義弟と先輩と先生によるヤンデレ包囲網な件。
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メリアーゼ視点です。
義弟が最強かもしれない。
ううー。学部が決まらないー。
自室の机に私はくたりと突っ伏した。
生活魔法とか、極めてどうするの?って感じだし、魔法言語学は適正なんて無くても出来るけど、ようは日本語の勉強だよね?って話だ。
だったら医療魔法か実践魔法の防御科だろうけど……うーん。
正直、自分で日本語で考えた方が早いんじゃないかな……。
まあ、いっか。今決めなくても。
そう思った私は、進路希望の紙をカバンにしまい直した。
——このときの私を、全力で殴りたい。
「じゃあ、まだ進路決まってない人は、放課後ジルド先生のところに行って面談だからねー」
クラスの担任のレナン先生が言った。
ん? 聞き間違い?
「先生、何で先生じゃなんですかー?」
クラスの誰かが聞いた。
よしっ、ナイス!
「んー? 先生、放課後に用事あるし、もうすぐ妊娠休暇を取るからでーす。その後任がジルド先生だから、もう任せちゃおうと思ってー」
「に、妊娠ですか? おめでとうございます!」
一気にクラスがお祝いムードになる……けど、ちょっと待て!
グッと頭に手を当てて、ようやく思い出す。
妊娠休暇で代わりに……。
ああ、確かにあったわ、そんなの。
あったけど!
こっちがゲームの世界としてじゃなく、現実として生きていこうとした瞬間にこれかよ!
私はジョシュアをさっと振り返る。
おめでたムードに加わりかねていたジョシュアは、なに? と首を傾げた。
「ジョシュア、放課後ついて来てくれない?」
「放課後って……面談に? 普通一人でいくものじゃないのか」
「お願いだから。一人じゃ怖くて」
ヤンデレが。
自分でもちょっとキモいと思いながら上目使いで見つめてみる。
お願い、と若干涙目になりながら言うと、ジョシュアはさっとすごい勢いで顔をそらした。
首捻りそうなぐらい。
え⁉︎ そんなに正視にたえなかった⁉︎
「……分かったから、そんな顔、他のやつはしないでよ?」
「うん……」
そうか、そこまでひどいのか。
面談に行く前に、だいぶ心が削られた。
ジルド・グレイスはいわゆる、「君には私だけいればいいんです」っていうヤンデレだ。
長めの黒髪と青の瞳がいかにも研究者っぽい。
監禁とかはしないんだけど、少しでも男の人と会話したり目を合わせたりすれば、その男を極限まで痛めつける。
「私の大切な人を誘惑するなんて、最低な男ですから、こんなものじゃ足らないでしょう?」
っていうのがキャラクター紹介のアオリだったっけ。
たちが悪いことに、彼は医療魔法使いなので、拷問のようなことをしては治し、また痛めつけを繰り返し、それをヒロインに見せ続けるという、精神崩壊ルート。
……絶対、一人じゃ行けないよね。
そう思って、ジョシュアを連れて行った私だけれど、その先生の部屋で私は信じられない人に会うことになる。
「ユリウス、先輩……?」
グロの申し子、なぜか一番分岐が多く、カニバも陵辱も強姦も(何でこのゲームが全年齢版だったのか分からない)あるという、私が最も会いたくなかったヤンデレ。
——なんでここにいるの⁉︎
「適性は……防御魔法と生活魔法、医療魔法ですか」
「は、はははいっ!」
「ふふふっ、そんなに怯えないでくださいな」
怯えますよ! ちょっと薄目で笑わないで!
怖い!
しかもユリウス先輩なぜか帰らないんだけど⁉︎ 帰って! 今すぐ帰れ!
「医療魔法に適性があるなら、私のところに来ませんか?」
「いえ、それは本当に結構です」
急いで首を振ると、残念ですね、とまた笑みを浮かべる。
ゲームの時から思ってたけど、この人の笑顔が無理です。
震えていた私を、ジョシュアがキュッと後ろ手で抱く。
「先生、姉は大人の人と触れ合う機会が少なかったんです。あまり、怯えさせないでください」
ジョシュア、助かった!
涙目で見上げれば、また顔をそらされた。
あ、ダメなんでしたねこの顔。ごめんなさいね。
「怯えさせるつもりはなかったのですけど、ねぇ。でも、進路を決めなければなりませんから。他の適正ですと、生活魔法か防御魔法ですよ。どちらにしますか?」
「ひっ!」
先生が少し顔を寄せてくるものだから、思わず変な声が出た。
ジョシュアの腕がなければ、椅子から転げ落ちていたかもというくらいに頭をひく。
「先生!」
「ふふふっ、すみませんね」
ジョシュアが怒鳴るが、先生はクスクスと笑うだけだった。
面白がってるよね、これ。
そこでジョシュアの腕に持たれていたのを思い出す。
「あ、ジョシュア、ごめん。ありがとうね」
「……いや、別に」
私がそう言うと、ジョシュアは少し照れたように顔を赤くする。
微笑みそうになって、はたと思い至った。
あれ? そういえば、ジョシュアもヤンデレ予備軍だったよね?
今の今まで忘れてたけど。
ってことは何か。私今、ヤンデレ包囲網の中にいる?
前に先生、横に先輩、後ろに義弟。
……ジョシュア連れてくるって、人選間違えたかも。
「で、どちらにしますか?」
「え? えっと、防御魔法で」
なんかもう我が身は我が身で守らねばって感じがしてきた。
「そうですか、ではそのように。——ユリウス君、君はどうしたのですか?」
「……訓練場が、燃えたようだったから。何があったのかと」
赤っぽい茶髪に血色の瞳。それがこっちの方を向いて私はビクンと跳ねた。
……んん? 訓練場って、まさか。
ジョシュアがやったやつのこと……?
ジョシュアを振り返れば、ユリウス先輩を睨みつけていた。
ちょ、危ないから! 目の前の人、危険人物だから!
「見て分かったぜ、後ろの男。お前がやったんだな?」
「……だったら、なんです?」
挑発しないでぇええ!
ふっ、とユリウス先輩は不敵に笑った。
「俺と勝負しろ!」
「お断りします」
笑みを返すジョシュア。
なんなんだ、この感じ。
そして、勝負しろって、なんだ。
少年マンガか。
「ふうん、やる気がでねぇって言うなら、いいぜ。その女!」
ビシッと指を刺された。
人に指差しちゃいけないんですよ小学校で習わなかったんですか。
そんなこと言えるはずもない。
なんだか、後ろのジョシュアから変な覇気みたいなのが出てる気がする。
怖くて振り返れないんだが。
「俺が勝ったらそれをもらう。お前も欲しいもの言ってみろよ。何でもやるぜ?」
いやいや、流石にそんな賭け受けないでしょ……
「……じゃあ、僕が勝ったら二度と姉さんの前に現れるな」
受けたし!
なんで受けたのさ⁉︎
ジョシュアは私の肩を抱いた。
何っ⁉︎
「姉さんに手を出したら、——殺すぞ」
人を勝手に、勝負の景品にするなぁ!
結果として、ジョシュアは三戦三勝だった。
……チェスだけど。
二人がいざ勝負! ってなったら先生が出て来て、
「君らが魔法で戦ったら、どれだけの被害が出ると思ってるんです? もっと平和理に戦いましょう?」
とチェスを出してきた。
……それにしても、先輩めちゃくちゃ弱かったなぁ……。
ジョシュアはもちろん強いんだけど、全部の駒とられるってある意味ないと思ってた。
あれですもんね、先輩、Bから始まりAで終わり、漢字ひらがなカタカナ二文字のお方ですもんね。
「お、覚えてろよ!」
捨て台詞すら弱そうなんですけど……あれ? 何で私この人怖かったんでしたっけ?
というわけで、先生と先輩が登場しました!
もっとヤンデレたキャラにしようと思ってたはずなのに、先輩のこの雑魚っぽさは何なんだ…。
とりあえず全員登場しましたので、近いうちにキャラのまとめを作ろうと思います。
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