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(旧) 魔宝使いの セ・ン・パ・イ  作者: しゅんかしゅうとう
第1章:国立魔宝大学付属第一高等学校入学編
11/28

第11話:ホットミルク

歩き出して直ぐ、シュンはボクが一人後ろに付いて歩いてる事に気がついた。

振り向いて

「セイネ、遠慮しないで一緒に歩こう」

と声をかけてくれる。


この気配りイケ面は背も高い。きっと180cm近くある。ボクより40cm以上高い。

会話の振り方も上手くて、魔宝の成績も優秀で機転も利いて、美人のニーノとウランを連れて両手に花で、それでいてボクみたいなチビッ子にも気を配ってくれて・・・

「ハーレム王に俺はなる」と言われたら信じてしまいそうで、むしろその片隅にでもボクを入れて欲しい位で、ボクが女だったら惚れてしまっている所だ、あれ?ボクは女だから惚れてしまったのか??


「違います」

ボクは答えた。

「遠慮ではありません。シュンが大きすぎるからです」


「え?、どう言う意味?」

シュンが尋ねる。


「私の体は太陽光に弱いため、この帽子を取るには頭にバンダナ、サングラス、大型マスク、首にマフラーと、かなり怪しい格好を必要とします」


「なるほど」


「帽子をかぶると視線の上方向が遮られます。私は小さいので、ニーノやウラン位の背丈の人なら何とかなります。が、シュン程背が高いと近付きすぎると顔もみえず、誰だか判別つけられないのです」


「そうなんだぁ」

「チビッ子もたいへんなの、なの」

ウランやニーノが同情してくれる。


「どうすればいい?」

シュンが聞いてくる。


「なら、シュンに掴まっていても良いですか?そうすれば、気が付いたら知らない人に付いていって校内で迷子なった、等の事態は避けられます」

そうボクが言うと、シュンは

「勿論、どうぞ」

と答えてくれた。あぁ、シュンはやっぱりイケ面だ。


ボクはトコトコとシュンの左隣へ歩いて行き、シュンのローブ左手のスソを摘んだ。

「これで大丈夫。よろしくお願いします」


「はい、こちらこそ」

と、シュン。


ニーノとウランは笑いながらその様子を見ていた。

「何だか小さな妹を連れたお兄さんみたいね」


ボクは恥ずかしくなって、シュンのスソを握る手に力が入ってしまった。

シュンがボクを見ているのかは分からなかった。

だって、シュンが大きすぎるからだ。仕方ないじゃない。


 ===


2食に着いた。食堂だけで独立した1つのビルだ。中高あわせ600名程度の人数にしては金のかけ過ぎの気もする。

建屋に入るとそこはロビーになっていて、その奥が食堂になっている。ロビーの所でようやくボクは帽子を取る事ができた。


ツンツンとシュンの袖を引っ張る。シュンがボクを見る。上から見下ろされる。

「ん?、セイネ、どうした?」


ボクはシュンを見上げて答える。

「シュンの顔がずっと帽子で見えなかったから確認しただけ」


「そのやり取りはもうカップルにしか見えないよね?、よね!」

すかさずニーノが突っ込む。


「妹に甘い兄と、ブラコンの妹って感じに見えるわ」

これはウランの意見。


食堂入り口脇にナビゲーションパネルがあったので、そこで個室利用の手順を確認する。

パネルをタッチ。


「個室Fを桐生院の名で予約したものです」


「センサーにIDカードを認識させて下さい」


「はい」タッチセンサーにボクのIDカードを当てる。

多人数が通る食堂入り口脇のナビでは、問い合わせの意思が有る人だけが利用する接触認識方式の方が、近接自動認識より都合が良いのだろう。


「東郷セイネさんですね。セイネさんのIDで本人含め4名の利用申請がされています。1階カフェテリアで料理を選んで清算後、料理をトレイごと食品エレベータに載せRoom-Fを選択してください。料理を搬出したら、食堂中央のラウンジ階段かエレベータで2階へ登ってください。A、Bが大部屋、C、D、E、Fが小部屋です。Room-Fの扉に行けば、IDを自動認識して入室できます。料理は部屋に運ばれています」


料理を清算した後は、結構システマチックで簡単なんだ。


利用法を確認し、ボク達は第2食堂の入り口を通った。

内部は天井が高く、ガラス張りで採光が多く開放的だ。

逆にボクには席を選ばないと食事中も帽子を取れないので、利用し辛いかもしれない。

そして、さすがは昼時。そんな開放感溢れるカフェテリアの席は満席だった。

ガラスの壁際に何人も席待ちの生徒が立っている。座れる席を確保してから料理を購入しないと、トレイをもったままウロウロしなければならない。


「かなり混んでるね」


「一般の人も来てるからね。ここは国立の施設だから学部(大学部)の研究施設、付属部(中・高等部)の教育施設はIDがないと入れないけど、食堂などの施設は母国民に開放されているんだ」

とシュン


「一部研究生の為に土日もやってるからね、『英雄の森』で散策して2食のカフェテリアでランチってのが、近隣中高生の安上がりデートコースになってる位よ」

とウラン。


「でも満席のおかげで、逆に料理を選んだり清算したりは待たされずに済みそうよね、よね」

と、ニーノ。


2食のシステムは、最初にトレーを取ってトレーの上に食べたい料理を選んで乗せて行き、最後に選んだ料理の合計金額を支払う、いわゆるカフェテリア方式だ。支払いは勿論IDカードで出来るので、料理を持って清算ゲートを通過すれば自動で合計金額が算出され口座決済される。

合理的だ。

問題は、その合理的システムが145cmの人間用には作られていないことだけだ。棚に並べられたサラダ、上の段が全く見えない。

料理を選ぶ場所は影になっているので清算を済ますまでは帽子の必要は無さそうだ、それだけが救いだ。


「シュン」

何度目になるのか、ツンツンとシュンの袖を引っ張る。


「何、セイネ」

嫌な顔一つせず、シュンが答えてくれる。

あぁ、いいなぁ。一家に1人シュンがいれば便利だなぁ。


「上の棚の料理、多分見えないから手伝って欲しい」

シュンを見上げてお願いする。


「勿論いいよ」

シュンは快諾してくれる。


「ウラン、ニーノ。料理を選ぶ間、シュンをお借りします」

そう言うボクに


「面白いからいいわ」

とウランが笑った。

ニーノも何かニヤニヤしてる。

「こう言う青春劇が見られるとは思わなかったの、なの」


こうしてシュンに色々お世話になって選んだ昼食は、ビーンズサラダ、カップのミネストローネ、ホットミルクの3品だった。


「本当にそれだけで足りるの?」

ってシュンの質問に

「一度に沢山食べられないんです」

と、いつもの答えを返した。


皆の料理のトレーも食品エレベータに載せ、ボタンをポチッ。扉が閉まって行き先を促されたのでRoom-Fを指定。

ボク等4人も隣のエレベータに乗って2階へ上がる。エレベータのボタンを見ると、B1、1F、2Fしかない。2階立て建屋にエレベータって、やはり少し贅沢だなと思う。


2階のRoom-Fへ入る。

するとシュンがMシルクスクリーンを操作し、室内に入る太陽光を抑えてくれた。

天井光も間接照明に切り替えてくれる。よかった、これで帽子もサングラスも無しで食事ができる。


「シュン、ありがとう」


「どういたしまして。あ、帽子とローブ貸してくれる?そこに掛けるから」

シュンがボクの帽子とローブをハンガーに掛けてくれた。


「ニーノ、ウランも。ローブを貸して、掛けるから」


「私達はいいわよ、自分でやるから」

ニーノもウランも何故かニヤニヤしてる。

あの笑い方はニコニコではない、ニヤニヤだ。


部屋には8人掛けの長方形テーブルが一つ、Mシルクスクリーンの窓側に4席、入り口側に4席だ。

「セイネは窓を背にしたほうが、目の負担が少ないかな?」


「シュン、ありがとう。その方が助かる」


部屋のドラフトを開けると、ベルトコンベアの上に料理のトレーが並んでいた。

ボク等は自分の料理を持って、長テーブルに運んだ。


8人テーブルの入り口から見て左側半分を使う。

窓側の角席にシュン、シュンの左隣にボク、ボクとシュンに向かい合ってニーノとウランだ。

月子はまだ来てない。


「料理が冷めてしまうから、先に頂いていようか」

シュンのその言葉で、お腹を空かせていたのであろうニーノが飛びついた。

「うん、そうしよう、よう♪」


実はボクもありがたかった。自分で上手く体温を作れない僕には、4月のこの時期、暖かい飲み物が本当にありがたいのだ。

ホットミルクのカップを両手で抱え、コクッコクッと飲む。


ん?何故か3人がボクを見てる??


「わぁ」

とニーノ。何故か嬉しそう。


「そう言う女の子女の子した飲み方する人、初めて見たわ」

とウラン。


はぁ、又説明が必要なのか。

「ボクの体は上手く体温を上げられないんです。暖かい飲み物を両手で抱えて持てば、手が温まるんです」


「なる程、大変なんだね」

シュン、えらい。そう、大変なんだよ。


「シュンが先に食べようと言ってくれてありがたかったです。スープはともかく、ミルクだけは温かいうちに飲みたかったので」

そう言って、又、ミルクをコクッコクッと飲んだ。


その時。

Room-Fの扉が開いた。


そこには月子ともう一人、少年が立っていた。立ち尽くしていた。


後でその少年、加藤ショーゴ君に聞いた話。

ドアを開けて目に入った光景、銀髪おかっぱの可愛いお人形さんが両手でカップを抱えてミルクを飲んでいた姿に見惚れてしまったんだって。

ショーゴ君ったら失礼しちゃうよね、ボクの事お人形さんだなんて。


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