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(旧) 魔宝使いの セ・ン・パ・イ  作者: しゅんかしゅうとう
第1章:国立魔宝大学付属第一高等学校入学編
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第10話:個室

「ふー、終わったぁー」

教室でシュンが、片栗シュンが声を上げた。


「入学式とガイダンス、わずか半日だったのに、やたらと濃い内容だったよね?」

ウランの声が続く。


「お腹すいたねぇ、ねぇ」

ニーノは相変わらずニーノだ


「なぁ、もし良かったらチームの親睦を兼ねて、これから4人で一緒に昼食とらないか?」

言いながらシュンはYシャツの第1ボタンを外し、首元を緩めた。


あ、ノドボトケだ。シュンは声変わりしてるのか、まぁ当然か。ボクが男性だったときには持っていなかったモノだ。

ボクの視線に気付いたのだろう、シュンが声をかける。

「ん?セイネ、何か俺に付いてる?」


「え?あ、うん。ゴメンなさい、シュンのノドボトケに見とれてました。ボク中学はほとんど通えず、ずっと一人で個室に篭ってたので、同世代の男の子の成熟した様子を見た事がなかったの。なかったんです」


ニーノが割り込む。

「ノドボトケに注目するなんてマニアックね。で、中学の時にはノドボトケ持った男友達は病院にお見舞いに来てくれなかったの?なの?」


入院していたと誤解されたようだが訂正しないでおく。何年も引き篭ってたと言うよりはいいだろう。

「ボクの状態が(精神的に)安定せず、来て貰っても面会謝絶が続いてしまってね、あの、その、だんだんとね、そうなってね」


それとなく中学時代の友人と疎遠となった事をアピールする。

女として人生の再スタートを切った今、男だったボクを知る人間にはもう会いたくはないし。


「大変だったんだねセイネ、今はもういいの?」

シュンはこう言う時、すかさずフォローくれるなぁ。話をリードするのが上手くて、会話していて楽しい。


「うん、申請すれば手帳持ちの体だから万全とはいえないけどね。他の人や魔宝の力を借りれば高校へ通学できる程度にはなったよ、なりました」


「セイネ、チームメイトなんだから敬語も丁寧語もいらないよ」

やはりシュンは、ボクの語尾の言い直しに気付いてくれる。


「あ、うん。ありがとう」

ボクの中のシュンの評価が赤丸急上昇しているのが分かる。シュンから目を離す事ができない。

あ、あれって、ヒゲの剃り跡??


「シュン?」


「何?」


ボクがシュンのアゴを指差す。

「それって、ヒゲの剃り跡?」


「男子高校生なら大抵ヒゲ位生えてくると思うけど、めずらしい?」

シュンは、ボクが指摘したアゴのあたりを指先で確かめている。

「あぁ、今朝剃って来たんだけど確かに少し伸びてきてるね」


アゴを確かめたその指は、ボクが男だった時のと比べ、長くて太くて関節がごつかった。

アレがボクにはなかった成熟した男の指なのか・・・


「ん、今度はどうしたの?」

やはりシュンはきちんとボクの事をを見てくれている。

でもきっとボクだけを見ているのでは無いんだ、これが彼の習い性なんだ。

そう考えたら、何故か心がチクリと痛んだ。


「大きな手だなって」


「そうかなぁ、あ、右手出してみて。比べてみよう」


ボクの右の手のひらと、シュンの左の手のひらを合わせる。予想通り大人と子供ほども違う。

と、シュンの左手がボクの右手を握り包んできた。

「捕まえた♪」


シュンの笑顔に、ボクは手を振りほどく事もできず真っ赤になってうつむいてしまった。


「シュン、何あたしたちの目の前でセイネを口説いてるのよ、のよ」

ニーノがチャチャを入れる。


「セイネ真っ赤になってるじゃない。免疫なさそうだから、そういう事をセイネにはしない方がいいと思うよ、シュン」

ウランが助け舟を出してくれる。この3人、連携がかなり取れていると感じる。


「あぁ。ごめんね。セイネ」

シュンが手を離して謝った。


「ううん、気にしないで。何年も身内意外と会話もせずに過ごしてきたので、相手が男性でなくても会話やスキンシップで緊張してしまうんです。それに」


「それに、何?」

シュンが尋ねる。


「シュンのボクへの気遣いや態度は妹に向ける様なモノなんだろうな、と感じています。こんな体になる前、ボクにも大切な人がいましたが、その人と触れ合った時とは違うと思いますから」

少し空気を重くしちゃったか?


「ね、セイネ。その大切な人とは今どうなのよ?のよ?」

相変わらずニーノは鋼の無神経だ、こう言う時は助かる。


「ご想像にお任せします(笑)」

美夜との事はもう、一生話すつもりは無い。

万が一話す相手がいるとしたら、その人はきっとボクの旦那様だ。


話が一段落付いたと見て、ウランが声をかける。

「ね、食事に行きましょうよ。私1食行って見たいわ」


「1食って?」

ボクが尋ねると気配りイケ面のシュンがすかさずフォローする。


「第1学生食堂の事さ。中等部・高等部には学食が3箇所あって、1食は高等部専用、3食は中等部専用、この二つはセットメニューが中心で選ぶ楽しみは無いけど食事の提供が早く待たされ無い。俺たちグループAには専用席もあるから席取りの必要も無い」


「へぇ」


「2食は中高共用のカフェテリア形式。色々選べるけど、少し割高なのと待たされる事が多いのが欠点かな。中高共用なので専用席とかも用意されてないし」


「せっかく高等部になったんだから1食行こうよぉ、よぉ」


ニーノの一声で皆で1食に向かおうとした時、ボクのIDカードが振動した。

何だ?財布からカードを抜き出す。

カード裏面のディスプレイ部には大きくCALLINGの文字が表示されていた。

その下を月子の名前とIDの小さな文字がスクロールする。

これって、IPインテリジェンスフォンも兼ねているのか。


ディスプレイをタッチすると、動画ON、音声スピーカーモードで月子と繋がった。

モニターに月子の顔、スピーカーから元気な月子の声が飛び出す。

モニター部が振動してる、モニターがスピーカーを兼用しているのか、シャカシャカしてない自然な感じの音声だ。


「セイネ君、高等部そちらはガイダンス終わった?」


「うん」


「おじい様に昼食は学食でと言われていたでしょ。お昼一緒に食べない?」


「あぁ、うん・・・」

3人を見る。スピーカーモードだから、皆も状況は分かってる。

「実は今、高等部こちらの友達とお昼を食べようって話をしていたんだ」


「あら」

月子が驚いた声を上げる。

「引っ込み思案なセイネ君にもう友達が出来るなんてすごいわね」


月子もさすがに、人前では引き篭りとは言わないようだ。

「ね、セイネ君。紹介してくれないかしら。お昼ご一緒しましょうよ」


月子がボクのチームメイトに興味を持ったようだ。


「ちょっと待ってね」

ボクは3人に声をかける。

「中等部のボクの従姉妹が皆を紹介して欲しいので昼食一緒にどうか?って言ってきてるけど、どう?」


「俺はかまわないよ、セイネの従姉妹ってのも見てみたいし」

「私もいいよ」

「1食は今度にするよ」

3人は快諾してくれた。


「月子、皆いいって。こっちはボク入れて4人だよ」


「わかったわ、えーと・・・」

月子が何やら操作し出した。電話以外の端末も並行して使っているようだ。

「はい、2食の個室F8人部屋を私の名前で押さえたわ。先にいっててね。雑事済ませたら私も友達一人連れて直ぐに2食に行くから」


「わかった、まってるね」

電話を切った。


「2食の個室って、教諭のランチタイムミーティング等に使われる場所だよな。生徒でも利用できたんだ」


「2食の個室って初めてだから楽しみ」


ボク達は教室を出て、2食へ向かって歩き出した。

いや訂正、2食の場所を知る3人の後を、ボクは付いていった。

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