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プロローグ

 蒸し暑い会場。バッシュが奏でる甲高い音とボールが地面にぶつかる響く低い音が、混ざっていた。

 ボールがリングを通る度に、歓声が場内を揺らした。

 高森 照はレギュラーメンバーの証であるユニフォームを身に纏い、コート内を縦横無尽に駆けていた。

 初の全国大会。試合終了間際、酸素を求めて肩が激しく上下していた。

 2点ビハインドの中、フリースローのチャンスを得る。シューターは自分だ。息を整え、狙いを定める。一投目がリングに弾かれる。ボールを軽くついて自分をさらに落ち着かせる。二投目がリングに触れることなく、中をくぐり抜けた。

「しゃああああっ!あと一点!」

 照の雄叫びにチーム全体が盛り上がる。

 全員が一体となって走る。

 勝てる。

 その場にいる全員が確信していた。


 そんな夢の途中で、目を覚ました時にはすでに遅刻の時間だった。

「ふあっああああ…ああああ―———、」

 高森(たかもり) (あきら)は気怠そうに欠伸をしながら、昼休みの廊下を歩いていた。高校三年の夏の校舎も、どこにいても暑くて嫌になる。

「やああっと来たっ、いつもながらアンタずいぶん余裕ね?」

 声がした方を振り返ると見知った顔が後ろに誰か引き連れていた。

「ん?ああ、あすか?」

 クラスメイトの 浅野 あすか があきれ顔でこちらを見ていた。

「いい加減にしないと単位落とすわよ?ホントにさあ…今年も受験——、」

 言い切るよりも早く、隣と目が合った。

「ん?そんなことよりも、となりの娘は?ダレ?」

「そんなことって……、はあ、」

 飽きれたため息を吐く。

「で?」

「日野 (ゆう)ちゃん。今日転校してきたの。うちのクラスで知らないの多分アンタだけ、」

「あ、あの日野勇です。よろしくお願いします」

「ん?よろしく。初めてだっけ?」

「初めてっつってんだろーがっ!コイツ無愛想でごめんねー、日野さん。コイツ高森 照って言うんだけど、一応覚えておいて、」

 言いながらあすかは照の頭を無理矢理下げさせる。

「おまっ、ちょっ、いたいいたい痛い」

「昼間っから楽しそうだねええええ?ターカーモーリーくーん?」

「あ、」

 あすかよりも明らかにゴツいゴリラのような指が照の後頭部にめり込んだ。

「いだいいだいいだいいだいいだいいだいっ!!さっきよりも明らかにいだいっ!ゴリ原ああああああっ!」

「当たり前だああああ、痛くしてやってんだからよおおオ―—?あーん?」

 ゴリ原と呼ばれた男性ホルモンムンムンな教師はそのまま、照を片腕で持ち上げる。

「うおおおおおっ!ワレルワレル!オレの味噌が出ちゃうからっ!」

「そんだけ冗談言えるくらいの余裕はあるワケだな?よーしっ、ちょっとこっち来いっ!」

「ぎゃあああああああああっ!ワキガああああああああっ!くっさああああああああああああああああああああああああっ!!」

 しっかりとヘッドロックを決め、逃げられないようにしてから二人の方へ向き直る。

「浅野。任務ご苦労」

 ゴリ原が食堂の半額券をあすかに渡す。

「いーえー、このバカの指導しっかりお願いしますねー」

「おまっ、ゴリ原に買われてたのか!」

 「嫌な言い方するなっ!」と、二人からの鋭いツッコミが刺さった。

「日野」

「はいっ」

 突如現れた筋骨隆々のゴリ原に身を固くして返事を返す。

「まあ、見ての通りのトラブルメーカーだ。こういうのにはあまり関わらないようにな!ほらいくぞ!」

 勇の返事を待たずに、そのまま生活指導室に連行していった。


 それが高森 照と日野 勇の二人の日常の始まりだった。


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