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義姉がやっぱり突飛な件。

お気に入り3000件突破です!

感想、評価も、いつもありがとうございます!

姉と僕のために、義父がパーティを開くらしい。








体中、特に足の関節が痛い。

成長痛ってこんなにひどいものなのか。

ベッドから起き上がれそうもない。


聞けば、急激に伸びる時はすごく痛むらしい。

痛み止めの薬や魔法を使ってもいいが、使うとかかえって伸びなくなってしまうこともあると言うから、僕は痛みに耐えていた。


姉に抱きついても、包み込むというよりしがみつくみたいになってしまうことが嫌なのだ。


それでも。


「……姉様ー」


姉に会えないのが何よりキツイ。

簡易のベッドでも運び込ませてもらおうと思ったら、どうやって気付いたのか姉に阻止された。

……そりゃあ、もう同室でもいい歳じゃないけど、体調の悪い時くらいいいじゃないかと思う。


ああ、なんか頭も痛くなってきた。

熱も出てるかもしれない。


僕が何度目になるか分からないため息をついたとき、部屋のドアがコツコツとノックされた。


「私だが……いいか?」

「どうぞ」


痛みをこらえて体を起こす。

義父はするりと部屋に入ってきた。


「大丈夫か? ずいぶん苦しんでいると聞いたが」

「……ええ、まあ、大丈夫です」


未だ僕はこの人に弱みを晒すようなことを出来ないでいた。

悪い人でない、不器用なのだとは分かってきたけれど、それでも。


「こんな時に悪いんだが、二、三頼み事があってな」


はぁ、と僕は力なく頷く。

本当に、こんな時に頼み事なんて。

足の鈍痛を拳を握って耐える。


なんですか、と聞けば義父は少しホッとしたように息をついた。


「ああ、まず連絡をしておかなければな。一ヶ月後にパーティをすることにした」

「パーティ……?」


少なくとも、ベッドで横になっている人に向いた話題じゃないだろう。


「ああ、パーティだ。お前の成人の祝いが名目だが、メリアーゼを社交に慣れさせる意味もある」

「姉様が、パーティに出る……のですか」

「そうだ。メリアーゼはあまり家族や使用人以外の人間と触れ合ったことがないからな。学院に入る前に、少しでも耐性をつけてやらねば」


嫌だ、と思った。

なんでだろうか、姉様が他の人と会うのが嫌だ。


姉は、自分であまり気にしていないようだけど、美人だし可愛らしい人だから、もしかしたら婚約を申し込むような男もいるかもしれない。

そう思うとなんだか胸の中がモヤモヤする。


そんな気持ちを知ってか知らずか、義父は明るい声を出した。


「それで、お前にダンスの先生を頼みたい」

「ダンス……?」


思わずキョトンと瞬きをした。

確かに、僕はダンスは得意だ。

というか、ちゃんと出来るまで姉に会ってはならないとか言うから、勉強もダンスも即刻覚えたのだ。


「最初は先生を呼ぶことも考えたが、知らない人間を怖がるかもしれないとも思ってな」

「……姉様は、ダンスは初めてですか?」

「ん? ああ、そのはずだ」


頬が緩んでいくのを感じた。

僕が、姉と初めて踊るんだ。


「あの、本番は? パーティでは、姉様は……」

「できれば、本番もお前が相手をしてやって欲しい」


思わず飛び上がりそうな気持ちになる。

足が痛くなければ、そうしていたかもしれない。


「流石に19で親と踊るというのも良くはないしな。その点、成人したばかりのお前なら、メリアーゼがむしろお前の相手をしてやっているように見られるだろうが」


それでも嫌でなければ、と義父は言ったが、嫌なはずがない。

ダンスというのは社交であると同時に男女の仲を示すこともある。


まるでそれは、姉を僕のものだと主張しているみたいだと思うと、先ほどまでのモヤモヤが晴れていった。


「受けます。なんならダンスだけでなく勉学の方も、治り次第教えましょうか」

「それはいいな」


と義父は微笑んだ。


その笑みの柔らかさに少し驚いたが、それどころじゃない。


「そうだジョシュア、痛み止めはいるか? もしも要るなら、」

「要りません」


最後まで言わせはしなかった。


僕は決めていた。

姉が他に目もいかぬように、そして姉を好むような奴を軒並み退けられるような、完璧な男になってやると。


義父は——父はまるで僕が思ったこと全てを知っているかのように目を細めた。


「そうか」









×××





熱が上がってきたようだ。

ガンガンという頭の痛みがひどくなっている。


早速と調子に乗って教科書やダンスの教本を読んでいたりしたせいだろう。

取り乱しすぎだ、と自分を叱責するが、もうなってしまったものは仕方なかった。


怠くて体がまるで動かせない。

水が欲しい、と思った時、ドアが開いた。


「……ジョシュア?」


聞こえた声に、水を、と動いた僕の口はぽかんと開いたまま静止した。


「ね、姉様?」


体を起こそうとしたけど、無理だった。

頭がぼうっとする。

姉が来てる? 夢だろうか。

会いたすぎて、夢を見てるのか?


……まあ、どうでもいいや。

姉様と会えたんだし。


ストンとベッド横の椅子に腰を下ろす気配がする。


「ジョシュア、調子は?」

「……頭痛くて、体が動かない」

「そう」


しばらく沈黙の時間が続くと、強烈な眠気が襲ってきた。

ああ、今にも目が閉じそうだ。

せっかく姉が来てくれたというのに。


必死に開ければ、姉の顔が近づいてくるように見えた。

目までおかしくなったのかと思った時、


コツリ。

額が当たって、眠気も何もが飛んだ。

顔が真っ赤になるのが分かる。

目の前に姉のスミレ色の瞳があって、パチパチとまばたいた。


「ね、姉様⁉︎」

「——うん、やっぱり熱いね。顔も赤いし」


赤いのは姉様のせいだ、と思ったけれど、驚きのあまり口をパクパクとするだけで声が出ない。


「な、何を……」

「何って、熱を測ろうと思って」


熱を測るならもっと他に方法があるはずだ。

姉は特に温度調節なんかの魔法は得意なんだから、それを応用すれば簡単なのに。


……姉だ。この突飛な行動は、夢なんかじゃなくまさしく姉だ。


「姉様、どうしてここに?」

「えっ、……体調悪いって聞いて、心配で」


嘘だろう。目が泳いでるし。

おそらく本当は勉強が辛くなって僕を言い訳に抜けてきたというところだろうけど、まあそれでも構わない。


「姉様、僕が寝るまでの間だけでいいから——側にいてくれない?」

「……ええ、いいわよ」


そっと手を伸ばせば、ゆっくりと、けれど確かに握られた。


ああ、姉が寝込んでいる時に側にいたことはあるけど、逆は初めてだなぁ。


僕は姉の手の温もりを感じながら、静かに意識を沈めた。

ジョシュアが動けないと分かって、積極的?な姉。


甘くはない。多分。

砂糖かと思いきや甘み半分のオリゴ糖だったみたいな。……あれ、自分で言ってて意味分かんないですね。



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