義弟がチートな件。
やってきました学院編!
作品のお気に入り3500件に逆お気に入り150人!
嬉しいですありがとうございます!
ちょっと場面が転々とするので読みづらいかもしれません。ご注意ください。
義弟と王都にやって来た。
「うっわああああ!」
「え、何⁉︎」
突然声をあげた私にジョシュアは驚いたようだけど、そんなこと気にしない。
「ジョシュア、ほら見てよ、王都だよ!」
「う、うん。王都だね?」
なんでジョシュアはこんなにテンション低いんだろう。
うわ! あそこ、街のグラフィックと同じとこじゃない⁉︎
あそこで確かイベントがあったんだよね。
ジョシュアが苦笑を浮かべる。
「姉さん、はしゃぎすぎたよ」
「これがはしゃがずにいられると……ってうん?」
「何、姉さん」
「いや、別に」
呼び方が姉様から姉さんになっている……。
流石に人前で姉様と呼ぶのが恥ずかしいお年頃になっちゃったのだろうか。
うーん、こうしてそのうち姉離れしてっちゃうのかと思うと、寂しいなぁ。
その後も奇声を上げまくっていた私だけど、学院の門をくぐる時が最高潮だった。
「すごい! ゲームの映像と一緒! やっぱりここの中庭、綺麗なんだよね! 早く見たいなぁ」
「げーむ? 何?」
「ひみつー! ああ、イケメン100人会えるかなーなんて!」
ジョシュアはちょっと顔を険しくした。
「イケメンって、かっこいい人っていう意味なんだよね」
「そうだよ!」
「……会ってどうするの?」
どうするのって聞かれても。
目の保養? ああでも。
「ヤンデレじゃなかったら付き合ったりとかしたいなぁ。青春、みたいな。ああ、ヤンデレっていうのはジョシュアが知らなくていい単語だからね!」
私がニヤニヤしていると、
「……姉の恋愛に口出すのって弟としてありかな。ありだよね」
「うん?」
何かまたボソボソ言ってたけど、よく聞こえなかった。まあいいや。
学院には入学前に、一応試しの儀とか呼ばれる試験がある。
手のひらにおさまるくらいの魔法結晶に魔力を込めるだけ。
ある程度の反応があれば受かるし、ほぼ適性を見るためのものだ。
校門近くで馬車を降りると、私たちは入ってすぐのところでやっている試験の列に並んだ。
とうとう私の順番が来て、ちょっと緊張しながら魔法結晶を握る。
「おお⁉︎ なんという魔力の量! この学院設立以来、五本の指に入るかもしれませんな! 適性は……三つもあるではありませんか! 生活魔法と医療魔法、それに防御魔法! 素晴らしい!」
試験官の人、なんか褒めちぎってくれてるけどさ。
隣の声が聞こえてくる。
「なななななんと! こんな多い魔力! 見たこともありません! しかも全ての魔法に加え精霊魔法にも適性があるなど! 設立以来、最高の天才です!」
……うん、隣がこれじゃ喜ぶ気も失せるよね。
てかこの学院の人、設立以来って言葉が大好きなようだ。
ジョシュアは少し得意げにはにかんでいた。
くそうイケメンだ。
周りの人が頬を染めている。
まるで漫画かゲームみたいだ。ってゲームなんだった。
……っておいそこの男子。何でお前もほお染めてるんだ。
寮まで荷物を運ぼうとすると、持ちます、と言われた。
学院の人が寮の部屋まで運んでくれるらしい。なにこの至れり尽くせり。ホテルか。
ありがとうございます、と頭を下げれは怪訝な顔をされた。
あ、あれ? 日本人的犠牲は通じないのか?
寮に着いた私がまた興奮状態になったのは言うまでもない。
寮の部屋はジョシュアと同室で、え、男女同室? と思ったけど違かった。
貴族の寮というのを甘く見てた……。
一言で言うなら、部屋 in 部屋。
ちょっとしたシェアハウスのように、リビングやお風呂トイレ洗面所などの共同スペースと、それぞれのベッドやデスクがある個室が二つあっての、二人部屋。
もうどこから突っ込むべきだろうか。
同性のルームメイトと二段ベッドを想像していたのだけど。
まあ、気楽でいいか。貴族のしきたりとかよく分からないし、ルームメイトともめたりしたら嫌だし。
「姉さん、ちょっと出掛けない?」
「ん? いいね! 中庭の噴水見に行きたいんだ!」
個室から出てくるなりの外出の誘いに、私が嬉しそうに答えれば、ジョシュアは少し首を傾げた。
「……じゃあ今日は市街での買い物はやめて学院内の探索にする?」
「え?市街での買い物⁉︎」
そっか、その発想はなかった!
元々、機会がなかったけど、海外旅行とかずっとしたかったんだだよね。
あ、今や界外旅行か。
「買い物に行くよ! 中庭とか学院の中なんていつでも見れるでしょ!」
「でも気をつけてよ、町って結構危険なんだから」
「大丈夫だって!」
……そんなことを思ってた時期が私にもありました。
「……姉さん」
「はいすみません」
「僕、街は結構危険って、言ったよね?」
「言いましたすみません」
私は今ベンチで正座中である。
反省といえば正座なのだけど、あまりこの世界の人には馴染みがないようで、少しビックリされた。
「姉さん聞いてる?」
「ひゃい!」
聞いてませんでしたすみません。
ジョシュアは呆れたようにため息をついた。
「もう少し警戒心とか、持ってよ。ねえ、何回すられそうになったんだっけ?」
「……4回です」
そうなのだ、30分も歩かないうちに4回。
うん、これでも人混みには慣れてるつもりだったから、大丈夫だと思ったんだけどなぁ。
まさかスリとは。
世間知らずの元日本人はそんなにカモか!
と言いたくなるほどだ。
それとも明らかに田舎貴族っぽかった?
お上りさんって言うんだっけ?
そんな感じに見えたのだろうか。
うわ恥ずかしい。
自重しなきゃな。
「とりあえず、今日は戻ろう。もう、日が暮れるし」
「……はーい」
残念だ。大したものが買えてない。
そんな私の心を見抜いたように、ジョシュアは、
「また今度、一緒に来ようね」
と言った。爽やかスマイルと一緒にだ。
……やっぱり顔は好みなんだよなぁ。
「うん!」
こんな時、いい弟を持ったと思う。
寮にもどると、男女各々のオリエンテーションと言うことで、ジョシュアとはバラバラになった。
「女子はセーフか? いや、同性愛者とか……」って何言ってるんだろう?
人見知りなのか離れたがらない弟を男子のところに押し込んで、女子のグループに入る。
う、なんだこの空間。
どの子もクラスに一人いたらいいレベルの美少女だ。
一般生徒がモブじゃない。
というか、さっきからチラチラ見てくるのは何だろう。
あ、もうすでにジョシュアの姉ってことでチェックつけられてる? うわー。
意外にも、一番最初に声をかけてきてくれたのは、気の弱そうな女の子だった。
「あ、あの、ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう」
まさかごきげんよういう日が来るとは!
笑いを堪えて思わず震え声だったのは見逃して欲しい。
貴族ってごきげんようとか本当に言うんだね。
「わ、私は、アリス・セレスと申します。父はアンドリュー・セレス子爵ですわ。宜しければ、お友達になってくださいませんか」
アリスちゃんか。可愛い名前だし、ウサギのような雰囲気に良くあっている。
「ご丁寧に。私は……」
「わたくしは、エレナ・レイモンド。伯爵家の次女ですの」
「リキュリー・マイルスでございますわ。しがない男爵家のものですが」
「クリスティーネ・エリザベートです。エリザベート侯爵の娘です」
アリスちゃんの挨拶に答えようとしたら、唐突な名乗りラッシュ。
皆そんなにジョシュア落としたくて必死なのか。
そんなに一気に人の名前覚えられないんですが⁉︎
「あ、あの、私は……」
「「「どうかお友達になってくださいまし!」」」
「……はい」
女子怖い。重圧が凄い。
正直言うと逃げたいのだけど、それはまずいだろう。
「……私は、メリアーゼ・レオンハイト。ガイスト・レオンハイト伯爵は私の父ですわ」
名前を告げれば、皆一斉にポカンとした顔になった。
何? と思っていると、誰かがポツリと言う。
「ガイスト・レオンハイト伯爵って、あの“愛の騎士”のガイスト様?」
……。
お父様! あんた一体なにをやったんだ⁉︎
メリアーゼは自分がかなり美人さんだという自覚なし。
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