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(旧) 魔宝使いの セ・ン・パ・イ  作者: しゅんかしゅうとう
第1章:国立魔宝大学付属第一高等学校入学編
19/28

第19話:シュン

生徒会長室は高等部教育錬の建屋ではなく高等部実技専門錬の建屋の4階にあった。

実習室をちらりと覗くと、2・3年生の自主練だろうか、ハーフチーム(4人制)1-1-2フォーメーションのフラッグ・アタック競技向けと思われるの室内練習場での連携練習をやっていた。

(チーム競技は、旗を取り合うフラッグ・アタック、ゴールにボールを運ぶボール・アタック、サバイバルゲームみたいに相手を全滅させる事のみを競うフィジカル・アタックの3種が主流である)

(競技人数はフルチーム(8人制)、ハーフチーム(4人制)、ダブルス、シングルスの4カテゴリ)

時間があれば是非見学させてもらいたい所だったが、13:00に約束の有る身、窓から練習の様子をチラ見するに留めて先を急ぐ。


それでも随分参考になる動きを見せてもらえた。1-1-2から、フロントが踏みとどまって居るうちに中衛1、後衛1が1つポジションを上げ、フロントがフラットスリーの1-3ショットガンフォーメーションに流動的に移行した。

もし後衛が同時魔宝発動数が4属性以上ジーニアスゲートであるなら、攻撃のみに的を絞ったパワープレィ時には非常に理に適ったフォーメーションとなる。後衛1人で、前衛3人を同時にガードしつつ遠距離砲撃でフラッグを狙えるのだから。


屋内練習場を抜け、最上階の4階にエレベータで昇る。このフロアだけ下3階に比べ狭く、生徒会室、委員会室、査問室、そして生徒会長室の4室が有るだけだ。

生徒会長室の扉の前に進むとボクのIDを認識し、扉が自動で開いた。ボクを先頭に4人が室内に入る。


「いらっしゃい、セイネさん。お友達も」

生徒会長の美夜が出迎えてくれた。

生徒会長室には片側4人掛けの長テーブルが備えられている。生徒会室と独立して生徒会長室があるのは、おそらく、多人数の会議は生徒会室、少人数の打ち合わせには生徒会長室を利用するからなのだろう。

ボクに合わせ遮光Mシルクスクリーンは閉じてくれている。

ボク等は帽子とローブを脱いで入り口脇のハンガーに掛け、ボクはサングラスも外した。


「あ、セイネ君、先輩方もわざわざ御足労ありがとう御座います」

中等部の月子が、高等部の生徒会長室へ来た高等部生を出迎えるのも変なのだが、何も違和感を感じさせない落ち着きぶりだ。

そして月子の姿を見ても、3人は驚かない。内部生(中等部上がり)の3人は、月子が中等部生徒会長だと知っているのだろう。


「セイネ君、先輩方。飲み物はティーポットの紅茶でいいかしら?」


「あ、うん。皆もそれでいいかな?」


全員がうなずいたのを見て、月子が4人分の茶を入れる。自宅だと美夜がお茶当番なのだが、序列に厳しい一高だ、多分まだMPC値は月子より美夜の方が上なんだね。

テーブルの隅に食事用トレイが積まれている所を見ると、2人はここで昼食を取ったんだな。2人は食後のお茶しながら待っていた様子だ。

美夜と月子が長テーブルの向うに並んで座っているので、ボク等4人は手前側に並んで腰を下した。


すると月子から声が掛かった。

「セイネ君は説明者側なんだから此方に座ってよ」


「あ?、あぁ。そうだね」


ボクは慌ててテーブルの反対側に周り、月子の隣に腰を下ろす。

席順は

(空)、美夜 、月子 、ボク

ニーノ、ウラン、シュン、(空)

こんな感じになった。


全員を知っているのは僕だけなので、ボクが皆を紹介する。

シュン達に向かって、一応美夜と月子を紹介。それから美夜と月子にシュン達を紹介した。


皆が落ち着いて話を聞ける状態になったのを見計らって、美夜が口を開いた。

「初めにお願いしておきます。ここでの話は戦術級対外秘として下さい」


シュン達3人がうなずく。

ここで言う戦術級対外秘とは、戦術の共有を必要とするチーム外への秘匿を意味する。

高等部では原則ハーフチーム(4人制)までだから、このチームを維持する限り、シュン、ウラン、ニーノの3人だけの秘密、チーム散開後は完全秘匿となる。つまり指導教諭に対しても秘匿するよう美夜は求め、それを3人は受け入れたのである。

(戦略級対外秘なら、クラス戦略立案に必要な情報と見なされ、指導教諭は対外秘の対象外となる)


美夜が続ける。

「御3方は、私達姉妹に付いてどの程度ご存知なのでしょうか?」


こう言う時、対応するのはシュンに決まっている。

「内部生なら誰でも知っているレベルの知識だけです。2人そろってのテンサウザン、付属部(中・高等部)で只2人だけの”天才の門を開けし者”(聖か闇属性の魔宝師)、魔宝の天才、桐生院姉妹」


ここで何かシュンが気が付いたようだ。

「従姉妹に”東郷”セイネが居るって事は・・・桐生院って、もしかして、あの・・・」


美夜が言う。

「学内機密に抵触するので、その件に付いて私の口からは何も言えないのです。他に何かご存知の事は有りますか?、有れば説明が捗ります」


シュンが答える。

「『英雄』が英雄になる前、2人の女性と恋に落ちたと噂で聞いたことがあります。1人は聖魔宝しか使えないと言われた『聖女』、1人は闇魔宝師か使えないと言われた『闇魔女』。彼は聖女と結婚し、2人の子が生まれたと聞いています」


シュンが続ける。

「政府の正式発表として、英雄の内孫は男子2名、外孫が女子2名。2年前の魔宝事故で、男子2名は死亡又は、行方不明。そして噂ですが、英雄には闇魔女の血を引く外縁の孫がもう1名いると」


ボクは引き篭り時代、NETでその噂を見つけて大笑いしてそれきり忘れていたのだが、シュンが知っている所を見ると国民に広く浸透しているのかもしれない。

ボクのハーレム要員化計画は、水面下で何年も前から、つまり魔宝事故のすぐ後位から動き出していたのか?!


美夜が話す。

「噂等の件に付いては、私は何もコメント致しません。さて、ここからが戦術級対外秘となります。」


美夜が3人を見渡す。

「私達姉妹とセイネさんは、共通の”祖父”を持つ従姉妹です。つまり3名全員が”祖父”の血を引いている事になります」


ここで言う”祖父”が”英雄”を表す事等、美夜は言葉を濁しているが、3人には当然伝わっている。


「同じく”祖父”の血を引く男子2名がおりましたので、彼らと私達は、濃い血を残すため従姉妹同士で幼い頃から婚約しておりました。セイネさんは体も丈夫ではなく、又、男女比が2:3であった為、女子2名は2名の男子の正室に、女子1名は側室に、そう決められておりました」


3人は黙って聞いている。美夜が続ける。


「互いの相性もあるので、私と御兄弟の弟様、月子とセイネさんの2人が御兄弟のお兄様とお付き合いをさせて頂いて来ました。でもある事故で、私達3人は同時に婚約者を失ってしまったのです」


ニーノがポツリとボクに言った。

「ボクにも大切な人がいました、って過去形で言ったのは、そういうワケだったのなの?なの?」


ボクは黙って目を閉じた。このチームメンバーにはウソを付きたくない。でも本当の事も言えない。だから否定も肯定も出来ないんだ。

ボクの反応から、ニーノは勝手に答えを判断したみたいだ。


シュンが思い切って口を開いた。

「ご愁傷様でした、と言えばいいのか分かりません。礼を失していたら申し訳ありません。でも、その婚約者さんの話と、昨日のセイネの様子とどう話が繋がるんですか?」


「それは」

「それは」

シュンの質問にボクと月子が同時に声をだした。

そして少し気まずくなって顔を見合わせ、2人を代表して月子が答える。カノンは月子の婚約者だったから、その方がウソが出ない。


「加藤君の左手から感じる魔宝の波紋と、私の婚約者の波紋が全く同じだったからです」


「どう言う意味ですか?」


「左手の3属性、生、風、土の魔宝の波動が3つとも同じで、かつ、その3つが重なり合う時の波紋まで一緒だったのです」


「何かの間違えとか・・・」


「あの”祖父”の直系である私とセイネ君の2人が確かめたのです。自分の婚約者の波紋を見誤りはしません」


月子の目が潤んでる。3人は黙り込んでしまった。

ボクがおずおずと声を上げる。


「カノンはボクの魂の半分だったんだ。自分の顔を見間違えないのと同じレベルで、カノンの波動を間違える事は無いよ」


「セイネさん」

美夜が声を出す。


「私達は政府発表も噂話に付いても、否定も肯定もしていません。あくまで私達3名の婚約者だった兄弟の話をしているだけです。私人である方の個人名は控えて下さいね」


「あ、あぁ。美夜、ごめん」


美夜が又3人を見渡し、穏やかな口調で言った。

「個人のプライバシーに関わることなので、くれぐれも戦術級対外秘でお願いします」


単純な個人のプライバシーの問題ではないことは、3名は納得している様子だ。


「何かご質問はありますか?」

の美夜の問いかけにシュンが声を上げた。


「セイネ」


「何、シュン」


「セイネの右手と俺の左手、もう一度大きさ比べをしてくれないか?」


「いいけど・・・」

少し上目使いでシュンを見る。

「手を握ったりしない?」


「しないよ、ほらっ、早く」


シュンが立ち上がり、テーブル越しに左手を伸ばしてくる。

ボクはシュンにせかされて手を合わせる。シュンの手はやっぱり大きい、指の関節の所が太い、力持ちの男の手だ。


「よし、今度は反対の手だ」


「え?」


「セイネが左手を出して。で、俺の右手と比べるんだ」


「右手と左手、大きさそれ程変わらないよ」


「いいからヤルの」


今度は反対の手を合わせる。ん?、少し、シュンの手のひらが熱くなってるみたいだ。暖かくて気持ちいい。


「シュン」


「ん?、何か感じた?」


「ん、シュンの手は触れると気持ちいい」


「・・・そう言う事を言うやつは、こうだ!!」

いきなり両の手で、シュンがボクの左手を握り締めた。


「こうすると気持ちいいのか?」


ボクはドキドキしながら答える。

「う、うん。少し」


「少しなのか?」


「う、うん。少し」


「そうか、少しか」


シュンがボクの手を離した。

ニーノもウランも、美夜も、月子も、ボク等2人をあっけに取られて見ていた。


 ===


その日、生徒会の仕事があると美夜と月子が学校に残ったので、ボクは一人で帰宅することにした。

シュン達が送ってくれるよと言ってくれたんだけど断った。『英雄の森』の家に住んでるのが恥ずかしいのと、あと、闇魔宝で遮蔽されているので、まだ闇魔宝を使えないボクでは祖父の許可の出ていない3名を家の側まで案内することすら出来なかったからだ。


そしてボクは、せめて家までではなくても「英雄の森公園駅」まではシュンに送ってもらえば良かったと、後悔することになる。

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