義姉と義弟がセレス家に滞在する件。2
キャラまとめ、もうしばらくお待ちください(^_^;)
今回はジョシュア視点です。
義姉萌えって、どういう意味だろう。
今、こいつは何て言った?
僕は目の前の男を睨みつける。
ビクッと肩が上がって視線が逸らされた。
「ヤンデレ怖いヤンデレ怖い」だとか聞こえるが、知ったことか。
「何で、ジョシュア・レオンハイトの姉が生きているんだ?」
確かに、そう聞こえた。
もしかして、こいつもあのリリアーヌとかいう女と同じように、僕のことも知っている?
だから、会わないようにしようとした?
一層、眉間にシワが寄ったのがわかる。
けれど料理が運ばれて来て、そいつは食べるのに集中するように顔を伏せてしまった。
ちっ、と心中で舌打ちする。
後で覚えてろよ。
最後のデザートを片付けて、まだ食べ終わっていないそいつを連れ出した。
ものすごく怯えている。
トラウマでも刺激されたのかってくらいだ。
やっぱり、なんか後ろ暗いことでもあるのか……?
とりあえず、人影のない方面へと移動する。
アリスにこの屋敷の構造は教えてもらってあるから、どちらに行けばいいのかは分かる。
「うぉお俺死ぬ……全身火炙りにされる」とか、そろそろうるさいんだが。
そこまではしないよ、そこまでは。
「さて、話を聞かせてくれ。何で連れて来られたかは、分かってるだろう?」
「殺すんすか? 殺されるんっすね、俺」
「いや、そんなことはしないから」
そう言えば、意外そうな顔で見られた。
何だ、僕がそんなに酷い人間に見えるのか。
考えてみれば、こいつ、最初から僕に怯えてんだよな。
なんでだ?
「ほんとに? ほんとーにしないっすか?」「ああ、しないよ。だから話してくれないか。……お前、姉さんの何を知ってる? なぜ、あんなことを言った?」
やっぱり聞こえてたんすか、と顔を青くする。
とぼける気はないらしい。
「今から言うことは、全部本当なんで、信じてくださいよ?」
「いいから早く話せ」
軽く睨めば、またビクリと跳ねた。
ビビりなのか?
「俺には、あるんすよ……前世の記憶が」
「前世?」
「し、信じてださい、本当なんすから! 前世で、この世界はゲーム……一種の空想の産物だったんす。
俺はそれをやったことがあって、だから、色々知ってるっす。そのゲームでは、ジョシュア・レオンハイトの姉は、死んでることになってたんすよ」
突然何を言い出したのか、と思うと同時に、どこか納得する自分がいた。
確かに、姉は本来なら死ぬはずの存在だったし、姉とあの女の会話……そして、あの女の言葉。
「知ってるんじゃなくて、覚えている」
ずっと引っかかっていた。
だが、もし、あいつもそのゲームとやらの記憶があるのだとしたら?
納得はできないが、辻褄はあう気がする。
この世界が空想のものだったなんてことは信じがたい。
ただ、その世界のものがこの世界を覗き見て、その一つの可能性を記した、とも考えられる。
どちらにせよ、今重要なのは、
「お前は僕の秘密も知ってるのか? 姉さんを、どうするつもりだ?」
「ひぃい! お、落ち着いてくださいっすよ!
俺はファーストのクロードルートしかしてないっすから、秘密なんて知らないっす!
それに、アリス姉の真・主君に害なすはずがないじゃないっすか!」
真・主君? なんだそれは。
僕が主君だから、姉のことか?
「……まあ何もしないならいい。あと、一つ言っておくぞ。姉さんに手を出すなよ」
睨みつければ、出さないっすよ! と手を振った。
「アリス姉が主君に選んだんすから、きっと綺麗な人なんだろうとは思うんすけど……」
そんな風に言って、そいつは頭をかいた。
なんだか、言葉に違和感がある。
きっと? 綺麗な人なんだろうと思う?
なんか、変じゃないか。
僕が問い詰めるような視線を向けると、顔をそらして呟くように言った。
「俺には、そういうの、分からないっすから」
「分からない?」
「綺麗とか美しいとか、そういうのが、理解できないんすよ。アリス姉とは、正反対っすね」
そうやって笑う姿は、痛々しくすらある。
僕が黙ってしまうと、慌てたように、でも、と叫んだ。
「でも、いいんす! 俺にはアリス姉がいるっすから、 アリス姉が分かってくれるから、大丈夫なんすよ」
「……そうか」
これを多分アリスは聞いているんだろうな。
一体、どんな気分だろうか。
想像すると、少しおもしろい。
時間をとって悪かったな、と言えば、いえ、と返された。
そのまま、姉とアリスがいるだろう部屋へと向かう。
クロードだったか。
案外、こいつとは仲良くなれるかもしれない。
「あの、俺も一つ聞いていいっすか?」
一転して、クロードの瞳はキラキラしていた。
少し驚く。
いやでも、アリスの弟らしいといえば、らしいか。
「なんだ?」
「あ、あの、ジョシュアさんって実はあれっすか? シスコンっすか?」
「シスコン?」
「あ、シスコンじゃ通じないっすか」
言われて頷く。
「えっと、姉のこと大好きな人のことなんすけど」
「ああ、それなら僕はそのシスコンってやつだな」
「やっぱりっすか!」
……よく分からんが、何でこいついきなりこんなに楽しそうなんだ?
「姉といっても、姉さんは義姉だから、正確にそれに当てはまるのかは分からんが」
「義姉! 義姉萌えすか! 更にいいじゃないっすか!」
「義姉萌えって何……」
「ジョシュアさん!」
ニッと笑われて、一瞬言葉に詰まる。
それくらい、無邪気な笑みだった。
「俺、何が出来るか分かんないすけど、あなたの恋を応援するっすよ!」
こいつ、アリスよりも人の懐に入るのがうまいんじゃないだろうか。
そんなことを考えていると、クロードの瞳に一昏い色がちらつく。
「だからジョシュアさん、アリス姉に変な虫がつかないようにしてくれませんか。そこらへんのやつに、アリス姉を渡す気はないんです。話させないで触らせないで近づかせないで、くれませんか」
とそこまで一気に言ったあとで、困惑したように瞳を揺らす。
クロードは口を開き兼ねていたが、しばらくして苦笑し手を出した。
「お願い、するっすね」
「ああ、分かった」
なるほど、こいつも僕の同類なわけだ。
僕は微笑んでその手を取る。
「お互い、前途多難だな。姉と弟なんて」
「いえいえ、そちらは義姉弟じゃないっすか! 血縁関係なかったら、セーフっすよセーフ!」
「それを言ったら、この前あいつ、結婚するならおまえがいいとか言ってたぞ。相思相愛じゃないか」
「え、それマジっすか!?」
ん? 姉さんがすごいびっくりした顔でこっちを見てるけど、何だろう?
ということでした。
いや〜、こうして見ると、ヤンデレ結構アレですよね。重症ですよね。
先輩ぐらいじゃないでしょうか、マトモっぽいの。
感想など、お待ちしております。




