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義姉と義弟が混乱する件。【後編】

前編に比べて内容が重めかもしれません。

とりあえず前後編が終了ー!


姉は、一体何者なんだろう。








アリスが映し出した映像に、目を見張った。


「……修羅場ですの?」


アリスがそんなことをつぶやいたような気がするが、僕はそんな場合じゃない。


『いやだ』


姉が、そう言った。僕を渡したくないと。


『……弟のことが、好きなの?』

『え、あ、あれ、私なんでこんなこと言ったんだ? ——その、顔は! 顔だけはイケメンだし、すごく好きなんだけど!』


思わず真っ赤になった顔を覆う。


「ね、姉さんが、僕のこと好きだって」

「主様ちゃんと聞こえてます? 顔だけって言われてますよ?」


浮かれきった僕に、アリスの声は全く耳に入らなかった。


『ッ、そもそも! ……そもそも、何でジョシュアなの? ジョシュアのことが——好き、とか?』

『いいえ? 好きな訳じゃないの。ただ、ジョシュアルートが一番安全そうだから、それに……』

『そう』


ルートってどういうことか、よく分からない。

けれど姉の呟いた声が安心したように聞こえたのは気のせいだろうか。きっと気のせいだろう。

姉はずっと強い口調で、続けたから。


『なら、ジョシュアは譲れないよ』


息が、詰まるほど。

嬉しくて、震える。


「……愛されてますのね」

「そう、聞こえるよな? 僕、愛されてるみたいに、聞こえるよな?」


思わずアリスの腕をつかむ。

驚きに目が揺れて、それから顔が悔しげに歪んだ。


「ええ、そうですわね——先ほどまでは無視でしたのに、こういうのは聞こえるのですか。

……全く、自分だけがメリアーゼ様に好かれてると思っているなら大間違いですのよ!」

「そうだよな、愛されてる、そう聞こえる」

「ちょっと、話を聞いていらっしゃいますか⁉︎」


僕は眼前に映された光景に意識を戻した。



×××


「なら、ジョシュアは譲れないよ」


そう言った私に、リリアーヌは目を細める。

なんだか心を読まれているような気分になった。


「だ、だって、好きでもないのに……」


そんな、譲るとか譲らないとか、良くないと思う。

そう言い切ろうと思ったけど、どんどん声が小さくなってしまった。


モジモジと見上げれば、ヒロインが吹き出した。

な、なんで笑われたんだ?


クックック、とヒロインはしばらく肩をゆらすと、無自覚なんやな、と小さく呟いた。


「ん、分かった。ジョシュアに手ェ出すようなことはせえへんよ。人のもん取るよな真似はしとうないし」

「ひ、人のものって……⁉︎」

「うん? そやろ、お姉さん(﹅﹅﹅﹅)。麗しきは姉弟愛、ってやっちゃな」


突然また関西弁になったことに驚くよりも、その内容を噛み締めていた。


姉弟愛……ああ、そうだよね。

ジョシュアは弟なんだし。

私は何であんなに慌てたんだろう?


リリアーヌはなんだかニヤニヤしている。

どうかしたのかな。


「あ、そういえばさっきの、それに……の後って何だったの?」

「ん? ああ、何でジョシュアやったかってこと?」


私はこくりと頷いた。


「そりゃあだって、ジョシュアしかおらんやろ? 王子に対抗できるのなんて。他のキャラやと、権力で潰されてまうわ」

「……それは、ジョシュアだって一緒でしょ? 伯爵子息っていう立場なんだし」

「うん?」

「え?」


なんだろう、話が通じてない気がする。

少し考えて、リリアーヌがポンと手を打った。


「セカンド、やってないやろ」

「セカンド? キミボクの?」


話は聞いたことある。

もうすぐ発売ってことで、買おうかなーどうしようかなーって考えてたし。

あ、でもその前に事故で私ぽっくりいったわけか。


「多分、その時もう私死んでたと思う」

「……サラッと重いな。まあ、ウチもセカンドやった後しばらくして死んだんやけど」

「え、享年何歳? 私19歳」

「うわぁ、めっちゃ若いやん。ウチは23やったで」

「そっちもかなり若いと思うよー」

「やな。二人とも早死にや……ってちゃうねん! こんな話してる場合ちゃうねん!」


ノリツッコミだ。生で観るの初めてかも。


「そのセカンドでな、ジョシュアの秘密が明らかになるんよ」

「秘密って……どんな?」

「それは言わんけども」

「えー」


生殺しってこういうことを言うのだろうか。

あれ、違うか?

不満そうな私に、ヒロインは苦笑する。


「前に試してみたことあるんやけどな、教えるのは無理っぽいんよ。だから、言わんのやなく言えんのやって」

「あれ、そうなの?」


よく分からないけど、リリアーヌがそう言うならそうなんだろう。


「ん。あと、セレス家のご令嬢と仲良うしとるみたいやけど、気ィつけや。

——もしかして、隠しキャラも知らんとか言わんよな?」

「隠しキャラなら知ってるよ。誰の好感度もたいしてあげないまま二年目に入ると、ってやつでしょ?」

「そうや。その名前、言えるか?」


私は黙って首を振る。

そこまでやりこまなかったからなぁ。

画集とかで軽く見ただけだし。

内容は、ショックが強かったから覚えてるけど。

確か、醜いものが好きで、それも自分の手で穢したり壊したりしたものしか愛せないとかなんとか……。


最終的に主人公を火の魔法で炙って大火傷させた後、「ほら、こんな風になった君を愛せるのはボクだけだよ?」とか言うんだよね。

グロとしては先輩といい勝負じゃないかな、あれ。


リリアーヌはひどく真面目な顔をして言った。


「じゃあ覚えとき。そいつの名前は、クロード・セレス。

……アリス・セレスの、弟や」




×××


「この女は、一体……」


何なんだ。

セカンドとか、死んだとか、隠しキャラだとか、何のことだ?

そいつとまともに話せている姉もまた、どこか遠い人のようだった。


……秘密。秘密と言ったな、あの女。


まさか、と思う。

あのこと(﹅﹅﹅﹅)を知っている?

——そんなはずはない、とすぐさまその考えを打ち消した。

あり得ない。知っているなんて、あり得ない。

知っている人間は、今やほぼ存在しないはずなのだから。


アリスもひどく混乱しているようで、目線が定まらない。


「主様、これは、どうなっているのです? なぜ私の名前と、弟の名前が出てくるのですか」

「……分からない」


ただ、一つ分かることは、


「あの女は、危険だ」


だけれど、だからこそ放置なんてできない。


「アリス、放課後だ。あの女に会いに行くぞ」

「……了解いたしましたわ、主様」








「こうしてお話しするのは初めてですね、ジョシュアさま、アリスさま」


その女は柔らかく微笑んだ。

……白々しい。姉と話していた時の姿が本当なのだろう。

敬語も表情も嘘くさすぎる。


「単刀直入に聞く。お前は、何者だ?」

「何者、とは?」


とぼけたような顔をして見せるものだから、思わずキッと睨み付ける。


「ふふ、ちょっとふざけただけじゃありませんか。あの屋上での会話を聞いていたなら、少しは分かりそうなものですけど」

「な、なぜ、そのことを……」


こんなに動揺したアリスは初めて見る。


「そのことって、あなた方の盗聴……いえ、盗撮のですか? あれはすごいですね。

空間魔法の応用でしょう? ただ、そのせいか少し魔法の気配が漏れてましたよ。幸い、彼女は気づかなかったようですけど」


見抜いている、アリスの魔法を。

アリスはもはや何も言えないようだった。


「なんなんだ、お前。なんで、」

「『僕の秘密も知っている?』ですかね。正確に言えば、知ってるじゃなくて覚えているなんですが」

「何を、言ってるんだ?」


女はそのままニコリと笑みを深くしたが、僕は思わずそれに後ずさった。


「そんなビビらないでくださいよ。あなたの出生の秘密(﹅﹅﹅﹅﹅)、私は守りますよ?」


ある意味、予測していた言葉だった。

やっぱり、こいつは僕の秘密を知っている。

得体が、しれない。


何かを言おうと、口を開いた時、


「なぁ」


場違いな声が響いた。


「ジョシュアくん? 俺のリリアをいじめんといてぇな」

「セシル⁉︎ お前、いつからここに⁉︎」


突然現れたセシルに驚いたのは僕だけじゃなかったようだ。

先ほどまであんな不敵に笑みを浮かべていた女が、すごい勢いで焦り始める。


「だ、誰があんたのや⁉︎ ああ、来るな寄るな去れッ!」


同一人物と思えないほどの拒絶ぶりだった。

セシルは、冷たいなぁとかほざいているが、嫌われていると分からないのだろうか。


セシルはその顔をまた笑みにほころばせて、なんでもないことのように言い放った。


「何話しとんのか知らんけど、 いいんか?

メリアーゼ嬢が危ないで?」


は?

感想や誤字などの報告もいただければ嬉しいです!


今回、三人目のヤンデレが明らかになりました!

隠しキャラの方が早く分かってしまったという…。

あれれ?

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