第14話:ガールズトーク -私達の旦那様候補ー(前)
体を洗って居ると脱衣所から月子の声がした。
「セイネ君、入るよ」
良いも悪いも言う前に、浴室の扉が開いて月子が入ってきた。
彼女はボクの隣に腰を下ろして体を洗い出す。
シャカシャカシャカ、相変わらず元気のいい洗い方だ。
月子が右手で持ったボディタオルで左腕をリズミカルに洗う。
右腕がシャカシャカシャカと動く。
控えめな胸がその度にプルンプルンプルンと揺れる。
「ん?、セイネ君、何見てるの?」
月子が聞いてきたので答える。
「あ、うん。胸の揺れ方が月子と美夜で随分違うんだなって」
「さすが元男子。目の付け所が違うわね(笑)」
「だってボクの胸、揺れるほど無いもん。まだ高さで8mmとか10mmとかだよ。トップとアンダーでほぼ同じ位置を測るんだからとても乳房と言える代物じゃないからね。ねぇ、月子の胸でどの位の大きさなの?」
月子がフフンと答える。
「A70。だけど裏技があるんだ」
「裏技?」
「B65でも大丈夫だから、私の『公式記録』はBカップよ、これでも」
「へぇ、そうなんだ。ね。ブラってどの位のサイズから売ってるの?」
「一般的にはAからかな?、自分のサイズ以外は見ないから分からないけど、私より小さければジュニア用とかじゃないかな?、あ、専門店ならAAとかAAAもあると思うよ」
「はぁ、まだまだ道は遠いなぁ」
「あれ?、セイネ君はブラ着けたいの?」
「んー、月子には言っちゃおうかな。今日、シュンやショーゴ君と逢ってね、きちんと女の子になりたいなって初めて本気で思ったんだよ」
「あらあら・・」
「これは美夜には内緒にしておいてね。ボクは自分が男だった時、自分の事、性分化疾患じゃないかって疑ってたんだ」
「性分化疾患って?」
「ざっくり言うと外見は男性だけど臓器は女性とか、そんなの」
「何でそう思ったの?」
「んー、聞いていいかな?、月子の初潮っていつ?」
「私は小5、ちなみに美夜姉様は小6じゃなかったかな。母子手帳見れば分かるわ」
「なら2人とも『誠実の刻印』の時、子供を作れる体だったんだよね」
「何だか生々しいわね。その通りよ」
体を洗い終わったので、2人で湯船に入る。
体を延ばして湯に浸かるのはまだ恥ずかしいので、ひざを抱えて広い湯船の横向きに入る。
「ボクはその時ね、まだ子供を作らせる事の出来る体じゃなかったんだ」
「こっちも聞いてもいい?、その時カノン君はどうだったの?」
「男兄弟はそう言う話はしないよ。カノンと月子の刻印の話も、この前知ったんだから」
「ふぅん、そうなんだ」
「でさ、ボクは、おじい様の血を色濃く継ぐためと言われて美夜と婚約したのに、子供を作れる体まで成長しないかもしれないと言う疑いを消せ無くてね。ボクにはそれは、とても大きな恐怖だったんだよ」
「へぇ」
「だから女になった今でも、美夜に『セイネ様』と言われると、男であろうとしてしまう所があるよ。多分美夜も分かっていて、『セイネさん』と言う様努力してくれてる」
「そうなんだ」
「小さいときから可愛いとか人形みたいとか言われ続けてて、ずっと本物の男には育てないかもしれないと悩んでいて、でも魔宝事故で今度は女になっちゃって」
「うん」
「ようやく体が大人の女性に育ち始めたからね。早く男でも女でも無い状態を抜け出したいんだよ。シュンやショーゴ君はボクを女の子と認識してくれている、なら早く本当の意味での女の子になりたいの」
「・・・そう」
それから2人で髪を洗っていると、美夜が浴室に入ってきた。
ボクも月子も髪は長くないので、洗髪に美夜ほど時間は掛からない。
髪を洗い終えると、さっさと月子は出て行った。
入れ替わりに、美夜がシャワーの前に、ボクに並んで腰を下ろす。
「セイネさん」
「何、美夜?」
「加藤さんはどの様な方でしたか?」
「加藤・・・ショーゴ君の事?」
「はい」
そうか、月子はショウゴ君の事を、当然おじい様や美夜に相談はしていたはずだ。
あれ?、でも美夜も月子も同じ付属部(中・高等部)なんだから2食とか使えば面通し位は出来たのでは?
「月子はショーゴ君の事、美夜には逢わせていなかったの?」
「はい。セイネさんに逢わせた後で無いと絶対にダメだと、強く主張しました」
「へぇ、何でだろう」
「それは加藤さんが私達の旦那様候補だからです」
「は?」
「加藤さんが私達の旦那様候補だからです」
「私達?」
「はい、加藤さんがセイネさんと月子と私の旦那様候補だからです」
「・・・私は詳しい説明を要求するものである・・・」
「では、私も急いで体を洗いますので、先に月子と2人、リビングでお待ちください」
「・・・リビングって、1階の?」
「いいえ、おじい様のいらっしゃらない2階のリビングです。大切な事なので、3人でしっかり話をして認識を共有しましょう」
シャワーでシャンプーを流しながら、今夜のお話も長くなりそうだと感じていた。




