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義姉のワガママが下手すぎる件。

ジョシュア視点です。

ワガママというのを根本的に勘違いしてそうな義姉。

僕におかしな義姉ができた。





初めて会った時、僕の名前を聞くなり気を失った姉は、僕にワガママばかり——と言いたいところなんだけど、そんなことはなかったりする。



魔力の量が多いからと、貴族の、それもかなり上層階級の家に引き取られた僕の立場は、はっきり言ってかなり危うい。

実際、義姉の叔母にあたる人に僕は嫌われているようだ。

まあ、元々孤児だし仕方ないと思っていたのだけど、殴られたり罵られたりしていないのは何でなんだろう? いや、別にされたいわけじゃないけど、不思議でならない。


しかも、使用人の人たちはむしろ僕に優しいくらいだ。

大抵が同情。お嬢様のワガママっぷりに振り回されてるっていう。

僕以外にはワガママを言ったりはしないから、大変だねぇとみんな言うけど、実は全然そんなことはない。


と、ここで最初に話が戻る。

ともかくこのワガママなお嬢様——つまり僕の義姉は、どうにもワガママが下手なのである。









「お菓子が食べたい」


これが僕が最も印象にのこっている“ワガママ”だ。


「えっと、じゃあなにか持ってくるね」

「違う、ジョシュアが作って。チョコレートのお菓子よ」


何故か義姉の目はいいことを思いついたとばかりにキラキラしていた。

まあ、お菓子を作ったりするのは孤児院で慣れてる。バザーでクッキーやらを売ったりしてたし、べつに苦じゃないけど。


さすがに貴族の人にクッキーじゃいけないかなと思って、ガトーショコラを作った。

そして、食べた義姉の第一声。


「美味しくないわ」


ああ、やっぱり貴族の口にはあわないか。

チョコレートをたっぷり使うこのお菓子は、孤児院では滅多に食べれないご馳走だったのだけど。


僕が少しがっくりと肩を落とすと、途端に義姉が慌て出した。

目線が少し物欲しげにガトーショコラに向いているように見えるのは気のせいだろうか。


「美味しくないっていうか、ほら、今私お腹いっぱいだから? その空腹は最高のスパイスっていうのの逆みたいな感じで、ね?」


ね? と聞かれても困るし、なんでこの人僕に言い訳してるんだろう。

なんとなく頷いてみると、ホッとした顔になる。

——本当に何なんだ?


その間も視線は時々ガトーショコラにいく。

そっと動かしてみれば、視線も一緒に動く。

ちょっと面白い。

気になるのだろうか? それとも目障り?


「……これ持って帰ろうか」

「えっ」


僕が言うと、義姉は驚きに目を見開いた。

すみれ色の大きな瞳がまん丸になる。


食べたいってことなの?

何がしたいんだろう、この人。


「やっぱりこれは義姉様にあげたものだからここに置いておくね」

「やった……じゃなくて、うん、そういうものよね。普通はそうよね」


うんうん、と頷きながら義姉は言う。

思わず吹き出しそうになって、慌てて顔を引き締めたら、変に不機嫌な面になってしまった気がする。

姉はそんな僕の顔をどこか満足そうに、けれど心苦しそうに見ていた。


……やっぱり全然わからない。




他にも、本を片付けてきてだとか、水を汲んできてだとか、頼まれはするのだけど……これってワガママなのか?

孤児院にいた年少の子が、僕の親指の長さほどに分厚い本を読んでくれと言った時の方が、よっぽどワガママらしいと思う。




……甘えたい年頃なのかな。

義姉の方が年上であるにもかかわらず、僕はそんなことを思った。










これは余談だけど、その夜に皿を取りに行こうと義姉の部屋に行ったら、ベットの中で平伏してもぞもぞ動いていた。

……なんかの儀式だろうか。怖い。

思わず皿を取らずに引き返した。

Q.お義姉さんはどんな人?

ジョシュア「よく分からん」

な現状。


次もおそらくジョシュア視点です。



感想等、お待ちしています。

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