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義姉と義弟がセレス家に滞在する件。1

お気に入りや感想、ありがとうございます!

割とコミカル?な感じです。

義弟とクロードが仲良すぎて怖い。








セレス男爵家は、緑溢れた丘の上にあった。

家というより、城って感じだ。

伯爵家であるうちよりはいくらか小さいものの、周りの景色と良くあってすごく綺麗。


私たちは、学校が終わって休みになるとそのままセレス家を訪ねることにした。

そういう内容の手紙を父に送ったら、できるだけ早めにこっちにも帰れと遠回しに、けれど何行にも渡って書かれた手紙が送られてきた。

寂しがり屋なお父様である。


馬車での長旅は二回目だけど、この国は道がちゃんと舗装されてるし、私は乗り物に乗るとすぐ寝てしまうからあんまり辛くはなかった。


馬車が止まる。

向かいに座っていたアリスちゃんが微笑んだ。


「……着きましたわ。こちらがセレスの家でございます。父も所用でおりませんし、なにぶん手狭ではございますけれど、ご容赦くださいませ」


どこが手狭なんだろう。そう思ったものの、お邪魔します、と馬車を降りた。

馬車の御者さんに荷物をまかせて、城の入り口の階段を上る。


そういえば、と私が言えば、アリスちゃんは振り返った。


「アリスちゃん、その……弟くんって、今いるの?」

「ええ、『いないってことにしてくれ』という書簡が届きましたので、恐らく」


……それって、言っちゃダメなんじゃないだろうか。

私の心を読んだように、


「メリアーゼ様たちに、私、嘘はつけませんから」


とにっこり笑う。

その言葉は嬉しいけど、ちょっとクロードに同情した。

こんなお姉さんをもつと大変そうだ。


城に入れば、エントランスが吹き抜けになっていた。

見上げれば、シャンデリアがある。

これぞ城!って感じで、ちょっと感動する。


「ようこそ、おいでくださいました」


そう頭を下げたのはメイドさんだった。

侍女、というよりメイドさんと思ったのは、その衣装のせいだろうか。

どことなく前世でのメイド喫茶のものを思い出した。


いきなり頭を下げられてちょっと驚いたけど、アリスちゃんの方が目を丸くしていた。

どうしたのだろう?


思わず、じっと見てしまう。

パールグレイの髪。そして、荷物を預かります、と上げた瞳は猫を連想される黄色みがかった金。

……なんか見覚えがあるような。


頭の中で、チラッと設定資料集の絵がちらつく。

まさか。


「もしかして、クロード・セレス?」


メイドはびっくりしたように目を見開いた。なんで、と口がその形に動く。


「なんで、分かったんすか?」


その声はもう、ちゃんと男のものだ。

……って、ん?あれ?

この人クロードなんだよね?

なんか、口調チャラくない?


珍しく、ジョシュアも驚いているみたいだ。

小さい声でぼつりと呟く。


「侍女の格好なんかして……変態か、こいつ」

「ちょ、ジョシュアそんなこと言わないの! ——女装が好きなんでしょ、多分」


私がフォローすれば、クロードはさらに慌てたようにぶんぶんと腕を振った。

あれ、違った?


「いやいや! 変態でも女装好きでもないっすよ! アリス姉、俺はいないって言ってくれなかったの!? 俺、頼んどいたよね!?」

「いえ、ちゃんと言いましたわ。『いないってことにしてくれ』って言っていたと」

「それじゃ意味ないじゃん!」


クロードは頭を抱えた。

……うん、本当に、こんな姉もつと大変そうだ。

天然なんだろうか、アリスちゃん。


ジョシュアとアリスちゃんがヒソヒソと、でも思い切り聞こえるくらいの声で話す。


「ずいぶんと変わった弟みたいだが、大丈夫なのか? そいつ」

「大丈夫ですわ、変わってるのは元からですので」

「それ、どうせならもっと小声で言ってくれないかな!? 聞こえてるよ!?」


クロードがそう叫んでクタッと膝を付いたところに、アリスちゃんがトドメを刺した。


「クロ君、それは何のポーズなのです?」

「……絶望のポーズ、かな」


もう放っておいてあげて!










結局、クロードが回復したのは夕食の時だった。

今度はきちんと男の服だったものだから、


「もう女装はいいのか」


とジョシュアに聞かれていた。

エグい。傷をえぐりにかかってないか、ジョシュア。


「いや、いないふりしようとしただけなんで、いいっすよ、もう……」


返事にも力がない。

思わず同情してしまった。


なんか、こう言う不憫な人っているよね。

でも、何でいないふりしようとしたんだろうか?


アリスちゃんは全員が席につくと、おもむろに姿勢を正した。


「遅くなりましたが、メリアーゼ様、ジョシュア様、紹介いたしますわ。クロード・セレス。私の弟でございます。ちょっとした変人ですの」


その紹介はどうなんだろうか。

あ、でももう本人反論する気力もないらしい。


「そして、クロ君。こちらの方々が、メリアーゼ様と、その弟君(おとうとぎみ)、ジョシュア様ですの」

「……弟?」


あ、反応した!

それからブツブツと何かを呟いているけれど、ほとんど聞き取れなかった。


でも、彼の向かいの席のジョシュアには聞こえたようだ。

すごい顔で見てるけど、あれ、何て言ったんだろう?


なんとなく聞き損ねて、前菜に手を付けた。

その後はマナーだのなんだので必死で、聞くことをすっかり忘れてしまっていた。









……ふぅ。

美味しかったけど、緊張してあんまり食べた気がしない。

最後のデザートが来るのを待ちながら、それにしても、と思う。


こんなキャラだったっけ、クロードって。


確かに、資料には特技が変装とか書いてあったような気はする。

でも、これであのヤンデレなのか?

全然、ヤンデレっぽくない。


いや、先輩もヤンデレっぽくない……というか、雑魚っぽかったけど。

それとはまた違う気がする。


うーん、と首を捻っていると、クレームブリュレがテーブルに置かれた。


あ、そういえば最近やっと名前についての法則をヒロインに教えてもらった。、

ゲームに登場した食べ物は日本と同じ名前なんだけど、それ以外は全く違う名前になっているらしい。

クレームブリュレはそのままだから、ゲームに登場したみたいだなぁ。


そんな風に考えながら食べていると、先に食べ終わったジョシュアが席を立った。

そして、


「おい、クロードと言ったな、おまえ、ちょっと来い」


そう言って睨みつける。不機嫌モードらしい。

まだ食べ終わってなかったようだけど、クロードは連行されていった。


……哀れだ。ご愁傷さまです。


「いいの、アリスちゃん。弟くん、連れてかれちゃったけど」

「大丈夫、ですわ……おそらく」


最後の言葉が怖い。









それから少しして、どんな無惨な姿で帰ってくるかと思われたクロードは、ジョシュアと談笑しながら戻ってきた。

えっ? どうなってんの!?


「血縁関係なかったら、セーフっすよセーフ!」

「それを言ったら、この前あいつ、結婚するならおまえがいいとか言ってたぞ。相思相愛じゃないか」

「え、それマジっすか!?」


なんて会話が聞こえてくるけど……理解不能だ。

まあ、二人が仲良くなった大体の理由は、皆様お分かりではないでしょうか(^_^;)


そして、アリスの毒舌が最近ひどい気がする(汗)


感想等いただければ嬉しいです。

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