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(旧) 魔宝使いの セ・ン・パ・イ  作者: しゅんかしゅうとう
第1章:国立魔宝大学付属第一高等学校入学編
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第2話:引き篭りの入学準備(前)

中2の春に重い中2病を患って惑星1個を消し去った結果、兄を失い、女になった。

何を言ってるのか自分でもサッパリ分からないが事実だ。

女顔がコンプレックスだったのに本当に本物の女性になってしまった。

肌が弱く太陽光が超苦手、もともと引き篭りエリートの素質を持っていたボクに、今回の女性化がトドメを刺した。

埼玉の自宅にボクは引き篭った。


あの事件の後、籍を置く埼玉県川越市の公立中学校へは一度も行っていない。

世間的にはボク等双子はあの事故で、一人は行方不明、一人は絶対安静面会謝絶って事になっている。


中2中3全休のまま、何日か前、ボクの担任を名のる名前も知らない男が我が家を訪れ、両親の元へボク、セイネと行方不明の兄カノン、二人分の卒業証書と卒業アルバムを置いていった。

義務教育は、2年間全休でも卒業させてくれるのか、知らなかった。

引き篭り2年生でも、中学の教育課程を修了したと認定されたみたいだ。

兄もまだ行方不明2年生だから、戸籍上は生きてる事になっているしね。


卒業アルバムを見ると、兄カノンが3年1組、ボク、セイネは3年2組だったことが分かる。知らなかったな(笑)

集合写真ではお約束のように右上の特別欄に、背後霊のようにボク等の写真が挿入されていた、ボク等が中1の時に撮影されたヤツを。

又、よりにもよって何故その写真を選ぶかなぁ?と文句を言いたくなる見事に女顔の写真だった。

今更文句も言わないけどさ。


 ===


「セイネ君、入るわよ」の声と同時にボクの聖域に女が入ってきた。


ツヤのあるきれいな黒髪のショートカット、身長は150cm位で結構細身、くりっとした大きな黒い瞳、可愛い鼻、小さな口。

10人男がいれば12人が可愛いと言うであろう、道を歩けば見知らぬ男が振り返るレベルの美少女だ。

一応ボクは元男子のたしなみとしてチラリと胸に目をやる。

よくわからないけどAってやつだな、控えめだけど確かに膨らみがあることを自己主張している。

彼女は桐生院きりゅういん月子、今度中3になる1学年下の従姉妹で、ついでに言えば元婚約者の一人だ。

今日は国立魔宝大学付属の中等部の制服を着ている。わざわざ東京からココまで出てきたのかよ。


ここで少し、ボクら兄弟と月子達姉妹の特殊な関係を説明しておきたいと思う。

まず、ボクと月子が従姉妹というのは、ボクの父と月子の母が兄妹だからだ。

ボク等の祖父、東郷 神聖じんせいは人外級魔宝師で、神聖じんせいと全人類で戦ったとしたら、神聖が勝つんじゃないかとボクなんか思ってる。その位スゴイ魔宝師だ。

熊を素手で倒したら達人だが、核戦争を素手で握りつぶすのは人外だ、もう人類の枠を超えている。


そんな最強最凶魔宝師の神聖の子供二人(つまりボクの父と月子の母)には、魔力の才能が、全然これっぽっちも全く完全無欠に無かった。

『救国の英雄』にして『人類最強の魔宝師』の子供でありながら魔宝の才能の無い二人は、同じように祖父の紹介で結婚相手を決め、同じような時期に結婚し、同じような時期に子供(つまりボク等や月子達ね)を授かった。

ほとんど年が変わらずボク等兄弟と月子達姉妹が産まれて、さらに新生児検診で4人ともに多くの属性魔宝に適正があり、「さすが英雄の孫、もしかしたら魔宝の天才かも」なんてオダテられて、ボク等の親たちの頭のねじが噴き飛んだ。


人類最強の祖父の血を薄めぬよう、ボク等兄弟と月子達姉妹の結婚を決めやがった。

おかげでボクは1歳で、月子なんか0歳でフィアンセ持ちになった。

ボク等兄弟と月子達姉妹の結婚は確定事項、でも組み合わせは相性を見てから決めようと言う、どこぞのペットブリーダーの交配かよ!と言うような、ふざけた婚約だった。


が、

そんなふざけた婚約も2年前の魔宝実験失敗の事件で全部ふきとんだ。

当たり前だ。2人いた婿候補のうち、一人が行方不明、もう一人が女になってしまったんだ。

男が一人もいなくなってしまったんだから、祖父の血統を引き継ぐ事が目的の結婚なんて出来るわけがない。


「やぁ、月子久しぶり、半月ぶり位かな?学校はいいの?」

PCのモニターから顔を上げ、月子に笑いかける。


「今日は土曜よ。学年末テストも終わって自由な時間もあるわ。引き篭りは曜日の感覚がないのね」

この一つ年下の従姉妹は、相変わらず言いたいことをズケズケ言う。

引き込もるに至ったボクの心情ってヤツを少し位は配慮してくれてもバチは当たらないと思うんだけどな。まぁ、それが月子か。


「そうだね、確かにボク、曜日を意識した生活なんて何年もしてないよ」


「でも、そんな生活も後半月だけでしょ?大丈夫なの?」


「ん?どう言う事??」

質問に対し質問で答えると言う頭の悪いことをしてしまった。


「え?あ!?、えぇぇっ?、おじさん達から何も聞いてないの??」


「だから何を?」


月子が少しだけ考え込む。

「半月前、3月の初頭に私と美夜みや姉様がセイネ君連れ出して受けさせた『適性試験』の事、覚えてる?」

「うん」


「実はあれ、国立魔宝大学付属第一高等学校の第3次募集入学テストだったんだ」

「うん?」


「軍機に抵触するかもなので本当にココだけの話だけど、3時募集をするようおじい様が圧力掛けたみたいなの」

「ううん?」


「で、急遽、募集人数1名の入学試験がチョー適当に作られて」

「うううん?」


「急遽、受験生1名がチョー適当に受けて」

「ううううん?」


「約1名が合格したらしいわ、内閣総理大臣からおじい様の御邸に直接電話があったんだって」


うなり声も出なくなってきた。


「4月から高等部2年になる美夜姉様と中等部3年になる私の2人に、高等部1年に入学するセイネ君をちゃんとフォローするよう『然るべき筋』から『正式な依頼』があったわ。」


ボクは黙ってしまった。

何か色々ハメられている気がする。見えない流れに流されてる。

ビッグウエーブに飲み込まれている。

考えろ、考えろ、考えろ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ・・・


「あ、あの、埼玉から東京の付属一高通うのムリじゃないかな」

「何言ってるの、乗り換え1回よ。まぁ、引き篭りにいきなり電車通学はハードル高いかもしれないけど」


「それに、そうだ、ボク世間的には絶対安静って事になってるし」

「それも含めての今回の話よ。世間的にはセイネ君は男性のままで自宅で絶対安静という事にしておくの。で、実際は女性のセイネ君は地元を離れ、おじい様の御邸で行儀見習い名目で下宿」


「それって決定事項なの?」

「おじい様の家がイヤなら寮になるわね。女子寮だけど」


「・・・・」


ボクは黙って月子をにらんだ。

気が強いな、月子もボクを睨み返してくる。

月子の気迫に負けて目をそらす。はぁ、いったい何なんだよ。


「何でいつもボクだけこんなに不幸なんだろう?」

「・・・」


「月子はキツイし、おじい様は勝手だし、少し位は不幸なボクの気持ちも考えて欲しいよ、はぁ」

それは、ほんの軽いグチのつもりだった。

いつもの様に、月子に辛辣にシニカルに切り返されると思ってた。

が、月子の反応は劇的だった。


「ーー!! 甘えないでよ!!」

月子が叫んだ!


「生まれてから12年間、ずーっとカノン君と結婚するんだって言われ続け、きっと結婚するんだろうと信じて生きてた私は不幸じゃないって言うの?中学1年で信じていた婚約者が失踪したのよ!」

「!!・・・・・」


「美夜姉様だってそうだわ。ずーっとセイネ君と結婚するつもりで生きてきて、年下のセイネ君のことをセイネ様と呼ぶようになって、それなのにいきなりセイネ君都合で一方的に婚約破棄されたのよ!!」

「!!・・・・」


「セイネ君が、ヒック、不幸じゃないなんて、ヒック、思わないわ、、、でも少しは、ヒック、私たちの気持ちも、ヒック、考えてよ」

月子は顔を抑えて座り込み、静かにしゃくりあげた。


月子が中学生になってから泣く姿を始めて見た。

あの事故以来、月子はボクの前ではいつでも強気で遠慮なしな態度だったけど、それは月子が月子自身の心を守るためのヨロイだったのかもしれない。

ボクは自分のことでイッパイイッパイで気づけなかったけど、きっと月子は消えてしまったカノンを思い、今までも何度も何度も涙を流してきたのだろう。


ボクはPCデスクのイスから立ち上がると座り込んだ月子に近付き、そっと胸に抱いた。

今のボクは女の子だから月子も文句は言わないだろう。


カノン、お前の婚約者を泣かせちゃったよ、ゴメン。

カノン、お前の婚約者が泣いてるよ、早く帰って来いよ。


「月子、ボクが悪かった、ゴメン、あやまるよ」

「ヒック、ヒック」

月子がしゃくりあげ、ボクにしがみ付いてきた。

ボクの胸に泣き顔をこすりつける。

ボクも月子を抱きしめる。左手でギュッと背中を抱いて、子供をあやすように右手でぽんぽんと背中を優しくたたく。


 ===


しばらく二人で抱き合っていたら、月子がいきなり声を上げた。

「あれー、セイネ君、とうとう胸が膨らんで来たー??」


「な、なんだってーー!!」

ボクは絶叫した!!!!

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