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(旧) 魔宝使いの セ・ン・パ・イ  作者: しゅんかしゅうとう
第1章:国立魔宝大学付属第一高等学校入学編
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第25話:聖の眼

魔宝大学付属医大病院の中の個室、そこは魔宝的にも光学的にも電波的にも遮断されている一室で、美夜のセイネに対するブリーフィングが行われていた。


「美夜」

「はい、セイネ様」


「この病室は”流星喰い”の警護が必要なほど、アラートが高いと判断されているの?」

「はい、最初から説明いたします。」

「うん、頼む」


「通して説明しますので、質問と、セイネ様の意見は最後に」

「了解した」


その態度はまるで、2年前の少年の姿をしたセイネと、それに付き従う婚約者の美夜の物であった。

二人はそんな事に気付かずに続ける。


「では、説明します。おじい様のご意見によると今回の事件は”事故”を装った”テロ活動”、そのターゲットは調査中ですが、国安(国家安全保障局)の見立てでは、魔大付属生を狙った無差別なものとの考えでした」

「うん」


「テロの概要は、フロントアタッカー1名が大型モーターサイクルを質量兵器として魔大付属生の集団に突進させる、そして・・・」


「すまないが補足する」

セイネが口を挟んだ。

本来意見であれば最後に述べるべきが、判断の材料となるセイネのみが知る状況情報なので捕捉説明をするのだ。


「フロントアタッカーは1名で間違いない。が、歩道に乗り上げた時は既にパイロットのシートベルトが外れており、両手は操作管から離れていた。以後の車両操作は遠隔魔宝によるものだ。だから最低でも1トップ1シャドゥの2トップ体勢、おそらくは1トップ3シャドゥだと判断する」


「はい、フロントアタッカー1名を支援する攻撃魔宝要員が3名配備されているのを確認しております。この3名は広域魔宝増幅装置を使用した見込みです」


「ふむ。魔宝によるガードレールの大変形をボクが目視確認している、この魔宝で1名。モーターサイクルの遠隔操作魔宝で1名。歩道にいる魔大付属生の足を止める魔宝で1名、以上3つの魔宝が使われた事は証言できる」


「はい、ありがとう御座います。そして前衛を援護する中衛要員として...」


「あぁ、それは認識していた。広域魔宝減衰装置が3台、現場を中心に半径500m程度の位置に配置されていた」


「装置の発動を感知なさったのですか?」


「ガードレールの大変形の起こる10秒前に1つ目が発動したのを感知した。残り2台の発動はその5秒後。つまり敵性勢力は、魔宝減衰空間の中で、魔宝を発動させるノウハウを持っていると言う事だね」


「セイネ様は聖魔宝以外の魔宝を発動できなかったのですか?」


「街中の為『聖』の石しか身に付けていなかったからね。聖魔宝とESPしか使おうという気にならなかった。だから、減衰空間の中で本当に魔宝が発動できないのかどうかは試していない」


セイネからの情報の重要度が高いので、状況説明ではなく情報交換のスタイルに自然と移行していた。


「質量兵器操作1名、魔宝増幅3名、魔宝減衰3名、はセイネ様は感知なさっていたのですね」


「うん。その外側に闇魔宝に似せた光学遮蔽部隊が居たみたいだけど、あれは効果有ったの?、ほとんど力を感じなかったのだけれど」


「事故現場の衛星写真で遮蔽が成功しているのは、聖魔宝を使われたセイネ様だけです。敵前線拠点の場所は全て撮影に成功しております。ただし、敵性勢力は1拠点に1名、作戦終了時には全員自決と言う、一切逃げ隠れもしない代わりに非常に身軽で軽装なのです。その為、衛星写真の解析だけから事前に敵拠点を判明することは非常に困難と思われます」


「では今回はどうやって?」


「『黒の閃光』です」


「聖?、闇?」


「聖、だと聞いております。『英雄』の現場検証も聖を使われたと」


「聖を使っての尋問は?」


「敵性勢力のすべてが蘇生を拒絶いたしました」


「ふーんんん...」


「あの、セイネ様...」


「あぁ、分かっている。これは新兵器の実戦テストなんだね。20名弱を投入して全員自決とは、狂信的テロを装っているのだろうが、実態は、逃走要員・バックアップ要員を揃えられなかった人員不足をごまかしているのだろう。だから、敵残存は10名程度だね」


「はい、おじい様も同様の見立てです」


「そしてテストは成功した。質量兵器は我が国の魔宝師に対し効果有り、広域魔宝増幅も効果有り、広域魔宝減衰も効果有り、光学的遮断は効果無し、敵参謀の判断はこんな所だろう」


「はい」


「すると第2弾は、質量兵器2名、広域魔宝増幅4名(質量兵器サポート1名追加)、広域魔宝減衰3名、光学的遮断0名の合計9名が最低ラインか」


「そしてそのターゲットが...」


「1番は美夜、君だ。ボクは3番。それが、美夜が準レジェンドクラスの石を持って今ココにいる理由だね」


「・・・お察しのとおりです、セイネ様」


病院の白いベッド、点滴とか色々な管が繋がれて横たわるセイネの姿が、美夜にはとても頼もしく見えた。

かつて、自分の一生を捧げようと信じた、その頃の姿に重なった見えた。

自分と月子が、どう努力しても習得できない聖魔宝の使い手、自慢の婚約者であり、魔宝のライバルであり、そして手の届かない憧れであった人...


聖と闇の両方を使えるのは、全世界で日本のレジェンド3名のみ。

かつてはそこに、自慢の婚約者兄弟も名を連ねていたのだ。


現在公的にアナウンスされたわけではないが、聖魔宝を使えるのは、レジェンド以外には全世界で1名とされている。そして、聖魔宝を使える事が秘匿中であり世界に知られていないもう1名がこの病室のベッドに寝ている。

闇魔宝の使い手も公式なアナウンスは無いが、レジェンド以外では全世界で4名、内2名は桐生院姉妹とされている。


     聖 闇  計

JPNU 4 5  6(3名は聖と闇を兼ねる)

USSA 1 0  1

USSR 0 1  1

ECEU 0 1  1

合 計  5 7  9


聖と闇の使い手は、美夜たちが把握している範囲で、全世界に9名。内6名が我が国にいるのである。

自分自身も世界に7名しかいない闇の使い手だ。聖魔宝が使えない事を、残念にこそ思えど恥と思った事はない。

しかし、かつては聖と闇を使え、そして事故で魔宝を失ってから、再び聖魔宝を取り戻したセイネの事をやはり凄いと感じてしまう。

そして、そんなセイネに対する憧れを抑えきれなくなる。


「美夜、レジェンド達はこの件に介入できるのか知っている?」


「こちらから手を出すのは無理だといわれました。ただ、降り掛かる火の粉は払うと」


「・・・なる程。レジェンド3名の現在の居場所は?」


「学業時間帯ですので、3名とも魔宝大学にいらっしゃいます」


「では、この魔大付属病院にはレジェンドは今いないんだね?」


「はい、警護は”流星喰い”ですから」


「なら、今、魔大付属病院で聖魔宝の発動が観測されても、それはレジェンドの物で無いと証明できるわけだね」


「はい、セイネ様」


セイネの紅の瞳が、すっと薄く細く開かれる。

何かするつもりなのか?

「美夜」


「はい、セイネ様」


「ボクのバイタルを美夜に預けていいかな?」


「セイネ様・・・」


「ボクの体は弱いからね。”聖の眼を降ろす”には、生命維持とか、全部誰かに面倒見てもらわないとできない」


「セイネ様・・・実は・・・」


「どうしたの?美夜」


「昨日から始まってしまって、セイネ様の身体を血で汚してしまうかもしれません」


「美夜の身体に穢れた所など無いさ。お願いしますね」

そう言い残すと、セイネは目を閉じてしまった。


もう、一刻の猶予も無い。

美夜は『生のサファイヤ』の魔宝陣を展開する。


「生の精霊よ、我に力を貸し与えよ」


セイネの身体から、点滴や、色々と刺さっていたチューブや測定子のケーブルが取り除かれる。

セイネの入院服を脱がせる。その下はT字帯とナプキンだけだ。それも取って全裸にする。


「火の精霊よ、我に力を貸し与えよ」


『火のルビー』で少し室温をあげる。


美夜も脱ぐ。靴を脱ぎ靴下を脱ぎ裸足になって、『魔宝師のローブ』を脱ぎ、その下の制服を脱ぎ、肌着を脱ぎ、身体の大切なところを覆っている幾つかの布も外す。

全て脱いで、美夜は裸の身体をセイネのベッドに横たえる。


セイネは全裸の身体に『聖』のネックレスを取り付けただけ。

自分の身体の維持の全てを捨てて、聖の精霊様の所へ向かってしまった。

だから美夜は、自分の体の全ての肌をセンサーにしてセイネと触れ合い、自分の体温と生魔宝でセイネの身体を保全するのだ。


時々セイネが呼吸を忘れるので、仕方なく美夜はセイネの鼻をつまみ、口移しで空気を送り込む。

心臓は今の所規則正しく動いている。体温も、身体が凍るほどは下がってはいない。


セイネの聖の眼は、時をさかのぼって見ていた。

モーターサイクルのパイロット。

やはり、事故直前に心臓が止まっている。証人を残さないためか?

事故現場50m手前、覚悟を決めて操作管をスライドさせた。

事故現場手前150m、セーフティ装置をマニュアル解除している。やはり違法改造車か。

事故現場手前300m・・・

事故現場手前5Km・・・

事故現場手前15Km・・・メンバーと打ち合わせ・・・組織『ウムラウト』・・・場所は・・・

リーダーはイー・アルサン、1次メンバーは19名、2次メンバーは8名、全体で国内組織は28名

結社『ウムラウト』のスポンサーは『ラヴピース』、バックスポンサーは・・・やはり・・・


1時間後、セイネは疲れきって目を覚ました。

その間、美夜はずっとセイネを抱きしめていてくれたようだ。


「ありがとう、美夜」


「お役に立てて嬉しいです、セイネ様。聖の眼で、見えましたか?」


「うん、必要なことは多分全部見えた。・・・ごめん、声に出すのが大変なので、接触テレパスでボクの中を勝手に覗いて」


「はい、セイネ様。では、唇や舌をお借りしても宜しいですか?」


「美夜に触れられて困る所なんて無いよ。でも、刻印は刻まないでね」


接触テレパスは接触面積が大きい程、体力の消耗が少なく、意図も正確に伝わる。

特に粘膜接触は、デリケートな情報のやり取りにはとても優れているのだ。

優れたテレパス同士での濃密な粘膜接触は、その心の一部が解け合うほどである。


残念ながらセイネと美夜は今は女性同士なので、口腔や舌と言った粘膜接触でそれを補うしか方法を知らなかった。


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