。ここからは恋バナでもなく真剣な話ですの」
「……うん」
結局、何だったろうか恋バナ。
すぐ終わったんだけど。
「メリアーゼ様は、前世の記憶をお持ちなのですね」
「ぅえっ!?」
驚いて変な声が出る。
え、なんで知ってるの、アリスちゃんが。
前世の記憶って、そう簡単に出る発想じゃないと思うし、それに、私、なんかバレるような行動とったっけ!?
「な、なんで、そんなこと聞くの?」
「……まず否定なさらない時点で、それは肯定と同じですわ、メリアーゼ様」
「えっ! そうなの!?」
にっこりとそこでアリスちゃんが微笑む。
あ、なんかはめられた気がする。
「もう、認めてくださいますか?」
「うん……ねぇ、でもそれ、ジョシュアも知ってるの?」
アリスちゃんは、微妙に眉を寄せた。
「あるじ——いえ、ジョシュア様はご存知ないですわ」
「本当に?」
「ええ、本当ですわ。……けれど、本来ならジョシュア様は真っ先に気付くはずですし、気付くべきでした。
それができなかったのは、相手がメリアーゼ様だったから、でしょうね」
確かに、ジョシュアのことだから気づくとしたらアリスちゃんよりも先に気づきそうなのに。
私だからなんだというのだろう?
首を傾げれば、アリスちゃんは笑う。
「いえ、今それはいいですのよ。メリアーゼ様。
——全て、お話しくださいますね?」
笑顔の迫力がすごすぎて、頷くしかなかった。
はい、アリスちゃんに全部バレマシター!
ジョシュアはまだ知りません。
というか、感づいてはいるでしょうが、気づかないふりをしようにしているというか。
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